ブルガリ・ウォッチの美の追求者が語る、イタリアのデザイン哲学|BVLGARI
Watch & Jewelry
2015年11月26日

ブルガリ・ウォッチの美の追求者が語る、イタリアのデザイン哲学|BVLGARI

BVLGARI OCTO|ブルガリ オクト

心を動かすための審美観でつくりあげたウォッチ

ブルガリ「オクト」シリーズに追加された、工業デザイナー、奥山清行氏が手がけた限定モデルをめぐる小連載。その第2回は、ブルガリ・ウォッチ・デザインセンターのシニアディレクター、ファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ氏に、「オクト」とイタリアデザインの深い関係について語ってもらった。

Photographs by JamandfixText by OGAWA Fumio

プロダクトの背景にあるもの

2015年秋に登場したブルガリ「オクト ヴェロチッシモ KEN OKUYAMA DESIGN 日本限定モデル」と「オクト ソロテンポ KEN OKUYAM DESIGN 日本限定モデル」をめぐる小連載。前回は、デザインを担当した奥山清行氏ら仕掛け人の対談をお送りした。今回は、「オクト」の思想をより深く理解してもらいたくて、デザインのまとめ役を務めたファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ氏に登場してもらった。

ブルガリ・ウォッチ・デザインセンターでシニアディレクターを務めるスティリアーニ氏は、クルマ、家具をはじめ、さまざま分野で活躍してきた工業デザイナーだ。スイスはヌーシャテルにオフィスをもち、ブルガリ・ウォッチにおける美を追求しているスティリアーニ氏は、プロダクトの背景にあるのは、イタリアのデザイン哲学だと語る。

「まず「オクト」がたぐい稀な個性ある美をもっていることを前提にお話しします。美しいものをつくろうというイタリア人の情熱は、ローマ時代から連綿とつづいてきたものです。その例が、ローマ市内にあるコロッセオやパンテオンでしょう。13世紀のジオットから、16世紀のミケランジェロを中心とした、いわゆるイタリア・ルネサンス期にも(場所はフィレンツェですが)すばらしい建築、彫刻、絵画がたくさん生み出されました」

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「形態は機能に従う」は真実か

1884年にローマで創業という歴史をもつブルガリ。そのプロダクトを語るには、つねに長い時間と、先人たちが築き上げた美への情熱を抜きにはできないようだ。イタリアのおもしろさは、美を生み出す力が衰えることなく、現代までつづいているところにある。

「現代は、ジオ・ポンティ、エットーレ・ソットサス、ビコ・マジストレティ、ジョー・コロンボ、アキーレ・カスティリオーニ、アレッサンドロ・メンディーニといった具合に、数多くのすぐれた工業デザイナーが活躍してきました。近代建築でも、ミラノのピレリビルのように、見るべき作品が多いし、さらに家具の分野では世界中に影響を与えてきました」

形態は機能に従う、という有名な言葉がデザイン界にある。しかし、イタリアデザインにはあてはまらない、とスティリアーニ氏は言う。

「形態は機能に従う、というのは建築家のルイス・サリバンの至言と、現代の工業デザインおよび建築の世界では考えられています。しかし、イタリアのデザインにおいて、それは必ずしも真実ではありません」

「オクト」を手がけている、ブルガリ・ウォッチ・デザインセンターのファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ氏は、イタリア人デザイナーとして、意味深な発言をする。

イタリアデザインの力

「機能に従わなくてはならない、と決めずとも、イタリアのデザイナーは制約を逆手にとって、すばらしい作品を生み出してきました。たとえば、あまりお金をかけられないのを前提に、アキーレ・カスティリオーニがザノッタ社のために1957年にデザインした「メッツァドロ(トラクターシート)」。なんと、トラクター用の合成樹脂の座面を、1本脚の、いわゆるマッシュルームストールに据え付けたものです」

デザイン界に身をおき、ディレクターの立場で、つねにあらゆる分野に目配りをしているスティリアーニ氏。それだけに、よどみない口調で、イタリア・デザイン史の断片が語られる。

「既存のプロダクト、それもトラクターのシートという、もっともつまらないもののひとつと思われていたものを使って、みごとに美しいストールを作りあげました。すべてを一から作らずとも、流用で美は創造できることをカスティリオーニは証明してくれたといえます。私はモダンファニチャーの傑作だと思っています。こんな発想が、イタリアデザインの力でもあるのです」

オクトは小さな建築

今日のイタリアデザインも、ヘリティッジ、つまり文化的遺産のイメージを活かしつつ、新しい分野を開拓していく任務を、つねに負っているといえる。あたらしい分野とは、私たちのライフスタイルをより豊かにしてくれることといえる。「オクト」を見て心がときめくのは、直径41mmのケースのなかにその能力を秘めているからだろう。

「オクトは、じつは小さな建築だと私は思っています。ローマでもっともすぐれた建築のひとつは、さきにお話ししたコロッセオかもしれませんが、それを腕に載せるわけにはいきません。」

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「オクト ヴェロチッシモ KEN OKUYAMA DESIGN 日本限定モデル」(左)と「オクト ソロテンポ KEN OKUYAMA DESIGN 日本限定モデル」

「でもコロッセオの美しさを構成している哲学を理解すれば、別の形で同種の美をウォッチの形に造型できると信じています。たとえばプロポーションであり、またはディテール処理です。自分が何に心を動かされているか、その正体を突き止めることができれば、おなじような感動を与えるプロダクトをデザインできるはずです。オクトは心を動かすための審美観でつくりあげたウォッチなのです」

次回は、「オクト ヴェロチッシモ KEN OKUYAMA DESIGN 日本限定モデル」と「オクト ソロテンポ KEN OKUYAMA DESIGN 日本限定モデル」をデザインした奥山清行氏へのインタビュー


The Essence of the BVLGARI OCTO
ブルガリ「オクト」 今回のリコメンドモデル

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オクト ヴェロチッシモ KEN OKUYAMA DESIGN 日本限定モデル

ケース|41mm
ムーブメント|キャリバー ヴェロチッシモ(自動巻き)
パワーリザーブ|約50時間
石数|31石
ストラップ|ブラックアリゲーター
価格|131万7,600円
限定数|200本


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オクト ソロテンポ KEN OKUYAMA DESIGN 日本限定モデル

ケース|41mm
ムーブメント|キャリバー ソロテンポ
パワーリザーブ|約50時間
石数|31石
ストラップ|ブラックアリゲーター
価格|104万7,600円
限定数|50本


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オクト バイレトロ

ケース|38mm

ムーブメント|キャリバー バイレトロ

パワーリザーブ|42時間

石数|33石

ストラップ|ブラックアリゲーター

価格|410万円4,000

Fabrizo Buonamassa Stigliani|ファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ
ブルガリ ウォッチ デザイン センター シニア・ディレクター。1971年イタリア・ナポリ生まれ。国立デザイン大学ローマ校(ISIA)でインダストリアル・デザインを専攻。卒業後はイタリア・トリノのフィアット・スタイル・センターに入社。2001年、ブルガリのウォッチ デザインチームに移籍。07年にブルガリ ウォッチ デザインセンターのディレクターに任命されキャリアを重ねる。

問い合わせ先

ブルガリ ジャパン

Tel.03-6362-0100

http://www.bulgari.com/ja-jp/octo

           
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