大型SUVで賑わう今年のフランクフルト|IAA 2015
CAR / FEATURES
2015年9月28日

大型SUVで賑わう今年のフランクフルト|IAA 2015

66th Frankfurt International Motor Show|第66回 フランクフルトモーターショー(IAA) 2015

大型SUVで賑わう今年のフランクフルト

世界的なSUVブームは今年も健在だ。今回のフランクフルトショーではフォルクスワーゲン、ジャガー、そしてベントレーまでもがニューモデルを披露。ハイブランドが送り出すSUVの魅力とは。現地から小川フミオ氏がお届けする。

Text by OGAWA Fumio

ジャガーならではのSUV

2015年のフランクフルト自動車ショーは、プラグインハイブリッドに代表されるエコカーがテーマだったとはいえ、SUVも大きな目玉だった。世界的な大型SUV人気というトレンドを追い風に、注目のモデルがいくつも発表された。

もっとも話題だった1台は、ジャガー「Fペース」だ。「意識したのはFタイプとの関連性」というデザインディレクターのイアン・カラム氏の言葉を裏付けるように、Cd値はわずか0.34のスリークな車体が美しかった。パフォーマンスクロスオーバーというメーカーの定義する、ジャガーならではのSUVなのだ。

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Jaguar F-PACE

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Jaguar F-PACE

ジャガーFペースのボディは全長4.7mを超えるいっぽう、全高は1.6mに抑えられている。低くてスポーティな印象だ。エンジンは当面、132kWの2リッター4気筒ディーゼル、280kWの3リッターV6ガソリン、221kWの3リッターV6ディーゼルの3本立ての模様で、フルタイム4WDシステムが組み合わせられる。内装もジャガー「XE」や新型「XF」に準じてスポーティで雰囲気たっぷり。レンジローバーをおなじグループに持ちながら、違う方向を目指して成功しているといえる。

「すべてのジャガーは200m先からでも目を惹かなくてはいけない。Fペースはこのクラスで他に追随するモデルがないほどの出来だと自負している。私たちデザイナーは、アルミニウムの軽量構造を持っていることを表現し、結果、エレガントで雰囲気あるスタイルを作りあげました」。前出のイアン・カラム氏の言葉である。

大きなショー会場で、ジャガーとはだいぶ距離が離れていたけれど、来場者の熱い興味という点でひけを取っていなかったのが、ベントレーだ。

66th Frankfurt International Motor Show|第66回 フランクフルトモーターショー(IAA) 2015

大型SUVで賑わう今年のフランクフルト (2)

ベントレー ベンテイガの圧倒感

「エクストラオーディナリー」。並外れた、という形容詞を何回も使ってプレスの前にお披露目されたのが、ベントレーカーズのSUV、「ベンテイガ」である。この言葉を発したのは、ウルフガング・デュレハイマーCEOだ。自信たっぷりに、全長5mを超える大型ボディのこのクルマを紹介した。

ベントレー ベンテイガは、巨大なグリルに大きな4灯式ヘッドランプが強い存在感を持つモデルだ。側面に回るとリアフェンダーアーチをふくらませたスタイリングにより「コンチネンタル GT」を連想させるが、スポーティというより圧倒的という印象が強い。

Bentley Bentayga

Bentley Bentayga

「トップクラスのSUVのなかでも、最も速く、最もパワフルで、最も豪華で、最も高級」と、最上級の形容詞が続く言葉で紹介されたベンテイガは、「W12」と呼ばれる6リッターの12気筒エンジンを搭載し、447kWの最高出力と900Nmの最大トルクを誇る。通常時に前輪40と後輪60の比率で駆動力を配分するフルタイム4輪駆動システムが組み合わされていて、オフロードでの走破性も(紹介のスピーチに「最も」とついてはいなかったけれど)自慢のようで、悪路を行く映像が公開されていた。

Bentley Bentayga

Bentley Bentayga

ショー会場でのベントレーカーズの面積は、(あくまでも比較的だけれど)狭くて、周囲に集まっている人を避けながら、ベンテイガの全体を撮影するのはかなり難しかった。さすがにプレス担当者は、一度に少人数しか車両に近づけないようにしたが、車内に入ると、長い時間出てこない。クロスステッチが施された立体的なシートはスポーツカー的で、ダッシュボードの造型もコンチネンタルGTを思わせる左右対称のスタイル。スポーティであることを意識している。この点は、ジャガー(マーケットは違うだろうが)とも共通点が見られた。

