メルセデス・ベンツ C63 AMG クーペ ブラックシリーズに試乗
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2014年12月16日

メルセデス・ベンツ C63 AMG クーペ ブラックシリーズに試乗

Mercedes-Benz C63 AMG Coupe Black Series|
メルセデス・ベンツ C63 AMG クーペ ブラックシリーズ

史上最強のCクラス

C63 AMG クーペ ブラックシリーズに試乗

メルセデス・ベンツAMGが超高性能モデルシリーズとして展開する「ブラックシリーズ」。そのCクラスクーペ版たるC63AMG クーペ ブラックシリーズにモータージャーナリスト、西川 淳が試乗した。

Text by NISHIKAWA Jun
Photo by Mercedes-Benz

1500万円はバーゲンプライス

昨年12月の第42回東京モーターショーにも出品され、メルセデスベンツ・ブースで注目を集めたC63AMGクーペ“ブラックシリーズ”。旧型SLK55、CLK63、SL65につづくブラックシリーズ第4弾である。コンセプト的にはCLK63ブラックシリーズの後継モデル、といってよさそうだが、性能は上がって、価格は下がった。

台数限定ではなく、2012年いっぱい生産するとメルセデスAMGはアナウンスしたが、日本市場への割り当ては、なんと50台そこそこ。東京モーターショーで展示される前に、すでに“完売御礼”という状況だったというから、AMGファンは、内容と価格のパフォーマンスをいち早く読み取って、“買い”だとふんだのだろう。たしかに、バカ高いCLK63ブラックシリーズを超える性能で1500万円は、バーゲンプライスといっていいだろう。それにしてもインポーターのヨミ、甘すぎかも。日本のAMGファンの、元気と心意気をみくびったか?!



ツーリングカーレース仕様車のようなワイドフェンダー

ベースとなったC63AMGクーペとのちがいについて、かいつまんで説明しておこう。まずはスタイリングだ。以前から、ブラックシリーズのスタイリングといえば、ワイドフェンダー化が最大のみどころ。今回も、フロントアクスルを40mm、リアも79mm、それぞれトレッドを拡げたため、前フェンダーで片側28mm、リアも42mm、それぞれノーマルモデルよりも膨らんでいる。

ツーリングカーレース仕様車のようなワイドフェンダーとあいまって、SLS AMG GT3マシンからデザインエッセンスを継承したエアロパーツの数かずも、じつにコンペティティブな装いで格好いい。

Mercedes-Benz C63 AMG Coupe Black Series|
メルセデス・ベンツ C63 AMG クーペ ブラックシリーズ

史上最強のCクラス

C63 AMG クーペ ブラックシリーズに試乗(2)

スタイリングに花を添えるエアロデバイス

大容量オイルクーラーへのフレッシュエアを賄うために大口を開けたバンパースポイラーにはじまって、2本のカーボンファイバー強化樹脂(CFRP)製カナードやアルミニウム製エンジンフード、サイドスカート、CFRP製ハイリアウィング、同リアアンダーディフューザーなど、サーキットのピットやパドックがとても良く似合う身だしなみ。エアロデバイスは、どれをとってもノーマルとは異なる専用デザインになっている(一部オプション品あり)。

これまたSLS風デザインの巨大な鍛造アロイホイール&タイヤに、コンポジットディスク(前)の強力なブレーキシステムという組み合わせもまた、レーシーなスタイリングに“華と実”を添えている。

トランクリッドとダッシュボードのはしに、今回はじめて、ブラックシリーズ専用のAMGエンブレムバッジが輝くことになった。オーナーにとっては、ひそやかなよろこびになるだろう。



AMG珠玉のM156型6.2リッター自然吸気V8エンジン

基本仕様を2シーターとし、フルバケットスポーツタイプのレカロシートを装備していることと、赤いステッチや赤いシートベルトがダークなインテリアに合ってやんちゃな雰囲気を醸しだしているということ以外、全体のようすは基本的にノーマルC63 AMGと同じようにみえる。もちろん、望めば4シーターとすることも可能(その場合、バケットではなくスポーツタイプのシートとなる)だが、サーキット走行をメインに考える方のみならず、ブラックシリーズの特別感を重視する好きものコレクターには、やはりスパルタンで特別な2シーターを薦めておきたい。このクルマが将来、コレクターズアイテムになった日には、実用上の機能よりも、そういう特別さが評価されるはず。コレクションに収まるアイテムに実用性など、要らないのだ。

