
2009.03.30
これが私の“完璧なデサイン”グエナエル・ニコラ個展「LIGHT-LIGHT IN TOKYO」開催
3月26日から4月5日までの11日間だけ、グエナエル・ニコラが展示会を開催する。ルイ・ヴィトン表参道の7階ホールに展開されている「LIGHT-LIGHT IN TOKYO」は、ニコラの自社ブランド「CURIOSITY(キュリオシティ)」創業11年目を記念した、ひとつの節目だという。
文=オウプナーズ
写真=飯田信雄
コミュニケーションツールとしての展示会
「これ、写真撮れないでしょ」。グエナエル・ニコラはいたずらっぽく言う。「この展示会のポイントは、説明的な写真が撮れないってこと。それがほかの展示会といちばんちがう点」。
暗闇のなか、整列した球体が光を浴びながら浮かんでは沈む。会場に入った途端、思わず感嘆の声を上げてしまうほど幻想的なその世界は、昨年のミラノ・サローネでも絶賛されたグエナエル・ニコラの作品、「LIGHT-LIGHT IN TOKYO」だ。
「この展示会のポイントは、絶対ココに来なくちゃ意味がないということ。いまって、リサーチするときはインターネットで調べるじゃない? 写真も見る。でもそれは一方的に情報をもらってるだけでコミュニケーションはとってないから、自分の体験にはならない。
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だから“来なくちゃ意味がない”っていう展示会をつくりたかったんだ。来ないと消えてしまうもの……いまは情報だけもらって、なんだかわかった気になってしまうけれど、やっぱりそこに行って自分で体験しなくちゃ。そのためにも、どうしてもこの場所でやりたかった。5カ月かけてルイ・ヴィトンを口説いたよ(笑)」
東京のアートスペースは行きにくいところばかりで、都心にあるギャラリーはどこも狭い。作品を展示するだけでなく、確実に人びとが足を運び、そこで体験してくれる場所、それは『ルイ・ヴィトン表参道店』5階のイベントスペースしかなかったという。
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「デザインにとって普遍のテーマ、それは“コミュニケーション”。どこまで情報をそぎ落としたものでコミュニケーションを取るか……いまの世の中は逆でしょ? でも、“インフォメーション”と“コミュニケーション”はちがうものだから。いまの時代はインフォメーションばっかりもらうけれど、どんどんコミュニケーションとれないじゃない? それをリセットしなきゃいけない。
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だから、ここにはひとつも説明がない。“LIGHT-LIGHT IN TOKYO 好奇心と光”というタイトルはあるけれど、それ以外の説明はない。ここに来てもない。説明なんてしたくない。必要ない。これを見たみんながちがうものを感じている。見て、とりあえず“あ、面白い、コレなんですか”っていうかんじで。
ただ、これビューティフルでしょ? ファーストインプレションはみんなとりあえず“ビューティフル”。それから“インタレスティング”。で、そこからどんどん自分のなかでクエスチョンが湧いてくる。その“どんどん”こそが、自分の体験になる。それがすごい大事なの」
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Guenael Nicholas 1966年フランス生まれ。日本在住。E.S.A.G(パリ)でインテリアデザイン科、RCA(ロンドン)でインダストリアルデザイン科を卒業。1998年自社「キュリオシティ」を設立。「ユニクロ」ブラックショップ、レクサスRXミュージアム、「SIMPURE L2」など作品多数。
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デザインは、メモリするものではなく、体験するもの
「これがどういうシステムになってるかなんて、デザインのひとしか考えないよ。普通のひとにはどうでもいい。ここにはすごい技術がたくさんあるけど、それはもう見せたくないし説明したくないんだよね。それって言いわけになるじゃない。“これスゴイじゃないですか”“あ、そうですか”って、全部説明じゃない? そういうのは、もうリセットしたい。これはもう、とりあえず見て、見たひとがコミュニケーションできるかできないか。できなければデザインがちがっているということ」
