|
|
||
|
|
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
![]()
玉村豊男流オリジナルワインに合う料理
高級ワインの産地として名高いフランス・ボルドー地区。本著『100本のボルドーワインのための100皿の料理』では、ボルドーワイン委員会が発表する「デイリーに楽しめる100本のバリューボルドーワイン」に合わせた料理レシピを、食文化に造詣が深く、自らもワイナリー&カフェのオーナーをつとめる作家の玉村豊男氏が考案、そして自ら調理した100皿を、写真家の小澤忠恭氏の撮影で掲載している。 掲載されている100皿の料理はすべて「玉村流オリジナルワインに合う料理」で、大判で見やすい写真とともに、玉村氏の軽妙洒脱でためになるショートエッセイ&レシピも紹介されている。 文=山下 崇(『100本のボルドーワインのための100皿の料理』担当編集者)
Photo by Jamandfix
書評というよりも、むしろ雑感のようなもの
玉村豊男氏は「いい料理っていうのは情報を喚起するチカラがあるんだよね」と言う。たとえば「牛ほほ肉の赤ワイン煮込み」が目の前にあるとする。かつて訪れた旅先の小さなビストロや、そのとき食卓を囲んでいた人たちの表情が突如として浮かんできたり、生まれ故郷の空き地で吹いていた風が冷たかった、なんてことを思い出す。いい料理にはそういった情報を喚起するチカラがあるのだという。その一皿を味わうにつれて旧き善き日々への回想や、そこに在る喜怒哀楽、深層に眠り込んでいる記憶が甦ったり、新たな感情が湧き起こったりする料理。食べ手の心に訴えかける何かがある、そんな料理は確かに素晴らしいと思う。もちろんそれを感じたり受け止めるセンスや経験が食べ手に求められるのは、この場合の大前提でもあるのだけど。 さて、ここに100本のワインがあったとしよう(そういうことは通常あまりない、というツッコミは、この際カンベンしてください)。スッキリしているとかコクがあるとか、渋みや酸味の具合を想像しながらエチケットを眺めるのは、ワイン好きならずとも楽しいはずだ(と思う)。ジャケ買いというわけじゃないけど、エチケットに込められたヴィニュロン(ワインの造り手)の想いというものを感じて一目惚れということだってある。これもまたワインに対する少しばかりの知識は必要とはなるけれど、冒頭の玉村説に照らし合わせて考えれば、ワインもまた情報喚起力のあるものだといえるだろう。 多くの人にとって食事と酒は切り離せないものであるから、その相性を考えるのは、やはり心躍るものだろうと信じたい。ビールに枝豆という古典もしくは定番のものもあるし、先の「牛ほほ肉の赤ワイン煮込み」ならボルドーのフルボディで、などなど。もちろん異論はあるだろうが、組み合わせの妙にひとり悦に入るのも悪くない。 この本に掲載されている100皿の料理は、すべて玉村氏が調理したもの。調理手順を整理しながら、また料理をつくりながら氏が思いを巡らせたあれやこれやが、ショートエッセイとなってレシピとともに記されている。すべての料理は掲載されている100本のボルドーワインに合うようカテゴリー別に分けられていて、なかには白ワインと肉、赤ワインと秋刀魚のような意表をついたものもあるけど、実際にいくつか試してみると意外にpas mal(フランス語で、言葉上の意味は「悪くない」だけど、むしろ「かなり良い」ニュアンスを表わすことが多い)なマリアージュであったりもする。 ワインと料理、その相性を楽しみながら思いを馳せる。過ぎ去った日の出来事だったり、これからすべきいくつかの事柄についてだったり。それは食卓の悦楽というか知的な遊戯のようでもある。料理とかワインとかって、そんなチカラがあるんだよね……とつぶやきながらページをめくっていただければ、この本も存在意義があるのかなぁと思うのだけど。
『100本のボルドーワインのための100皿の料理』 内容 軽い辛口白ワインのための料理(ヒラメのセヴィーチェ/松茸のカルパッチョほか) コクのある辛口白ワインのための料理(サーモンのペーストとソルベ/スモークド・イールほか) 軽い赤ワインのための料理(豚肉とアサリのアレンテージョ風/かつおのたたき/白ブーダンほか) 重厚な赤ワインのための料理(茹で肉と和梨のミルフィーユ/牛すきやきメイプルシロップ風味ほか) 甘口白ワインのための料理(ソーテルヌのわらび餅/洋梨のポワレほか) コラム ボルドーワインを知るために(場所とテロワール/ぶどうの品種/アッサンブラージュ)
|
|