名車の血をひく新型アルピーヌ「A110」に試乗|Alpine
CAR / IMPRESSION
2018年12月19日

名車の血をひく新型アルピーヌ「A110」に試乗|Alpine

Alpine A110|アルピーヌA110

ラリー界を席巻した名車の血をひく新型アルピーヌ「A110」に試乗

オリジナルA110のノウハウが息づいている

復活を遂げた名門ブランド「アルピーヌ」が、現代に蘇らせた「A110」は一体どんなスポーツカーに仕上げられているのか。日本に導入されたばかりのカタログモデルに、富士スピードウェイのショートサーキットと周辺のワインディングロードで試乗した。

Text by NANYO KazuhiroPhotographs by KAWANO Atsuki

2つのA110、20kgの差をどう捉えるか

2018年夏、日本でも待望のデビューを飾ったものの、初回限定50台の「プルミエール エディション」が抽選で発売されたアルピーヌ「A110」。この冬からはパーマネントラインナップとして、「ピュア」と「リネージ」というふたつのカタログモデルがついに展開された。平たくいえば限定バージョンの縛りが解けて、望めばアルピーヌA110が全国各地のディーラーで試乗し、気に入れば買い求めることができるようになったのだ。前者が790万〜811万円、後者は829万〜841万円となる。

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1990年代を最後に途切れてしまっていたスポーツカーメーカーが、たった1車種で何百種類ものモデルがひしめく日本市場に返り咲いたのだから、クルマ好きには慶事だといっていい。そして実際に、試乗したならば、その魅力に抗うことは相当に難しい。説明しよう。

ピュアとリネージの違いは、前者はサベルト製の軽量モノコックバケットシートを採用し、後者はブラウンのレザーが張られた内装&シートで、シートヒーターも備わること。他にもピュアにはない、ボルトによる3段階のシート座面高アジャスターやリクライニング調整、またフォーカル社製4スピーカーシステムにはサブウーファーもパッケージされ、ホイールもフックス製の鍛造アルミホイールではなく、同径ながらブラックに塗られた自社製を履く。

かくして車両重量はピュアが1,110kgであるのに対し、リネージはプラス20kgの1,130kg。加えてタイヤサイズこそピュアと同様ながら、トレッドは前後ともプラス15mmほどワイドなフロント1,570mm、リア1,565mmとなる。ジオメトリーセッティングを違わせてまで、20kg増の影響を最小限に留めたのだ。

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こう聞くと、より無駄のないピュアの方がスポーツカーとして上のように聞こえるかもしれないが、シートの調整幅は快適性の追求というより背の高い人に合わせるための最低限の方策といえる。むしろ快適性に貢献するのは、真冬の朝一番のような場面で使えるシートヒーターだろう。

ちなみに身長175cmの筆者はピュアでも、シートレールの前後スライドとステアリングのテレスコピック調整の上下で、すぐ最適なポジションが得られたが、ブラウンレザーの色と雰囲気も鑑みて個人的にはリネージに軍配を上げる。いずれも左ハンドル仕様も選べるが、シフトのセレクタはP/D/Rのボタン式で、2ペダルの7段ツインクラッチATをパドルシフトで操作する以上、MT車と違って左ハンドルを選ぶメリットは薄いといえる。

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オリジナルA110のノウハウが息づいている (2)

よく曲がるだけじゃない、お喋りなシャシー

まずは一般道をタウンスピードで、できるだけ空いていそうな峠を目指した。段差や路面のうねりを越えても、スポーツカーとは思えないほど足が柔らかで、乗り心地は望外にいい。そもそもの車重が軽くて前後44/56と重量配分のバランスもよく、サスペンションをあまり固めずに済んだという、開発チームのシャシー担当の言葉を思い出した。アーム長を十分にとったダブルウィッシュボーンを前後とも採用し、低速で流す程度でも足回りがよく上下に動き、しなる。

それにしても今日日、ハイエンドなニューモデルはコンフォート/スポーツ/スポーツ+といった数段階のアダプティブ シャシー コントロールを備えているものだ。しかしセンターコンソールに置かれたA110のSPORTボタンは、純粋にエンジンの回転数を鋭く引っ張り上げ、ギアチェンジのレスポンスやステアリングのゲインを高めるほか、レースモードでもESP介入をオフにするのみ。つまりダンパー回りに重たい電子制御や減衰力可変エアサスは与えられていない。単一のセッティングで街乗りも峠もサーキットもこなせるA110の足回りは、元のシャシーの高バランスぶりというか、素性のよさを物語っている。