我われに最も身近な存在であろう、フォルクスワーゲン「ティグアン」も、このショーでフルモデルチェンジ版が発表された。

66th Frankfurt International Motor Show|第66回 フランクフルトモーターショー(IAA) 2015

大型SUVで賑わう今年のフランクフルト (3)

新型ティグアンのオールラウンド性

フォルクスワーゲン(VW)のティグアンは、2007年にフランクフルトショーで発表され、全長4.4mの手ごろなサイズのSUVとして人気を博してきた。実際、この従来型は世界で264万台を販売した実績を挙げたという。新型は全長が60mm伸び、ホイールベースも77mm延長された。少しマニアックになるけれど、ゴルフと共通する、フォルクスワーゲンの横置きプラットフォームMQBを使ったのが最大の特徴だ。

Volkswagen Tiguan GTE

Volkswagen Tiguan GTE

「ゼロから再設計され、隅々まで考え抜かれた新型ティグアンは、新時代のオールラウンドビークル」。VWブランドを担当するドクター・ハインツ=ヤコブ・ノイサー開発事業担当取締役はそう規定する。車種体系を見ると、その言葉にある「オールラウンド」の意味がわかるような気がする。

新型ティグアンの構成は下記となる。スポーティな性格を強調した「ティグアンR-Line」、標準型のオンロードモデル、オフロードユースに特化したモデル、そしてフランクフルトショーではコンセプトモデルとしての出品だったがプラグインハイブリッドの「GTE」だ。

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Volkswagen Tiguan R-Line

ティグアンのオールラウンド性は、キャラクターの押し出しを抑えめにしたボディスタイルからもわかる。そのぶん機能性はさらにアップ。全長4,486mmの車体に、26mm拡大した室内長を持ち、3人掛けの後席のニールームは、29mm広くなっているという。

後席シートには前後スライド調整も備わり、最大18cmスライドできる。助手席シートは、シートバックがフラットに折り畳めるようになっているため、尺の長い荷物を積載することもできる。荷室容量は、145リッター増え615リッターに拡大している。

66th Frankfurt International Motor Show|第66回 フランクフルトモーターショー(IAA) 2015

大型SUVで賑わう今年のフランクフルト (4)

日本勢は将来へと期待をつなぐコンセプトを展示

VWが記者発表で存在感を強調したのは、ティグアンGTEだ。すでに「パサート」と「ゴルフ」で知られるGTEはプラグインハイブリッドを意味するサブネームである。直噴ガソリンターボエンジン(115kWの1.4 TSI)と電気モーターにより前輪を駆動。160kWのシステムパワーを発生する。「E モード」を使えば、完全電動で50kmをカバー。

欧州複合モードでの燃料消費量は1.9リッター/100km(つまりリッターあたり約53km)で、CO2排出量に換算すると42g/kmという。欧州委員会による2020年の規制値が95g/kmなので半分以下の数値を早々と達成している。

Volkswagen Tiguan GTE

Volkswagen Tiguan GTE

ティグアンGTEのユニークな点は、世界初と謳われる、ルーフ内蔵型ソーラーモジュールの採用だ。理想的条件下であれば、このソーラーモジュールにより年間に発電される電力で「ゼロエミッションの走行距離が年間最大で約1,000kmも延長される」(VW)という。南欧だとこの1,000kmに近い実績が出せたそうなので、日本でもいい値が期待できそうだ。

日本勢は一様に、SUVは将来へと期待をつなぐコンセプトモデルを並べていたのも印象的だった。トヨタ自動車は、コンパクトクロスオーバーハイブリッド「C-HR Concept」の5ドア仕様を初出展。日産自動車は、次期フェアレディZ?と一時期プレスを騒然とさせたクロスオーバーEV「GRIPZ(グリップス)CONCEPT」を展示。

Toyota C-HR Concept

Mazda Koeru

マツダは、やはりクロスオーバーのコンセプト「超KOERU」を出展した。「魂動(こどう)」という同社が一貫して採用しているテーマにもとづくスタイリングと、スカイアクティブテクノロジーを使ったメカニズムという。この後に出てくる新型につながるモデルだろうか。

           
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