2002年に本格的に時計事業に参入してから現在まで、数は少ないが魅力的な腕時計を毎年、着実にリリースしてきたラグジュアリーブランド ルイ・ヴィトン。今年は大きな飛躍の年となった。
取材・文=渋谷康人
フェア初参加で全17本の新作モデルを発表
2011年のバーゼルフェアで最大のトピック、それはまちがいなくラグジュアリービジネスの頂点に位置する人気ブランド ルイ・ヴィトンがバーゼルフェアに初参加したこと。3月23日から25日まで、バーゼル市街の中心を流れるライン河沿いの5つ星ホテル「グランド・ホテル・レ・トロア・ロア」の横に停泊させた豪華なボートの上で新作コレクションが公開された。目玉は同ブランドの腕時計の看板である「タンブール・コレクション」の6シリーズ17モデル。樽型ケースが特徴のモデルだ。これほどたくさんの新作が一度に発表されたことは、2002年にルイ・ヴィトンが時計の世界に本格参入してからおそらくはじめてのこと。
時計界をリードする「マニュファクチュール」への変身を宣言
現地で発表された公式プレスリリースのなかには「ウォッチメーキングの世界で中心的な存在を目指す」という一節がある。これはルイ・ヴィトン自身が、今後は腕時計を他のジャンルの製品と同様にブランドの中核プロダクトとして位置づけ、時計事業に本腰を入れて取り組むという宣言にほかならない。実際、ウォッチ&ファインジュエリー部門のディレクターのアムディ・シャティ氏は、今後はメンズウォッチを中心に製品を積極的に展開し、時計業界のなかで確固たる地位を確立したいと語った。そして自社製ムーブメントの開発製造にも着手していることも明かに。つまり、ごく近い将来にはルイ・ヴィトンが、心臓部であるムーブメントもふくめて腕時計を一貫生産できる「マニュファクチュール」へと大進化を遂げることは、まずまちがいないだろう。これまでにない新作モデルの圧倒的な数は、この決断と実行の証なのだ。
注目は「旅」をテーマにしたミニッツリピーター
複雑時計からクロノグラフ、ダイバーズ、レディスモデルと全部で17本におよぶ新作ウォッチの数かず。注目したいのが、複雑時計のなかでももっとも開発・製造・調整が難しいとされる、ミニッツリピーター機構を搭載したモデル「タンブール ミニッツリピーター」である。つねに「旅」をテーマにしたクリエイションに取り組む同ブランドらしく、時を妙なる音で知らせてくれるメカニズムにくわえて、旅をするさいに実用的なトラベルタイム(GMT)機能も備えている点が大きな特徴であり魅力だ。