軽やかにたなびく凧をジュエリーで

オリエンタルな表情を見せる独特なフォルムに、たなびくリボンを思わせるダイヤモンドのチェーン。ヴァン クリーフ＆アーペルの新作「セール ヴォラン」は、ハイジュエラーの技術を集結させた究極の凧だ。

これまでも、鳥や羽根、蝶といった軽やかに空を舞うモチーフをテーマにしてきたヴァン クリーフ＆アーペルが、今回のテーマに選んだのは凧。そのスタイルから見るに、タイの凧がヒントになっているようだ。

ちなみに、タイの凧にはチュラと呼ばれる星のような形の雄凧と、パクパオという菱形の雌凧とがあり、ともに凧をひっかけて競い合うのだとか。フォルムの異なる二つの凧は、ジュエリーに姿をかえ、アシンメトリーな美しいバランスを演出している。

優雅なジュエリーを生み出すメゾンの卓越した技術

軽やかに空を舞う「セール ヴォラン」は、ダイヤモンドやマザーオブパール、ピンクやモーブカラーのサファイヤなど、いくつもの宝石を贅たくに使って生み出されている。ダイヤモンドだけでもラウンドブリリアントやペアシェイプ、スクエアカットなど形状の異なるタイプを使用。それぞれのデザインやカットに最適と思われるセッティング方法で凧を描き出す。

雌凧はホワイトとグレーのマザーオブパールをつかい、ふわりと風を抱き込んだような曲線を象嵌技法でもって可能に。絡み合う２つの凧の糸を表すチェーンには、ダイヤモンドとピンク＆モーブサファイヤのクローズドセッティングを採用し、ジュエリーをつけたときの滑らかな心地よさにも配慮している。

クラスプやジュエリー裏側にも美学が

ダイヤモンドがセットされた４本のチェーンが凧と雲とをつなぐブレスレットは、まさにメゾンのサヴォアフェールがつまったジュエリーだ。クラスプは小さく、雲の裏に隠され、はめてみると一体の雲が完成。「セール ヴォラン」の要ともいえる凧のモチーフは手首の上に、つねに落ち着くように設計されている。腕にブレスレットをつけたとき、４本のチェーンが美しくレイヤー状に手首に添うさままでも計算されつくされている。

また、ヴァン クリーフ＆アーペルの粋は、ジュエリーの裏側からも見てとれる。表側と同じく高度な仕上がりを追求し、裏側のモチーフに施されたオープンワークは光を通し、宝石の輝きをさらに高めている。

メゾンの個性が光る７つのハイジュエリー

淡い色彩が愛らしい「セール ヴォラン」コレクションには、ハイジュエリーも存在する。最高級のダイヤモンドとルビーのみを使用したジュエリーには、ヴァン クリーフ＆アーペルの象徴であるミステリーセッティングが贅たくに施されている。

ミステリーセッティングとは、宝石のサイドに溝をつけ、レール状の台座にすべらすようにセットする技法。宝石をささえる金属の爪が表面からいっさい見えないことから、ミステリーセッティングと名づけられた。ちなみに、このセッティング技術はヴァン クリーフ＆アーペルが1933年に特許を取得している。

壮麗に敷き詰められたルビーやダイヤモンドが圧倒的な存在感を約束する凧。ブリリアント、ペアシェイプ、マーキ―ス、バケットカットのダイヤモンドを組み合わせた凧の尾は、複雑な連結技術により、まるで風を受け凧がたなびくかのようにふわりと優美に動く。まさにヴァン クリーフ＆アーペルだからこその、心憎い仕掛けといえるだろう。

巧みな石づかいに、カットやデザインによって工夫されるセッティング方法とジュエリーの裏側にまで注がれた類いまれなる技術。メゾンのサヴォアフェールを集めた垂涎のコレクションが誕生した。