MATSUNAGA Manabu|Vol.2 シュバルの理想宮の庭

MATSUNAGA Manabu|Vol.2 シュバルの理想宮の庭

carnet de jardin タイムカプセルの庭へ

MATSUNAGA Manabu|松永 学

Vol.2 シュバルの理想宮の庭

郵便配達人の空想空間

一見、アジアの古代遺跡のようにみえなくもないが、じつはそうではない。この宮殿の庭があるのはフランスだ。一度も住んでいた村からでたことのなかった郵便配達人シュバルが、なんと33年間もかけつくりあげたもの。日々配るポストカードから想像力を膨らませ、白日夢を見続けた男のねじれた庭の世界!

写真・文=松永 学

1879から33年間かけて制作された庭だ。33年間! フランスはドローム県,オートリーヴ近くにある。つくりあげたのは、Joseph Ferdinand Cheval(ジョセフ・フェルディナンド・シュバル。1836年生まれ – 1924年没)。

ここは彼がたった一人で作り上げた宮殿だ。ユニークなのは、彼は郵便配達人だったこと。ポストカードの絵に空想を抱いていた彼は、毎日徒歩で郵便を配達していたという。
孤独な世界に身をおき、変人扱いを受けつつも自分の夢には忠実であった。
この宮殿は、かのアンドレ・ブルトンを中心としたシュールレアリストの心も鷲掴みにするほど、新鮮かつ強烈であった。
1969年にフランス政府の文化大臣、アンドレ・マルローによりこの理想宮は文化財として登録されている。
壮大な宮殿と思われるが近寄ると意外と小規模だ。しかし細部はこりに凝っていて、至る所にメッセージが掘られている。
さまざまなスタイルが混在する小宇宙は、あらゆる角度から楽しめる。
庭という枠からはずれ、草木も無い。しかし、永遠に枯れない植物がモノトーン、石とセメントで空間時間をねじ曲げながら息づいている。シュバルは自分の理想宮をつくりあげられたのだろうか。ただただ、その想像力の偉大さに打ちのめされるだけだ。

シュバルの理想宮
http://www.facteurcheval.com/

シュバルの理想宮 01
ABOUT
MATSUNAGA Manabu

写真家。北海道根室市生まれ。父の影響で小学生から写真をはじめる。暗室デビューも同時期。高校卒業後上京。日本大学芸術学部写真学科卒。学生時代はアルバイトに明け暮れる。アングラアマチュア音楽バンドで、舞台演出写真スライドショー&キーボードを担当。欲しいレコードを買うために、マニアックなレコード店が多かった新宿駅界隈が庭となる。日本デザインセンター入社後、2年間で退社。フリーフォトグラファーになる。その後フランス・パリに移住。雑誌を中心にルポルタージュやポートレイトなどで幅広く活躍。昨年2009年12月より、『carnet de voyages』というタイトルで旅をテーマとしたweb写真集を発表している。iPhone+iPad+iPodTouch用アプリ(PhotoHorloge)でも展開中! パリ発『webマガジン chocolatmag』ではビジュアルを担当。コラム内”chocolat papa356J”で毎日更新の写真コラムもはじめる。叔父はジェイムス・ジョイスの翻訳で有名な、日本の英文学者・翻訳家である柳瀬尚紀氏。 オフィシャルサイト http://www.manabu-matsunaga.com/ carnet de voyages http://www.manabu-matsunaga.com/voyages/