世界的工業デザイナーが考える、理想のウォッチ・デザイン|BVLGARI
Watch & Jewelry
2015年12月14日

世界的工業デザイナーが考える、理想のウォッチ・デザイン|BVLGARI

BVLGARI OCT|ブルガリ オクト

ジェントルマン・ドライバーのために

ブルガリ「オクト」シリーズに追加された限定モデルをめぐる小連載。最終回となる第3回は、デザインを手がけた工業デザイナー、奥山清行氏にインタビュー。そのコンセプトやデザインの背後にある哲学について語ってもらった。

Photographs by JamandfixText by OGAWA Fumio

それは1本の電話からはじまった

2015年秋に登場したブルガリ「オクト ヴェロチッシモ KEN OKUYAMA DESIGN 日本限定モデル」と「オクト ソロテンポ KEN OKUYAMA DESIGN 日本限定モデル」をめぐる小連載。最終回は、デザインを手がけた工業デザイナー、奥山清行氏へのインタビュー。イタリア・ローマのブランドであることを強調するブルガリのためにウォッチをデザインするにあたって、奥山氏は何を考えたか。

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「ディレクターを務めるファブリツィオ(ブオナマッサ・スティリアーニ氏)から電話があって、「オクト」をやらないかと誘われたんです。一瞬、答えを保留していると、つづけて、イタリアと日本のデザインの共通性や、時計とクルマとのつながり、について、彼は自分が考えていることを僕に伝えてきたんですね。それを聞いて、これはやるしかないと、燃えました」

第1回と同様、奥山氏に話を聞いたのは、銀座ブルガリタワーだった。プレス向けの発表会が終わり、カクテルレセプションがはじまるまでのあいだ。プレスの評判もよく、奥山氏は笑顔を絶やさず、デザインした背景について語りだした。

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ユーザー像はジェントルマン・ドライバー

「今回のふたつのモデルは、エレガントなものを好む日本人の顧客のために限定で出したいというのがクライアントであるブルガリの意向でした。もっと具体的なユーザー像もイメージしている、とファブリツィオは言ったんですね。それはジェントルマン・ドライバーでした。ふだんはビジネスマンで、週末にレース場でオフを楽しむ趣味を持っているひと。それこそ文化といえるライフスタイルで、kode9(コードナイン)のようなポテンシャルの高いスポーツカーを作っている僕に、そのひとたちに向けてのウォッチをデザインしてほしいというのが要望だったんです」

プロジェクトがスタートしたのは2013年。奥山清行氏と、ファブリツィオ・ブオナマッサ・スティリアーニ氏は、電話とメールを活用しながら、議論を深めていったという。奥山氏は数かずのアイディアスケッチを用意し、それに対してスティリアーニ氏は、ブルガリ・ウォッチの哲学を軸にコメントを返すという具合。このウォッチはふたりで楽しみながらつくり上げたようなもの、と奥山氏は述懐する。

奥山氏は、じつは、ウォッチに対する哲学を胸に秘めていた。

スポーツカーの計器を思わせる文字盤

「ウォッチとはどういうものであるべきか。僕がつねに考えているのは、5メートルも10メートルも離れたところからでも、モデルがちゃんとわかるべきだということです。小さな存在ですが、きちんと目立たなくてはいけない。そして近くでじっくり眺めた時にまた楽しめる。それが僕の理想とするウォッチのデザインです」

「オクト ヴェロチッシモ KEN OKUYAMA DESIGN 日本限定モデル」は、全体のイメージは「黒と赤を基調にしたかった」という奥山氏のコンセプトを採用。スポーツカーの計器を思わせる文字盤といい、たしかに遠くからでも一目でわかりそうだ。いっぽう、ディテールにも凝っている。直径41mm のケースは、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)仕上げだ。くわえて、サンレイ仕上げのアンスラサイトダイアル、ダイヤモンドポリッシュ仕上げのフィレ装飾で縁取ったマットブラックのスネイル仕上げの時分カウンター、ロジウムメッキインデックス、レッドの“分トラック”とメインアワーの大きな“12”。さらに、セミシースルーのサファイアバックには奥山清行氏のシグネチャーが入っている。

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「オクト ソロテンポ KEN OKUYAMA DESIGN 日本限定モデル」も同様だ。直径41mm のステンレススティール製ケースに、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)仕上げと、セミシースルーのサファイアバックにデザイナーのシグネチャー入りというコンセプトは「オクト ヴェロチッシモ」とおなじ。サンレイ仕上げのアンスラサイトのダイアルの中央ゾーンは、ダイヤモンドポリッシュ仕上げのリングで縁取られたマットブラックだ。ロジウムメッキのインデックス、レッドの分トラックと“6”と“12”が目を惹く。

スタイルを表現するための究極の道具

「ディテールを刺激的にしたい」というのが、スティリアーニ氏の考えだったという。たんに機能の追求でもないし、また、デザイン的に必要以上に目立つものも避けたかった。身につけているうちに、いろいろな要素を見つけていく。それがブルガリのウォッチなのだと奥山氏は肝に銘じてデザインしたそうだ。

「このふたつのウォッチは、ライフスタイルのプロダクトだと僕は思っています。ひとつ買えば人生が変わるというわけではありません。ユーザーの方が自分で時間をかけて築き上げてきたスタイルがあって、それを表現するためのひとつの頂点というか、究極の道具だと思っていただけたらと思います。僕が考えるシチュエーションはこうです。週末はこれをつけてレースに出走する。月曜日にはオフィスに行く。そこで腕にあるオクトを見て、レースのことなどを思い出して楽しい気分になってもらう。そうなればうれしい。それがジェントルマン・ドライバーのために、というコンセプトに込められた意味でもあるのです」


The Essence of the BVLGARI OCTO
ブルガリ「オクト」 今回のリコメンドモデル

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オクト ヴェロチッシモ KEN OKUYAMA DESIGN 日本限定モデル

ケース|41mm
ムーブメント|キャリバー ヴェロチッシモ(自動巻き)
パワーリザーブ|約50時間
石数|31石
ストラップ|ブラックアリゲーター
価格|131万7,600円
限定数|200本


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オクト ソロテンポ KEN OKUYAMA DESIGN 日本限定モデル

ケース|41mm
ムーブメント|キャリバー ソロテンポ
パワーリザーブ|約50時間
石数|31石
ストラップ|ブラックアリゲーター
価格|104万7,600円
限定数|50本

Ken Kiyoyuki Okuyama|奥山清行
工業デザイナー/KEN OKUYAMA DESIGN代表。1959年山形市生まれ。GM、ポルシェを経てピニンファリーナのデザインディレクターに就任。フェラーリ エンツォやマセラティ クワトロポルテなどのデザインで注目を集める。2007年よりKEN OKUYAMA DESIGN代表として、自身のブランドで自動車、インテリアプロダクト、眼鏡などの開発から販売までをおこなっている。ヤンマーのトラクターや新幹線などのデザインも手がけ話題を呼んでいる。

問い合わせ先

ブルガリ ジャパン

Tel.03-6362-0100

http://www.bulgari.com/ja-jp/octo

           
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