Volkswagen Sharan|フォルクスワーゲン シャラン 試乗インプレッション
CAR / IMPRESSION
2015年3月6日

Volkswagen Sharan|フォルクスワーゲン シャラン 試乗インプレッション

Volkswagen Sharan|フォルクスワーゲン シャラン

操縦して楽しいパワフルなミニバン(1)

日本に上質なミニバンを、とフォルクスワーゲンがシャランを発売。ターゲットはファミリーを中心としているが、多趣味なひとにも最適な実用性溢れる一台だ。

文=小川フミオ

充実した装備が魅力のハイライン

フォルクスワーゲン シャランは、7人乗りのシートに、左右スライドドアを備えたミニバン。4,855mmの全長をもつ大型ボディだが、エンジンは効率のよい1.4リッターターボ。これが予想外によく走る。ターゲットはファミリー層がメインになるが、サーフボードを運ぶのにも便利だし、多趣味で豊かな大人には適した1台かもしれない。

「日本の乗用車市場の3割を占めるミニバンは日本独自のプロダクト。外国にはあまり製品がないが、高品質で、かつ操縦して楽しいミニバンを求める国内ユーザーは多いはず。そのひとたちに、シャランのよさを味わっていただきたい。先だって発売されたゴルフ トゥーランとともに、ミニバンを日本戦略の大きな柱にしていきたい」。
輸入元のフォルクスワーゲングループ ジャパン(以下VGJ)ではシャラン導入の背景を説明する。

日本に導入されるシャランは装備のちがいがある2モデル。シャランTSIコンフォートライン(379万円)と、シャランTSIハイライン(439万円)。後者には、シートヒーター内蔵レザー/アルカンターラ・シート、バイキセノンガス封入ヘッドランプ、リアビューカメラ、キーレスエントリーおよびエンジンスタートシステム、パワーテールゲート、17インチホイールが標準装備となる。

Volkswagen Sharan|フォルクスワーゲン シャラン 試乗インプレッション|02

Volkswagen Sharan|フォルクスワーゲン シャラン 試乗インプレッション|03

1.8トンの車重を引っ張る、小排気のターボエンジン

コーナリング時の安定性を高めるESPおよびDSR(ドライバー・ステアリング・リコメンデーション)をはじめ、緊急時のブレーキ圧を自動的に高め、制動距離を短くするブレーキアシスト、直径5mm以下の穴を自動的にふさいでくれるモビリティタイヤ、サイドエアバッグおよび側突時に頭部を保護するカーテンエアバッグ、チャイルドシートを車体に溶接されたフックに取りつけるISOFIX機構を備えたセカンドおよびサードシート……と、安全性に関連するものは2モデルとも標準で備えられている。

「7席ぶんの3点式セイフティベルトの採用など、安全装備は国産車より豊富ということを知ってもらいたい」とVGJでは話す。

シャランの魅力とはと訊かれると、装備の豊富さにくわえ、作りのよさ、剛性感の高さ、高機能なデザイン、ハンドリングをふくめた操縦性のよさ、など、いろいろあげられる。エンジンは「え?」と思うぐらい小排気量の1.4リッター4気筒だが、可変バルブタイミング機構にくわえ、スーパーチャージャーとターボチャージャーによるいわゆるツインチャージドで、1.8トンのボディに対して非力さは感じさせない。さらにスタートストップ機構と、ブレーキエネルギー回生システムを組みあわせたフォルクスワーゲンの「BLUE MOTION」テクノロジーを採用したモデルでもある。

おなじ排気量のユニットが、シャランより小ぶりのミニバン、トゥーランにも搭載されているが、シャランの場合、最高出力150ps(トゥーランは140ps)、最大トルク240Nm(同220Nm)と、少しずつスペックが上がっている。組みあわされるトランスミッションも、トゥーランが乾式7段DSG(2ペダルのデュアルクラッチシステム)であるのに対して、シャランはよりパワフルなエンジン用の湿式6段DSGとなる。

Volkswagen Sharan|フォルクスワーゲン シャラン

操縦して楽しいパワフルなミニバン(2)

