ジャガー・ルクルトCEOが語る新作「ジオフィジック」の魅力|JAEGER-LECOULTRE
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2015年10月14日

ジャガー・ルクルトCEOが語る新作「ジオフィジック」の魅力|JAEGER-LECOULTRE

JAEGER-LECOULTRE|ジャガー・ルクルト

ジャガー・ルクルト初、10月1日から販売

新コレクション「ジオフィジック」を世界同時発表(1)

スイスでも屈指のムーブメント開発能力を持つ名門マニュファクチュール、ジャガー・ルクルトのCEO、ダニエル・リエド氏が、香港で開催されたアジアを対象とする時計見本市、WATCHES & WONDERSの直前に来日。新作、さらにはジャガー・ルクルトの戦略とブランドの将来について、話を伺った。そして、日本市場への重大ニュースも聞くことができた。

Photographs by KISHIDA KatsynoriText by KAWADA Akinori

エンジニア出身のCEO、ダニエル・リエド氏

――2013年にCEOとして就任されて2年が経過されました。本日はジャガー・ルクルトの新製品や将来についてのお話を主に聞きたいと思いますが、その前に、ダニエル・リエドさんご自身のことについて教えてください。どのようなキャリアを歩んでこられたのか、お聞かせください。

私と時計業界との関わりは、私が大学で精密機械工学を学んだことにはじまります。スイスという国において、精密機械工学を学ぶということは、時計業界のエンジニアとして職業人生をスタートさせるということにほかなりません。大学を出て、すぐにロレックスでエンジニアとしてのキャリアをスタートさせました。私は少し変わった経歴をもっていて、工科大学で学んでいたにもかかわらず、ファイナンシャルについても学んでいました。そのことが、生産の現場でマネージャーになるために生かされ、ジャガー・ルクルトに移って、役に立っています。

――ロレックスで積まれたキャリアも、相当に長いと聞いています。両社の時計やコンセプトには、どのような違いがあるのでしょうか?

ロレックスは、常に最先端のテクノロジーを追及していました。それに対してジャガー・ルクルトは、芸術的な伝統ある技術の世界の住人です。もちろん、パーツなどの精密製造技術や素材技術では最先端に対応していますが、歴史に培われたメティエ・ダール(職人の技)に重きを置いています。エナメルやエングレービングといった芸術的な要素をハイエンドで追及しています。

それだけ、古くから継承されるサヴォア・フェール(ノウハウ)が社内に維持されているのです。伝統的な技術の維持も大変です。これから引退していく熟練の職人たちのサヴォア・フェールの吸収は常に課題となっています。レーザーを使った精密加工機械などの先端技術の導入と同じくらい、ジャガー・ルクルトにとっては大きな課題なのです。

――それだけ、ジャガー・ルクルトのラインナップは、多彩に感じられますね。

ええ、実際にジャガー・ルクルトの製品のバリエーションは、大変に広いものがあります。シンプルなモデルから「ハイブリス・メカニカ」と呼ばれる複雑モデルや「ハイブリス・アーティスティカ」と呼ばれる芸術的モデルまでを作れる人を育てるという使命は、非常に重いものです。同時に、お客さまにも“育って”いただきたいのです。

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機械式時計をはじめて買うお客さまは、シンプルなものを選ぶことが多いのですが、そこからさまざまな時計の技術を知っていただきたいのです。そして、ジャガー・ルクルトの時計にさらに目を向けていただいて、精密な「ハイブリス・メカニカ」や「ハイブリス・アーティスティカ」の世界まで触れていただきたいと思うのです。

――そうなりますと、ハイエンドの世界はもちろんのこと、エントリー層にも訴求する時計も大切になりますね。例えば、レディースウォッチなどについても、強化していく方向でしょうか?

お客さま、あるいは時計ファンの裾野を広げるというのは、常に大きな命題です。ですから、レディースにも力が入ります。「強化」というよりも、「創造」です。時計ブランドにおいて、レディースモデルはメンズの小型モデルではないはずです。私たちはレディースをいちから開発できる技術力を持っています。ですから「ランデヴー」のような機械式のレディースにもぜひ触れていただきたいのです。

Page02. WATCHES & WONDERSで発表された新作「ジオフィジック」とは?

JAEGER-LECOULTRE|ジャガー・ルクルト

ジャガー・ルクルト初、10月1日から販売

新コレクション「ジオフィジック」を世界同時発表(2)

WATCHES & WONDERSで発表された新作「ジオフィジック」とは?

――WATCHES & WONDERSで発表される新作に関して教えていただけますか。

現在、ジャガー・ルクルトには6つのコレクションがあります。今回のWATCHES & WONDERSでは、7つ目のコレクションを発表します。SIHH 2015で「ジオフィジック1958」が限定モデルとしてリリースされましたが、この「ジオフィジック」を、まったく新規のコレクションとして確立します。

――それは大きなニュースです。そのあたらしい「ジオフィジック」の特徴を教えてください。

現在のラインナップは「ハイブリス・メカニカ」「ハイブリス・アーティスティカ」が最上位にあり、次位にデュアルウィング機構の「デュオメトル」、さらにフラッグシップと言える「マスター」コレクションがあります。今回は「デュオメトル」と「マスター」の中間にあたるメカニズムで、デザインはスポーティにして、よりあたらしい顧客層をターゲットにしていきたいと思っています。時計のメカニズムに強い興味を持っている方々に、中身で勝負していきたいのです。