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やがて交通量の少ない峠に着き、徐々にペースを上げてみた。公道ゆえ、限界を探るような飛ばし方はせず、ESPも介入しない程度の速度域だったが、後でマルチファンクション スクリーン内のテレメトリーを確かめたところ、横方向1G超えをやすやすと記録していた。とはいえ、峠でよく曲がる痛快なコーナリングマシンであることは、半ば想定内のことだ。アルピーヌA110で語りたくなるのは、その曲がり方の質や、過程の話だ。

前後荷重を積極的に使って操り始めると、手のひらや骨盤まわりに伝わってくるロードホールディングの確かさ、いってみればA110が語りかけてくる情報の多さに、驚かされる。グリップが横方向に移ってターンインが始まり、向きを変え続ける間ずっと途切れないニュートラルステアの感覚。アクセルオンとともにリアが踏ん張って地面を蹴り上げる感触。加えてタイヤが滑るか滑らないかのマージナルな「閾(いき)」の微妙な領域が素晴らしく広く、情報がリッチなのだ。

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タイヤのたわみや接地状況が手にとるように伝わってくる饒舌な足回りについては、後半の試乗パートでミニサーキットを数周した際に、さらに確信を得た。決して、何をしても曲がってくれるというタイプではない。むしろブレーキが遅れてステアリング舵角をこじり気味に当てると、当然のようにアンダーステアに陥って、ドライバーを甘やかさない。

しかし、コーナリング中の挙動がじつに穏やかで、ステアリングとアクセルワークでアングルをつけるように走らせても至極、操りやすい。これはミシュランと当初から共同開発したという、専用の「パイロットスポーツ4」に負うところもある。横方向のグリップを高め過ぎない一方、ブレーキング時の縦方向やウェット路面でのグリップを落とさない、専用コンパウントを採ったのだ。

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オリジナルA110のノウハウが息づいている (3)

飛ばさなくても楽しいスポーツカー

サーキットを終えて気づいたことだが、フラットなア路面はもちろん、大きくストロークしても接地面の変化が起きにくい前後ダブルウィッシュボーンサスは、むしろ一般道でそのメリットを強く感じられた。WRCやモンテカルロといったラリーで活躍したオリジナルのA110とメカニズム的に同じ部分はないながらも、そのノウハウは健在だと思われる。

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とはいえ共通の部分もある。開発陣は低重心化だけでなく、ドライバーのヒップ位置に重心をもってくることにこだわったという。ゆえに、交差点を90度に曲がる程度でも、背骨を軸にノーズがクルリと巻き込むような感覚が得られる。回転半径は5.4メートルと決して小さくないのに、素晴らしくコンパクトなスポーツカーを操っている感覚に、ごくごく低速域から満たされるのだ。

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スポーツカーとして逆説的だが、新生アルピーヌA110の魅力は、絶対的パフォーマンスだけを一義的に追及しなかったところ、そして饒舌きわまりないシャシー&ハンドリングにある。まるで相棒のような、スイートな一台となりそうな資質を秘めているのだ。

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Alpine A110|アルピーヌA110
ボディサイズ|全長 4,205 × 全幅 1,800 × 全高 1,250mm
ホイールベース|2,420 mm
重量|1,110 kg (ピュア)  1130kg(リネージ)
前後重量比|44:56
エンジン|1.8リッター 直列4気筒+ターボ
最高出力| 252ps/ 6,000 rpm
最大トルク|320 Nm / 2,000 rpm
トランスミッション|7段DCT
駆動方式|RR
サスペンション 前後|ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ 前後|320mmベンチレーテッドディスク
タイヤ 前|205/40R18
タイヤ 後|235/40R18
最小回転半径|5.8 メートル
燃費(JC08モード)|14.1 km/ℓ
価格|790万円-841万円

問い合わせ先

アルピーヌコール

0800-1238-110(9:00-18:00、年中無休)

           
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