小気味良いコーナリングを実現するステアリング

走らせると、意外なぐらいパワフルだ。なにも予備知識がなければ2.5リッターぐらいの排気量と思えるほど、低回転からたっぷりとトルクが出て、それが高回転域まで途切れることがない。「国産のライフサイズ(大型)ミニバンとトルクを比較しても数値的に遜色ないばかりか、最大トルクの発生回転数でいえばシャランは1,500rpmからなので、日常的な使い勝手ははるかに上」とVGJが胸を張るのもわかる。

瞬間燃費計が備わっているので加速時に目をやると、アクセルペダルを多めに踏み込んだときはリッター4kmなどという数値が表示されるが、巡航に移るとリッター13kmを超える好燃費が表示される。小さなエンジンを載せていてもボディに負けていては、結局燃費が悪化するが、シャランは少ないアクセル開度で気持ちよく加速する。

シャランの操縦性においては、ステアリングに特筆すべきものがある。ハンドルは中立付近でも反応がよい。国産ミニバンに慣れたひとにはダイレクトすぎる、と思われるぐらいだ。切り増しすると車体の反応速度は速く、コーナリングも気持ちがよい。重心高は極力低く抑えているとフォルクスワーゲンの説明にあるとおり、不安定さはみじんもない。横風の影響も比較的少ない模様。風が比較的強い高速での巡航中も不安を感じることはなかった。直進安定性を高める電動パワーステアリングの恩恵も大きいだろう。

Volkswagen Sharan|フォルクスワーゲン シャラン 試乗インプレッション|05

Volkswagen Sharan|フォルクスワーゲン シャラン 試乗インプレッション|06

数字ではなく、乗ってこそわかる快適性と高い燃費

「日本サイドから強い要望を出して実現してもらった」とVGJが言う左右の電動スライドドアは、軽くドアハンドルを引くと作動する。室内はBピラーに設けられたスイッチでも開閉可能。3座並んだセカンドシートは、それぞれが独立してリクライニングおよびスライド可能。取りはずしも容易だ。作りもよく、座り心地も快適。日本でよく見る、だらりとしたソファ的なシートでない点は、ドイツのセダンのよさを知っている層には強くアピールできるだろう。

サードシートは2座。足もとのフロアが深く掘ってあり、大人でも2名乗車がそれほど苦にならない。車外からのアクセスにあたっては、セカンドシートが凝った機構で倒れ、開口部が大きくなるため、乗車が容易になっている。このあたりの設計からも、VWの本気ぶりがわかる。

「国産車に対する優位性の点では、全幅にも注目してほしい。カタログ上では1,910mmと大きいが、ミラーの端から端までの実用的な数値をみると、けっして国産車より大きくない」。VGJではそう話す。

実際、全幅をトヨタ アルファードと比較すると、もういちど書くがシャランが1,910mmであるのに対してアルファードは1,830mmと控えめだ。しかしミラーまで測ると、アルファードの左右幅が2,170mmあるいっぽう、シャランは2,081mmに抑えられている。実用上の数値はVWがつね日頃強調しているポイントだ。燃費についても日本独自の10・15モードによる計測でなく、日常生活でふつうに乗って得られた「実燃費」による優位性が強調されている。そのあたりは「乗ればわかる」という。

「操縦して楽しくないミニバンでも、家族のために、と購入を考えているひとは、ぜひいちどシャランを試してほしい」とVGJ。たしかに試乗すると、「ミニバンもいいじゃないか」という気になる。

押し出しがそう強いわけでもなく、デザイン的に個性があるわけでもない。控えめだが、いいもの。シャランは所有者だから得られるよろこびをあたえてくれるクルマだ。BMWに乗っていても、ポルシェに乗っていても、機能主義的なクルマを「使い倒す」生活に憧れるものだ。そんなひとにはシャラン、いいかもしれない。

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Volkswagen Sharan|フォルクスワーゲン シャラン
ボディ|全長4,855×全幅1,910×全高1,750mm
車両重量|1,830kg
エンジン|1.4ℓ 直列4気筒+インタークーラーつきターボチャージャーおよびスーパーチャージャー
最高出力|110kW(150ps)/5,800rpm
最大トルク|240Nm/1,500-4,000rpm
トランスミッション|6段DSG
10・15モード燃費|14.0km/ℓ
CO2排出量|178g/km
駆動方式|FWD
価格|379万円
※CO2排出量は欧州データに基づく。

           
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