見栄え以上に注目しておきたいのは、やはりエンジンスペックである。AMG珠玉のM156型6.2リッター自然吸気V8エンジンは、恐らくこれがファイナルスペックとなるだろう、380Kw/517hp仕様にまでパワーアップされた。Cクラス史上、最強スペックである。7段AMGスピードシフトMCTを組み合わせているのは、ベースモデルと同様だ。大排気量自然吸気エンジンに、スポーティな変速のシングルクラッチシステム……、このパワートレインもまた、近い将来、生産が終了することが決まっている。そういう意味でも、C63ブラックシリーズの歴史的価値は大きい。

Mercedes-Benz C63 AMG Coupe Black Series|
メルセデス・ベンツ C63 AMG クーペ ブラックシリーズ

史上最強のCクラス

C63 AMG クーペ ブラックシリーズに試乗(3)

舞台はラグナ・セカ“マツダ”レースウェイ

足回りにも、ワイドトラック化、ハイスペック化に併せた専用設計が随所に採り入れられた。なかでも新設計の、調整式コイルオーバーサスペンションは、走り屋注目のアイテム。3ステージESPやリアLSDも標準で積んでいる。

国際試乗会は、米国カリフォルニア州モントレーにある、コークスクリューコーナーで有名な、かのラグナ・セカ“マツダ”レースウェイでおこなわれた。ラグナ・セカでは、例年、秋にユーザーを招いてのAMGパフォーマンスDAYが開催されており、SL65ブラックシリーズやSLSガルウィングといった特別なAMGマシンの試乗会はラグナ・セカでおこなわれるのが最近の常になっている。

ヘルメットを被り、窮屈なバケットシートに尻を押し込んで、レーシングドライバー操るSLSを贅たくな先導車にして、筆者の駆るC63AMGクーペブラックシリーズは走り出した。



ツーリングカー選手権テイストの乗り味

ひとことで乗り味を表現すれば、ほとんどツーリングカー選手権テイスト、となるだろう。まるで背の高いSLSという乗り味で、ベースのC63AMGとの差は歴然としている。ピットレーンを飛び出し、ストレートエンドから1コーナーに差しかかったあたりで、もう、これで1500万円は安い! と叫んでいた。

ノーマルスペックのC63よりも、M156エンジンははっきりとラフなアイドリングをみせ、パワフルな振動を乗り手に伝えてくる。レーシーでスパルタンなインテリアと相まって、ことによるとSLSに座ったとき以上にドライバーの気分は盛り上がってくる。

タイヤが太いせいか、最初のひと転がしこそグッと踏ん張るが、その先はビクンとはぜるように加速する。ストレートをアクセル全開で走ってみれば、レベルアップした空力のおかげで、とてつもなく安定していることを実感し、ノーマルC63クーペにはあった、オシリの軽やかさなど微塵も感じさせない。

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メルセデス・ベンツ C63 AMG クーペ ブラックシリーズ

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C63 AMG クーペ ブラックシリーズに試乗(4)

SLS AMG級のサウンド

V8サウンドだって、ノーマルよりさらに豪快。音質、音量とも、ほとんどSLS級で、編隊走行をはしで見ていると、音だけでは見分けがつかない。まるでアメリカンマッスルカーのようだ。もっとも、日本人はこういった野太いサウンドよりも、フェラーリのように乾いた高い音のほうが好きだろうけれど……。

タイトコーナーの進入では、前後のアシがきっちり仕事をしながら、フラットライドを保って、車体は路面に強情な張り付きをみせる。スタート時の踏ん張りが、コーナーで蘇るのだ。

シフトダウンのサウンドがけたたましく響いたと同時に、前輪が見事なまでに素早く動き、ノーズが気持ちよく内を向いてゆく。ノーマルC63クーペのように、スロットル加減でいともカンタンにオシリが流れ出すようなことは、もはやなく、太いリアタイヤはしっかりとグリップしたままだ。これをブレークさせるには、相当なウデと度胸が必要になるだろう。



サーキット慣れしたエキスパートに

サーキットを走るブラックシリーズは、正に水を得た魚で、ノーマルC63よりもスリリングさでは劣るが、ラップタイムは、きっと、めっぽう速い。

結論。C63AMGクーペブラックシリーズは、サーキット慣れしたエキスパートにこそ楽しんでほしい(にしか楽しめない?)、極上のFRスポーツカー、である。サーキットでC63ノーマル系を楽しんでおられる方々(アメリカではこれが流行っている!)のステップアップモデルとして、いかがだろうか。今から、新車で買うのは難しそうではあるけれど……。

生産台数が増える、もしくは第2弾のあることを、期待したい。

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