連載・Yoko Ueno Lewis|暮らしノート・第9回 スウェーデン直感紀行 Vol.2「世界でいちばん注目を集めている環境先進都市 Malmo(マルメ)」

連載・Yoko Ueno Lewis|暮らしノート・第9回 スウェーデン直感紀行 Vol.2「世界でいちばん注目を集めている環境先進都市 Malmo(マルメ)」

Yoko Ueno Lewisの暮らしノート

The Way We Live with “STYLE”

暮らしノート 第9回 スウェーデン直感紀行 Vol.2
「スウェーデンのときめくシンプル“世界でいちばん注目を集めている環境先進都市 Malmo(マルメ)”」

環境ジャーナリスト 箕輪弥生さんの仕事の取材で、私たちはマルメ市(Malmo)の環境局に勤める若いスタッフに街を案内してもらいました。箕輪さんが日本の被災地復興に対して、彼らのアドバイスを求めると、「スクラッチ(ゼロ)からやれるいまがチャンスです!」と。このひとことは、まるで、私たちが日本を代表してこのマルメの地に立っているような、金縛り的な瞬間をあたえてくれました。

写真と文=Yoko Ueno Lewis(Dec. 2011)

暮らしに根づいた水とのかかわりがつくるたたずまいを連想させます

私がマルメの住宅街でもっとも印象に残ったことは、雨水の使い方です。雨水はあるとき、天から降り、地をぬらし、草木を生かし、大地にしみ入りつつ、余ったものは、そのままどこかへ流れていく……そんな稚拙な認識を、どこかでしていました。

日本ではどこの家も、住宅地にも雨樋(あまどい)や、その水が流れる溝があると思います。(ちなみに、うちのハウスは屋根がフラットで、そのわずかな傾斜路(チャネル)で雨水が樋に流れ込み、そのまま大地へ直行です。乾期のときは何ヵ月も雨が1滴も降りませんから、植木に水をやるにしても、水道水を使うしかありません。カリフォルニア全体の生活水系は、基本的には東部のシエラネヴァタの山々の恩恵である地下水でまかなわれています。

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ドアの横や正面に雨樋があっても気になりません

上野容子|スウェーデン 04

雨水は雨樋をつたって、石でできたキャッチャーで水路へ

市の住宅街では、各家に取り付けられた雨樋の水を集める、デザイン化された水路がはりめぐらされていて、水路にはところどころ、「たまり」のような箇所がつくられていて、そこに水を好む草花が植えられています。そこに「水辺」というとても小さな界隈が生まれ、水音がして、トンボや鳥がやってきます。

これは、気がつくと、とても日本的なスタイルに似ていて、例えば京都の上賀茂のあたりの住宅地など、きれいな湧き水の出る街など、暮らしに根づいた水とのかかわりがつくる、大昔からつづいているたたずまいを連想させます。

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市と民間の共同プロジェクト

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窓の使い方やデザインが巧み

とても密度の高いものになったマルメでの時間

しかしマルメはスクラッチ(ゼロ)から計画して、実行して、システムとして未来へつなげました。そして何より、絶えず進化させているのです。日本やオレゴンのように雨の多いところと、カリフォルニアのように雨期と乾期のあるところなど、それぞれ雨水とのかかわり方は異なると思います。

ただ、はじめの段階からコンセプトとイメージを用意して、その実現のためにゼロからシステムを組み立てていくチャンスというのは、見逃すと終わりです。とくに水回り、ゴミ回り、下水回り、電気やガス、交通機関など、基本のインフラは、ひとの暮らしの序章です。道路にしても、はじめから自転車路を用意しているのと、あとから自動車路や歩道を削ってつくるのとでは、すでに大きくちがってきます。

はじめの段階から約束事として決めておくことの上に、暮らしを豊にするシステムは生まれてくるのではないでしょうか? 利休が茶室のサイズを決めたことで、その茶の湯のサイズが無限大になったように。

マルメの滞在はわずか30時間あまり。青い空、やわらかい日差し、街をめぐる水の存在、そして環境局に勤めるさわやかな若いふたりのガイドとの出会いなど、マルメの時間はとても密度の高いものになりました。

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ABOUT
UENO Yoko Lewis

Yoko Lewis Design主宰 グラフィック&プロダクツデザイナー 京都芸大ビジュアルデザイン専攻(現大学院)卒。 在学中アーネスト・サトウに写真を習う。 80年代にギフトラッピングの企画で商品企画の世界に入る。 …