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温室|塚田有一 01 みどりの触知学〜旅する庭〜
2012.01.12

「振ゆ」とも「殖ゆ」「増ゆ」ともつながる「ふゆ」

第15回 山の冬

 
空が青くて、光がきれいで、このまばゆさは、冬のものだ。縁あって、この冬は立てつづけに「山」へ行くことになった。冬の冷え枯れた美しさを、あらためて見つけられたように思う。それは指先や足の裏、呼吸から、山を感じることでもあった。

Photo & Text by TSUKADA Yuichi(ONSHITSU)

軽さ

冬、多くの植物は枯れる。真夏は音がするほど揚げていた水を手放し、あるものは冬芽をつくり、あるものは種となり、またあるものは根を残し、じっとうずくまる。それぞれ葉が落ち、花が終り、茎や枝が枯れ落ちたその横であたらしい命の小さな突起となって、目覚める時を待つ。

「枯れる」ということは、水分を失って魂が「離(か)れる」ことだともいう。そうして水分が無くなると「軽く」なり、あらたな命の場所になる。冬芽の布団にくるまり、殻に守られ、母なる大地に抱かれながら。

冬空の美しさはだから、乾燥して澄んだ美しさであると同時にその軽さにもあるのだ。湿度の少ない、重さのない大気が色を透き通らせる。


太陽の木


朝ぼらけの月

振ゆ

「冬」という漢字は字源辞典『字統』によると〔「糸の結び終わりの形」。糸の末端を結んで終結の意とするもの。季節の終結する時期をいう〕

「ふゆ」は、「振ゆ」とも「殖ゆ」「増ゆ」ともつながり、あたらしい命(魂)が振動し、震えている状態をいう。冬至が過ぎ、あたらしく年を取る(あらたまる)と、春に向けて命は見えないところで一斉に増えて行く。「冬」は決して死や暗黒の世界ではなく、ものみな枯れて生気のない世界でもなく、ひとときの眠りのなかでじっと命をはぐくみ振動している季節だと考えられてきたのだろう。


氷のひと


氷華

冬の艶

冬至に近い山の冬。低い日射しは樹林を横切り、熊笹に覆われた地面にストライプ模様を描いていた。唐松の幹に沿って見上げた黒い梢のもっと先に、どこまでも透明な「青さ」があった。空は底が抜けている。

朝早い散歩で、みつけた有明の月、うす氷。
枯れ野の露霜。
小川の川辺の草つらら。
寒くて、凍えて、清らか。
時が固まったそのなかに、夢が封印されている。
ほどければ淡く、流れに空に消えゆく。

「氷ばかり艶なるはなし」心敬
連載・塚田有一│みどりの触知学 第15回 山の冬
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