ミスターポーターメンズバイヤー ダニエル・トッド氏インタビュー|MR PORTER
FASHION / MEN
2017年11月2日

ミスターポーターメンズバイヤー ダニエル・トッド氏インタビュー|MR PORTER

MR PORTER|ミスター ポーター

メンズバイヤー ダニエル・トッド氏インタビュー

まだまだ面白いブランドが見つかる、
そんな可能性を日本に感じている

ロンドンを拠点とするメンズファッションのオンラインショップ、MR PORTER(ミスターポーター)。ショッピングできるブランド数は、スタート当初の80から今や450を超えるという世界最大規模のECサイトだ。ブランドのセレクトやバイイングを担当するのは精鋭のバイヤー陣。その1人であり、今回で5回目の来日というダニエル・トッド氏に、日本のブランドや新たにローンチされるオリジナルレーベル「Mr P(ミスターピー)」について話を聞いた。

Photographs by TANAKA TsutomuText by YAMADA Tsuyoshi [plume]

バイイングの基準はそのブランドが「ほかにないものを持っている」こと

―― まず、今回来日された目的から教えてください。

ダニエル・トッド氏(以下、ダニエル) 日本のブランドに“会いに行く”ためです。日本にはMR PORTERで紹介しているブランドがたくさんありますし、新しいブランドも発掘したいと思っています。それと、インスピレーションを得るため、という理由も大きいですね。今、日本のストリートで何が起こっているか、自分の目で見ることが大事なんです。それは街を歩く人たちを見ていても感じますし、気になる場所やショップはとにかく行ってみます。昨日は初めて上野に行きましたよ。

―― 上野ですか!? 上野のファッションを見るため?

ダニエル いえいえ(笑)、上野ではアメ横のヴィンテージショップを回りました。サープラスのね。

―― 確かにサープラスといえばアメ横ですね。今、日本のファッションのどんな点に注目されていますか?

ダニエル 日本のストリートファッションは常に注目しています。ストリートというカテゴリーは日本が発祥じゃないかと思うんです。例えば、パタゴニアやザ ノース フェイスは世界中を席巻しているブランドですが、日常的にファッションとして着ているのは日本くらいではないでしょうか。雑誌でもアウトドアをファッションとして特集していたりしますよね。とても面白い視点だと思います。

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「Mr P」ルックブックより

―― MR PORTERのTRENDページでもダウンジャケットが特集されていましたね。ダニエルさんは、今のトレンドについてどう感じていますか?

ダニエル トレンドは突然湧き上がってくるというよりも、少しずつ変化していくものだと感じています。今シーズンはまだこれまでの傾向が継続しているイメージですね。キーワードでいうなら引き続き「70’s ストリートウェア」や「90’s スポーツウェア」。ブランドでいえばグッチ、バレンシアガ、ヴェットモン。グッチに代表されるようなロゴものは来春も引き続き多いです。

―― 注目されているブランドはありますか?

ダニエル 今トレンドを牽引しているのはバレンシアガでしょう。先日発売されたスニーカーの「トリプルS」は大ヒットしましたし、来春のメンズのショーは作り込みがすばらしかった。太いパンツ、オーバーサイズのジャケット、アノラック。すべてがトレンドでした。日本ではオーバーサイズがすでに受け入れられているようですけれど、世界的に見ると長く続いたスキニーからようやく新しいシルエットに移行してきたところなんです。

MR PORTER|ミスター ポーター

メンズバイヤー ダニエル・トッド氏インタビュー

まだまだ面白いブランドが見つかる、
そんな可能性を日本に感じている (2)

―― 日本のブランドについても教えてください。

ダニエル MR PORTERでは日本のブランドをとても多く扱っています。なかでもビームス プラスは2016年にロンドンでポップアップを開催した縁もあって、大きな割合を占めています。ほかにもネイバーフッド、ノンネイティブ、ワコマリア、ビズビムなど数え切れないくらい(笑)。ビズビムはすっかり定着しましたね。熱狂的なファンが多いので人気が安定していますし、グローバルなポジションを確立していると思います。彼らのクラフツマンシップと商品のクオリティはすばらしい。とくにデニムジャケットは私が見たなかで最高です。

―― どういった基準でブランドをセレクトされているんですか?

ダニエル 我々がブランドを選ぶ基準は日本に限らず「ほかにないものを持っている」ことです。流行の最先端を提示できること。あるいは流行に関係なく10年前の服でも着られること。そういったオリジナリティを持っていることが重要です。

―― そういう情報はどこから得るんですか?

ダニエル ブランドを探すのはインターネットで情報を集めることが多いですね。こうやって来日して実物を見たりすることも大切です。今回は、フラッグスタッフ、ダブレット、あとオーラリーを見に行きます。この3ブランドはこれまで見たことがなかったので、とても楽しみにしているんです。まだまだ面白いブランドが見つかる、そんな可能性を日本に感じていますね。

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「Mr P」ルックブックより

―― 日本のブランドでとくにお気に入りのブランドはありますか?

ダニエル タカヒロミヤシタザソロイスト.です。ナンバーナインの頃から宮下さんの服は好きでした。彼は、素材の扱い方やカット、ディテールの作り込みに一切妥協をしない。パーフェクトなんです。アンダーカバーも大好きです。

―― 日本ならではだと思うことは、ほかにもありますか?

ダニエル コラボレーションが多いのが面白いですね。日本人は得意なんだと思います。MR PORTERにもEXCLUSIVEコレクションがあって、コラボレーションを展開しています。カスタマーに特別な気分を感じてもらえるように、我々がそのブランドから引き出したいものを表現しているんです。

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「Mr P」ルックブックより

―― そして、今度はオリジナルレーベルもスタートするそうですね。

ダニエル 11月に「Mr P(ミスターピー)」という名前でローンチするカプセルコレクションです。男性のワードローブをイメージして、オーバーコート、デニム、ジャージーなど、シーズンに関係なく揃えておきたいクラシックプロダクトを提案していきます。例えば、テーラリングならイタリア、デニムなら日本製、ジャージーならポルトガルといったように、そのアイテムを作るのがもっとも得意な国で生産します。多くのブランドは夏に秋物が立ち上がり、冬に春物がスタートしますが、Mr Pは季節に合わせて2ヶ月ごとに新しいアイテムをローンチします。欲しいものが欲しい時に手に入る。それを可能にする新しいオプションとしてオリジナルレーベルという方法を選択しました。

―― 日本でいう"定番"ですね。ダニエルさんならどのアイテムがおすすめですか?

ダニエル 日本のカスタマーにおすすめするなら、カシミヤのニットはいかがでしょうか。デザインはシンプルなクルーネックで、カラーはネイビー、グレー、ブラックから始めて少しずつ増やしていくつもりです。とても上質でスタンダードなものです。私も、私の父も着られるアイテムです。サイズも幅広く展開しますので、日本のみなさんにもきっと楽しんでいただけると思いますよ。

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Daniel TODD|ダニエル・トッド
MR PORTER(ミスターポーター)のバイヤーチームに所属し、レディ・トゥ・ウェアとスポーツ部門を担当。2010年にNET-A-PORTER(ネッタポルテ)でキャリアをスタートさせ、デピュティ・プロダクトエディターを務めた後にMR PORTERの設立に参加。新規ブランドの開拓・導入に尽力し、現在も30以上ものブランドを担当している。

           
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