2010.12.24
Twiggy松浦美穂×THREE Rie OMOTO スペシャル対談
モードとオーガニックと美の表現者たちのマインド(後編)
ヘアサロン「ツイギー」主宰の松浦美穂さんと、コスメブランド「THREE」のメイクアップ クリエイティブ ディレクターを務めるRie OMOTOさん。ふたりのスペシャル対談、後編をお届けします。
Text by OPENERS
Photo by JAMANDFIX
健康であり、なおかつおしゃれであれば、それがいちばん
──じつは今回の対談を実現するにあたって、まずRieさんから「ぜひ松浦さんとお話してみたい」っていうリクエストがあったんです。
松浦 えー、本当!?
Rie そうですよ(笑)!
松浦 私もすっごくお話したかったんですよ。
Rie 本当ですか(笑)。
松浦 THREEがデビューしたときにPRの方と一度お会いして、もうこれからはこういう化粧品を出していかなきゃダメだよね、と思ってて。いまあるもののなかで、使える化粧品って本当に少ない。そんななかポンとTHREEを紹介していただいたときに、「これは!」と思ったの。ナチュラル系で、色もあって、ファンデーションの感触も良くて、パッケージまでかわいいものって、世界中探しても本当に少なくて。だから、THREEには本当に頑張ってほしいなと思った。そのときにアツく語ったような気が……(笑)。
Rie 私も「頑張ります!」みたいな(笑)。
──Rieさんがナチュラル系のコスメに、モード的な匂いのするものをミックスさせていきたい、と思いはじめたきっかけとは、何でしょうか?
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Rie OMOTOさん。THREEの新作発表会にて、メイクアップをしているようす。
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Rie 昔からファッションに興味があって。今はメイクという分野にいますが、毎日のようにファッションのエディトリアル撮影で、ゴージャスで、ビューティフル! ワーオ!って盛り上げて……ということをやっているんですね。だからファッションには敏感でないといけない。でも、ファッションに敏感であればあるほど、あるときふと、「ファッションってなんて中身がないんだろう」ということに気がつくというか。分かってはいたんだけど、自分がそのなかにどっぷりといるから、最初は認めたくなくて。でもやっぱりあるときに気づくわけです。
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そのとき思ったのは、じゃあ私は何がやりたいんだ、と。すると、やっぱり私はひとをキレイにしたい。メイクも好きだし、ファッションも好き。でもそのファッションを実際にまとっているひとは何なんだろうということを考えるようになった。パリからニューヨークに移ったころにはさらに、ちぐはぐなひとというか、バランスの悪いひとたちをたくさん見て。
──それは外見と中身のバランスが、ということ?
Rie うん、そうですね。キレイなモデルでも、中身が本当に醜い子もたくさんいたし。そんなの、キレイだけどキレイじゃない。じゃあそういうひとたちに私が何をしてあげられるかというと、話を聞くことなのか、食べるものを教えてあげることなのか。そうやって突きつめて考えるうちに、メイクアップアーティストって、塗るだけじゃ駄目だな、何かちがうアプローチはないかなって思うようになったんです。最終的には、当たり前のことなんだけど、身体を鍛えて健康であることが大事だということに行き着きました。一時、痩せてて不健康でドラッギーな感じがかっこいい、っていうときがありましたよね。でもそれじゃないなっていう。健康的なのが、いちばん美しいと思うんです。健康でいられて、そしておしゃれだったら、楽しいじゃない?っていう。
でもそれをミックスするのって、当たり前のことですよね。マドンナもずっとヨガをやっているし、スティングだってもう30年くらいアシュタンガヨガをやってる。彼は何歳なんでしょうね、60歳くらい?
松浦 うん、60くらいかな?
