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foo|フー
文=加藤孝司
Photo by aruco design 物と人とのささやかな関係性広島という街は不思議な場所だ。ひとつの大通りをはさんで猥雑な夜の顔と、閑静な住宅が背中あわせにあり、若者でひしめくショッピングモールのすぐとなりに、世界平和の祈りに満ちた平和記念公園がひろがる。明治時代には広島城に明治天皇を迎え、一時的にであれ日本の中心地になり、世界で唯一の原子爆弾の被爆をするという歴史をもつ。広島の人々は流行に敏感で、感性がとても優れている。市内中心部にはつねに人々で賑わう繁華街があり、瀬戸内の豊かな海も近く、食文化もきわめて豊かだ。 ![]() 建築家・村野藤吾が設計した原爆で亡くなった人々を慰霊するための『世界平和記念大聖堂』にほど近い裏道りに、ひっそりと軒を連ねる小さなお店たち。その一角にひときわ目をひく大きなショーウインドウがある。 アンティークの蝋燭台にセンス良くディスプレイされたシンプルなジュエリー、味わいのある質感が冴えた古い印刷物。そしてデザインする人のデリケートな心遣いが伝わってくるクラフト感あふれる革のバッグや、親しい友人のクローゼットのなかをのぞいたような飾りけのない美しいフォルムの洋服たち。 fooというお店には、店主の審美眼によって感性のままに選ばれ、愛着のあるプライベートコレクションのようなそれぞれのストーリーをもった美意識にみちたアイテムがならび、それを丁寧に人に引き渡していこうとする気持ちが伝わる心のこもったもてなしがある。 この店には、店主であったり、そこにたまたま居合わせたお客さんであったり、そんな見ず知らずの者同士が気がるに言葉を交わしたくなるような雰囲気があるから不思議だ。それは、きょうあった出来事であったり、きのう食べた食の話題であったり、そんなあたりまえのことが改めて愛しく感じられる、物と人とのささやかな関係性。そう、この小さなお店にはそんな親密な空気がいつ訪れても流れている。 だからここを訪れる人は、また訪れることをわざわざ店主に告げてから、この店をあとにする。また訪れてみたいと素直に思わせる、温かい空気感にみちた、忘れてはならない大切なものに気づかせてくれるショップだ。
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