――あたらしいメカニズムを搭載するわけですね。

「ジオフィジック・トゥルーセコンド」は、まったくあたらしいムーブメントCal.770を搭載します。これは自動巻きで、「ハイブリス・メカニカ」と同じゴールドのローターを装備します。こちらはシンプルな3針です。さらにワールドタイム仕様のCal.772を搭載する「ジオフィジック・ユニバーサルタイム」も用意しています。

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――とくに、あたらしい要素として目玉になることはありますか。

まず、3針でもクロノグラフと同等の275パーツを使います。テンプは、いままでの時計のようなテンワ(テン輪)を持ちません。両端に“JL”をモチーフにしたウェイトと、そこにセットされた調整用のスクリューを持つ、棒状のスタイルとしました。テンプの重量が軽減され、空気抵抗も減るため、脱進機構全体が軽快に動き、精度とパワーリザーブが向上しました。

――それは大きな革新ですね。しかし、275ものパーツが必要になるということは、かなり複雑なメカを搭載しているのでしょうか。

はい。秒針が1秒毎にジャンプするように進むステップ運針をおこないます。こうした運動をおこなう秒針を他のブランドは“ジャンピングセコンド”と呼んでいますが、私たちは“トゥルーセコンド”と呼びます。これはヒゲゼンマイを応用した機構で、そのノウハウは19世紀に確立され、今回、現代的にアップデートしました。

ムーブメント内に、脱進機のものとは別に、“トゥルーセコンド”用のヒゲゼンマイの機構があります。なお、WATCHES & WONDERSでアナウンスした直後の10月1日に、日本も含めた全世界の正規販売店で、同時にこのモデルが販売されます。

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――それは驚きですね。それに、実物を見るのが楽しみです。さらに、これをベースとした時計への発展の余地も大きいと思えますが、いかがでしょう。

ええ、大変に先々の楽しみなムーブメントで、コンプリケーションのベースムーブメントにできると期待しています。そうした連続性は常に考えており、例えば、2014年に発表したミニッツリピーターに搭載したペリフェラールローターの自動巻き機構も、メカニズムをシースルーバックから見られるうえ、薄型にできるので、トゥールビヨンなどへの応用を考えています。

Page03. ジャガー・ルクルトの戦略

JAEGER-LECOULTRE|ジャガー・ルクルト

ジャガー・ルクルト初、10月1日から販売

新コレクション「ジオフィジック」を世界同時発表(3)

ジャガー・ルクルトの日本での戦略

――もう少し先の方向性についてもお尋ねしたいのですが。

手に取っていただきやすい商品の幅を広げていきたいと思っています。外見はシンプルで中身が複雑な「ジオフィジック」の展開だけではなく、複雑機械式腕時計「ハイブリス・メカニカ」「ハイブリス・アーティスティカ」をより親しみやすいモデルにできないかと考えていますし、レディースのための機械式時計のシェアも広げていきたいのです。

――ジャガー・ルクルトをもっと知っていただくという点でお尋ねしたいのは、日本市場について今後、あらたな展開をお考えですか?

実は、2016年の春を目処に、日本で初となる直営ブティックの準備を進めています。例えば、あたらしい「ジオフィジック」の“トゥルーセコンド”機構の動きは、実際に見ていただいた方がわかりやすく、お客さまにも訴求しやすいわけです。多くのコンプリケーションにもっと触れてもらえる機会を日本でも作りたい。直営ブティックを、時計の持つメカニズムや芸術性をより的確に伝えられる場にしていきたいと思っています。オープンの時期など詳しいことは、近いうちにアナウンスできると思います。

――それは非常に楽しみです。技術と芸術性に富んだジャガー・ルクルトの世界が、より身近になることを楽しみにしています。最後に、日本の時計ファンにメッセージをお願いいたします。

日本には、レベルの高い時計ファンが大勢いらっしゃいます。そうしたお客さまに、より多くのジャガー・ルクルトの製品を手に取っていただきたいと思っています。WATCHES & WONDERSの新作「ジオフィジック」、そして直営ブティックなど、今後もみなさんのご期待に添えるよう、前進していきたいと思います。

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ジオフィジック・トゥルーセコンド
ケース|ステンレススチール
直径|39.6mm
厚さ|11.7mm
ムーブメント|自動巻き(Cal.770)
機能|日付表示、秒針がステップ運針するトゥルーセコンド機構
ストラップ|アリゲーター
防水|5気圧
価格|102万5000円(税抜)

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ジオフィジック・ユニバーサルタイム
ケース|18Kピンクゴールド
直径|41.6mm
厚さ|11.84mm
ムーブメント|自動巻き(Cal.772)
機能|ワールドタイム(世界24タイムゾーンの時刻を表示)。日付表示。秒針がステップ運針するトゥルービート機構。
ストラップ|アリゲーター
防水|5気圧
価格|285万円(税抜)

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DANIEL RIEDO|ダニエル・リエド
ジャガー・ルクルトCEO。大学で精密機械工学や金融を学び、ロレックスに入社。ロレックスおよびチュードルでキャリアを重ね、ジャガー・ルクルトに移籍し、インダストリアル・マネージャーに。2013年より現職。

問い合わせ先

ジャガー・ルクルト

0120-79-1833

http://www.jaeger-lecoultre.com

           
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