今日もその花は決して枯れることはない──
硬質なガラス容器に描かれた花は凛として咲き誇り、場所を問わず、すべての空間と光を受け入れる。そんな美しい光景は、アスファルトにも咲くことができる、流浪の花「ポピー」そのものといえる。
2000年、KENZO PARFUMSから誕生した女性用フレグランス「FLOWERBYKENZO」。フォトグラファー、映像作家として知られるパトリック・グエージをクリエイティブ・ディレクターに迎えた、初のプロダクトのコンセプトは「都会に咲く一輪の花」。開発からいまにいたるストーリーをふりかえりながら、プロダクトデザインとしての「FLOWERBYKENZO」の魅力に迫ってみたい。
文=武井正樹
パリの街をうめつくしたポピーによるプロモーション
ふりかえれば2000年、「FLOWERBYKENZO」デビューにおけるプロモーションもまた鮮烈だった。
さる日の深夜、パトリックはとある「いたずら」をしかけた。セーヌ川をはさんだ街中にポピーの花を植えたのだ。その数なんと20万本。そして夜が明けるのを待った。
朝になると、赤みを帯びた街並に驚愕しながらも、「詩」が書かれているだけの紙が捲かれたポピーの花を摘み取っていくパリ市民。ベビーカーに巻きつけたりなど、そのサプライズを思い思いに楽しんでいた。
こんな非日常的なスペクタルとも形容できる「FLOWERBYKENZO」のメッセージは街を彩り、女性たちのハートを釘付けに。パトリックの微笑む表情が目に浮かんでくる。
そんなエピソードを耳にすると、男性さえも「FLOWERBYKENZO」の香りに触れたくなってしまうのではないだろうか。
パトリック・グエージが仕掛ける次なる「いたずら」が、今日も気になって仕方がない。
※ポピーの茎部分のロゴが入っているのは現在100mlサイズのみ