Rie とてもいい歳のとり方をしてますよね。昔、ロックスターはドラッグをやってるものだったけど、今の時代はロックスターがヨガをやり、マラソンをして、オーガニックなものを食べて、健康である、という時代。それが自分のスタイルとしていちばんピタッとくる、そう思っただけなんですよね。
自分が夢中になってやることが、最高のエクスタシーにつながる
松浦 分かります。私は美容師だから、基本的にサロンに立つのが大好きで。だから、サロンで見ている風景と、ファッション撮影で見ている風景のちがいみたいなものを、リアルに感じてきてた。あるとき、ひとりひとりサロンで見ているひとたちのすてきさみたいなものにハッと気づかされて、ファッション撮影の世界がすごく地に足のついてないものに思えたときもあったの。それはそれで、ファンタジーだし、すばらしいものなんだけれども、「別に、私じゃないくてもいいかな」っていうある種居心地の悪さをすごく感じたんですよ。私自身は、ファッション大好きなんですけどね。
サロンに立つことって、「このひとに何をしてあげればいいかな」「このひとに必要なものはなんだろう」ということをすごく考えさせられる瞬間の連続だし、それがちょっとでも上から目線になったりすると壊れるものだし。相手が何を望んでいるかをすごく謙虚に自分のなかに落とし込んで、そして自分のエゴも満足したうえで相手も満足する……ってところまでのストーリーを作っていかないと、そこには絶対、よろこびは生まれないんですよね。どっちかの恩着せになっちゃう。だから、よろこびを見つけるには、自分のエゴがどこまで満足できるかって勝負していかなくちゃいけなくて。それは自分というハードルを毎日毎日超えていくという作業の積み重ね。一生ゴールなんて見えないですよね。いつも夢中になって何かをやっているから、今が夢のなかだし、未来も夢のなかでいたい。
夢中になって何かをするということは、子どものころのままのマインド、「無邪気」さってことなんだと思うんです。ひとはつい、「無」がなくなって「邪気」だらけになっちゃう。答えがないことをやっていきながら、よろこびの関係をなんとか作りたい、っていうのが、私の場合はヘアという仕事だったんです。こっちがいいと思うものを一方的に押し付けても駄目だし、相手がすっごく気にいってくれても自分のなかでの完成度や満足度が低かったら、セックスになってないんですよね。最高のエクスタシーにはなっていない。自分がつねに満足できるところまで、ひとりひとりのお客さんと接していたい。多分Rieさんもそうじゃないかな。手が抜けないタイプでしょ?
Rie 抜けない、ですね。
松浦 私も。だから本当に疲れますよね。
Rie 疲れる(笑)。頭では思うんですよ、このくらいで抑えておけばいいんだろうなって。それでやり過ごすことはできるけれど、そうはできない自分がいる(笑)。
松浦 そうできない性格なんですよね。すごく分かる。
Rie でもひとがキレイになってなんぼ、ですよね。それで疲れはふっとぶ。自分のなかで、すばらしい!とか、キレイ!とか、無邪気に感じていたいですよね。ちっちゃいころに、「大人なんだから感情を抑えなさい」って言われた記憶があるんですね。でもそうじゃなくて、大人になればなるほど、いつも響くものをもっていないと、自分の心が錆ついてしまう。「無邪気」の「無」が、大切かなぁと。
松浦 ホントホント! そういえばいまね、「無」と夢中の「夢」もおなじ“ム”だなと思った。日本語って、響きによって近いものがあるよね。この前のパーティのときにも感じたの。つい先日、Twiggyの20周年パーティがあったんですよ。( 「Beautiful People|Twiggy20周年記念パーティリポート」参照)
Rie おめでとうございます。
松浦 スタッフ全体でのミーティングもなかったのに、パーティは予想以上のもので、完璧だった。スタッフのひとりひとりを心から尊敬できちゃったわけですよ。そして、こういうセッションは、ひととの縁でしかないと思ったんです。ひととひとが触れて、縁ができて、マジックが起きる。ひとってやっぱりすばらしい!って感動したんですよ、私。鳥肌が全身にずっとたってて、止まらなかった。
Rie ひとは、財産ですね。
松浦 本当に。縁って本当に、自分の力だけではどうにもならないことだしね。
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Twiggy20周年記念パーティのようす。原美術館が幻想的な空間に生まれ変わった。 ©SATO Koji
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Rie そうですね。このひとと知り合うためにこのひとと知り合って……なんてふうにはいかない(笑)。でもそのひととの縁に対して感じることができるひとと、感じないひととがいますよね。「うん、当たり前」と思ってとおり過ぎるのか、「すごくいい!」と思って感謝・感動できるのか。
松浦 自分ひとりのなかにも、いろんな感情がありますしね。
Rie ありますあります。ほんのちょっとのちがいで、すごくポジティブになったり、すごくネガティブになったりもする。
松浦 そうそう、本当に自分の角度ひとつ。足りないことより足りていることに感謝をしたいですね。無理しちゃうと偽善ぽくなっちゃうけど。
Rie うん。きれいごと、みたいな。
松浦 自分以上もできないし、自分以下にもなんないから、今の自分をそのまま表現する、それしか答えはなくて。それをとみに感じている今日このごろ。