まるで青い空の一部を切り取り、三次元に落とし込んだかのような、ヒューマンタッチなフォルム。
空に戻してあげるかのように陽の光にかざすと、ボトルの内側に封じ込まれた「青色」が透かされることによりその美しさは増し、繊細な色づかいはどこまでも空に続いているかのようだ。
眺めているうちに、不思議と懐かしい気持ちになってくるのはなぜだろう。
文=武井正樹
少年の頃に感じた風の記憶を探して──
「FLOWERBYKENZO」の発表から3年後の2006年、「KENZOAIR」は誕生した。
コンセプトは「少年の頃に感じた風の記憶」。
そんな抽象的でノスタルジックなテーマであるこのプロダクトは、誰もが感じる憧憬を視覚と嗅覚に転換する作業を得意とする、クリエイティブディレクター パトリック・グエージと、ひとりのイタリア人女性彫刻家との出会いによって具現されることとなる。彼女の名はローラ・デ・サンティヤーナ。
ガラス彫刻家との取り組み
出会いは突然にやってきた。「KENZOAIR」のボトルデザイナーの起用をめぐり、長いあいだパトリックがリサーチをつづけていたときのこと。新聞の片隅でローラ・デ・サンティヤーナの記事をみつける。彼女が手がけるガラス彫刻は、精緻で高度な技術や絶妙な色彩感覚で、地元イタリアでは賞賛をうけていた。
「彼女しかいない」。そう決めたパトリックはすぐにローラにアプローチし、ボトル製作に取りかかった。通常、フレグランスのデザイナーに彫刻家が選ばれることはまずなく、異例とも言える抜擢であった。