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『真冬の読書室』の土曜日の光景
お茶室よりも空に近くて、大きな木の梢に近い場所 第10回 『月夜の読書室』、『真冬の読書室』、そして……(1) 文と写真=塚田有一(有限会社 温室 代表) 仕切り、限り屋上にあるガラスの箱で、お茶室よりも空に近くて、大きな木の梢に近い場所。さしずめ、屋上にいたる狭い螺旋階段が露地で、躙(にじ)り口をくぐったその先に広がる空間がガラスの箱。異空間という意味ではおなじだ。好みだって、とおしている。あるもので申し訳ないが、これがいまの全部ですということでは、侘び茶だってそうだった。こうした「引き寄せ」や「縮景」は、日本人が得意だといわれていること。花も庭も。仕切る、区切る、限ることで、広がるものなのだたとえば『真冬の読書室』のように、季節を「冬」に限って、その冬に、冬空の下や冬の夜長に読みたい、読んでほしい本を選ぶとき、それぞれが書物に託したいろんな「冬の気分」がある。初冬や晩冬と真冬はちがうだろうし、「冬といえば、◯◯だよね」という連想も、わりと普遍的な寒さとか雪とか暗いとか、人生にたとえると老人だとか、色なら黒かなとか、植物なら枯れてるなどなど。寒いからちょっと春をイメージできる本を選ぶこともある。寒い冬に暖かいお布団に潜り込んで、お父さんに読んでほしい本とか、冬の語源をたどっていくような本や、雪の結晶の本、冬の星空や、うさぎや熊の本だっていい。冬の音の本もあるし、冬っぽい作品をつくるひとたちの作品集だっていい、冬っぽいひとの伝記でも、冬に起きた事件のなまなましさだっていい。際限なく広がっていく冬をどこで限るかが、大事なのだ。
月に照らされて 月的な区切ることで、またそれぞれの区切り方がみえることで、自分の区切りも増殖する。『月夜の読書室』では、浪漫派の書物もあれば、鉱物の本、月の女神の本、月の写真集や、月のもつ夜や海や水や、妖しい世界や、異界の本など、小さいころの記憶に触れてくる絵本や漫画など、さまざまな切り口があった。たくさんの月的なものが、月明かりに照らされてならぶ。気になる本を手に取るとき、そこにはきっと月が関与している。ちょうど初日が満月で、やがてビルのあいだから月が顔を出した。温室の照明を消すと、月明かりが落ちて、影ができるくらい。書物の世界のなかの月的な気分と、本物の月景色が、行ったり来たり。 書物に印刷された言葉と、空にうかんだ実物の天体とのあいだにあるこの場所での「こと」は、なにか痕跡となって残されていく。「羊歯は月明かりで銀の鋼になる」と書いた宮沢賢治はこう言った。「いまここにあるでこぼこ道だけが未来そのもの」。 季節と読書、植物と書物、自然と本、その季節その場所でその本を、手に取る、そのこと。 ![]()
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Gallery | 塚田有一│みどりの触知学 第10回 『月夜の読書室』、『真冬の読書室』、...
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