ミラノ・サローネに出展したこの作品は、NYでもパリでもなく、東京でもう一度展開したかったとニコラは言う。東京に住んでいるし、タイトルにもあえてTOKYOを使った(ミラノ・サローネでは、“TOKYO WONDER”というタイトルで出展した)。ブランド「キュリオシティ」よりもっといいブランディング、それを考えたとき、世界中からのTOKYOに対する関心度の高さ、それをタイトルに活かした。
「ミラノで面白かったのは、いろんな展示を写真撮りながらまわってきたひとたちが、この展示に来てもおなじように“ピピッ”ってやるの。で、撮った画像見てアレ?ってなる。で、もう一回撮ってまたアレ?って(笑)。それで、そこからはじめて見はじめるんです。はじめてカメラを忘れて、“ああ、いいですねコレ”って。この時間が大事。ここからスタートってこと。メモリじゃなくて体験。体験からはじめないと。デザイナーはそれを考えなくちゃ。
ミラノでは日本人もすごくたくさん来た。でも問題は、みんな私のデザインにイメージをもってるということ。何デザイナーだとか、どのプロダクトをやったとか。でもデザインって、みんな意外と小さい箱のなかに入ってるじゃない? だからこれを見て、ニコラはこういうこともできるのねって、何度となく言われました。そう、これが私の完璧なデザインなんです。これが私の考え方。だからこの展示会でいろんなひととコミュニケーションを取ることができて、そのひとたちといま新しい仕事をスタートさせている。だからこれを東京でもう一回見せたかった。すでに私のことを知ってるひとにも、これが私の本当のデザインのエッセンス、デザインのフィロソフィーなんだって」
強烈なLEDで照らされる球体が、会場の天井に不思議なシルエットを生み出している。計算され尽くされた演出かと聞くと、「天井のシルエットなんて考えてなかった」と言う。
リアリティが生まれた瞬間、デザインの役目は終わる
「考えてないよ。このインタラクションは最初からあったけれど、最初に使っていたLEDはそんなに強烈じゃなかったからシルエットは出なかった。でもそれに気づいて変えた。これはリアリティのパワー。こういうのが楽しい。
ここに並ぶ80個のボールはそれぞれ動きが異なる。まったくおなじものでおなじ技術で動いているけれど、自然に動いているからキャラクターが出てくる。みんな生きてるから一人一人も大事だけれど、みんなで一緒に動くとパワーが出るじゃない? これは人間の根源でもある。そしてそれがリアリティってこと。自然な動きが出たところで私のデザインは終わり。そこからは生きているものだから」
ニコラの自社ブランド「キュリオシティ」は今年11周年を迎える。今回の展示会は、これまで10年間の節目として「御世話になったひとたちへのプレゼント」なのだとか。これを機会に、今後はちょっとシンボリックなものをつくっていきたい、でもまずは感謝の気持ちを込めてみんなでエンジョイできるものを、そして見て美しいものをつくりたかったのだという。
会場内は、自由に閲覧することができる。浮き上がる球体を触ってもいいし、風圧を体感してもいい。整列したポールのあいだに入り前後左右に広がる光景に埋もれると、時間が経つことを忘れてしまう。
「アートの展示って、触ってはいけないプレシャスな雰囲気があるでしょう? それはちがう。触ってインタラクションがないのは面白くない。触ったりすることで、クリエイティブになるじゃない? なにかアクションを起こすとそのひともアクターになる。それを見た私にも新たなアイデアが沸く。私はミラノでポートレートを撮ってもらってたときに、このボールに口を近づけるポーズをとったんです。そのとき、“あ、食べてもいいじゃない?”って思った。だからこの展示会では“LIGHT-FOOD”をつくったよ。アンリ・シャルパンティエに依頼して、展示会前半はメレンゲで。後半はモナカ(笑)」
この“LIGHT-FOOD”は、開催中会場の一角に用意されている。パーティ会場で目にするような、ただ皿に盛られただけのものではない。それを見たら口にせずにはいられない、ニヤリとさせる演出。もちろんこれは、展示会に足を運んだひとだけが楽しめる。
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「LIGHT-LIGHT IN TOKYO」
期間|開催中〜4月5日(日)
開催時間|13:00〜20:00
会場|ルイ・ヴィトン表参道7階 LVホール
渋谷区神宮前5-7-5
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