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2007.03.30

リンボウ先生openersインタビュー

恋と歌を大いに語る 第3回

photo by IDEGUCHI Keiko
interview&text by TAKEDA Nanako
著作より

歌手活動、音楽家とのコラボレーションそして今後……

──林先生は、歌曲の作詩でもご活躍されていますね。

「『ゆけ、わが思い』という、作曲家の伊藤康英くんと作った恋愛歌曲集があってね。これはとてもわかりやすい歌です。『あんこまパン』もバリトンの宮本益光くんやソプラノの佐藤しのぶさんが全国で歌って、メジャーな歌になっています。私もこれはレパートリーにして歌っています。非常にむずかしい歌なんです。」

──林さんをそこまで音楽に駆り立てるものはなんでしょうか。
『あんこまパン』
「音楽は昔から好きでしたね。子供の頃にヴァイオリンをやって、大人になってからはクラシック・ギターを弾いていました。つねに音楽が生活の一部分であったということですよね。それからパーフォーミング・アーツという意味では、私は20代のころから能をやっていまして、能の地謡方を務めていたんです。半分勉強でした。国文学者としては能くらい知らないと、ということで。
イギリスにいたころは、イギリス人に能の謡曲を歌って聴かせました。他の日本芸能のなかで、能の発声だけは西洋のオペラ的なものを感じさせます。イギリスなどでやると、みなさんに喜んでいただけます。私の歌を聴いたボストン夫人が『あなたは声がいいから西洋のオペラティックなものも歌ったら』と勧めてくれたのです。
『これならわかる、能の面白さ』

芸大の音楽学部の助教授になって、そこで本格的に声楽を始めました。もともと声楽は大好きでした。シューベルトの『冬の旅』やベルリーニの『優雅な月』なんかを歌いたいと思って楽譜を取り寄せてみたら、手も足もでない。ちゃんと先生に付こうということで、声楽とソルフェージュを習い始めました。」
──40代になってから声楽をお始めになって、ご自分で納得できる声を出せるようになるまでにどのくらいかかりましたか。

「人前で迷惑でない程度に、と思えるようになったのは、ようやく去年くらいですね。12、3年かかりました。今は田代和久先生というバリトン歌手についているんですけれども、この先生には大変いろいろ教えていただきました。それから、劇団四季でずっとバリトンを歌っていた佐川守正さんから、発声についてあるアドバイスを頂戴して、ある日突然に『ああ、そうか』と雲が晴れるように分かったことがあった。それからですね、音域が広がって『あんこまパン』などが楽に歌えるようになったのは。
芸大の嶺貞子先生と、一昨年の秋にコンサートをやった時に、『林さんも歌いなさいよ』ということで、モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』の二重唱と独唱を歌ったんです。嶺先生が『あなた、本当にいい声をしているから、古典を教えてあげる』、いわゆるバロック唱法です。嬉しいじゃないですか。でも、歌ってびっくり。またこれが全然違う世界だった。バロック唱法は、ノンビブラートでずっと細く歌って行かなければならないので、大変なんです。五線のなかのC周辺が私にとっては声帯のチェンジで一番歌いにくいところ、そのあたりをうろちょろするんです。音程がはずれないように、必死で練習していたら喉をやられました。(笑)」
事務所のグランドピアノに座って

──お歌いになっている時は、楽しいですか。

「スポーツといっしょです。やっているときは苦しい。でもその後の充実感、爽快感は言い知れないですよね。」

──お話、ありがとうございました。

演劇的組歌曲『悲歌集』再演予定

2007年5月30日(火)津田ホール
2007年6月1日(金)静岡音楽館AOI
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林 望
HAYASHI Nozomu

作家、書誌学者
慶応義塾大学卒業。同大学院博士課程終了。ケンブリッジ大学客員教授。東京芸術大学助教授等を歴任後、現在著述専業。「イギリスはおいしい」で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。エッセイのほか、料理本、古典論、日本語論、小説など、各方面の著述に加え、歌曲の作詩多数。また自らもバリトン歌手として舞台に立つ。

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