福岡と東京を拠点に活動する、空間デザイナーでありプロダクトデザイナーでもある二俣公一氏。日本のファニチャーレーベルE&Yから、ミニマムなデザインのなかにも空間的な広がりが感じられるコートハンガー“4FB “を発表した。
後編となるこんかいは、アルミの素材感とアルマイトの質感が際立った4FBのディテールについてお話をうかがった。
インタヴュー= 加藤孝司
Photo by Jamandfix
――素材ですが、最初写真で見たときにはアルミだとは思いませんでした。木を曲げているものなのかと思いました
とくにベージュなんかはそうですよね。素材が何か分からないですよね。僕も最初これが出来上がってきたとき驚いたんですけれども、素材はアルミのアルマイトなんですが、これが金物の重さをぜんぜん持っていないというか、それは素晴らしいと思いました。
――足の広がりの角度もじつに美しいですね
上部の広がりもそうなのですが、この角度がいちばん綺麗だと思って出した角度なんです。
足元はじつは最初は平らだったのですが、いちばんはじめのプロトタイプを作ったときに、安定性の問題で考え直さなければならなくたったんです。それならと、下もおなじ角度で作ったものが結果的にこのかたちになりました。
――ということは、広がりの角度は上も下もおなじというわけですね
おなじですね。長さがちがうだけです。
――でもそこらへんの微妙なさじ加減が生きたかたちになりましたね
結局この無垢感というか、マッシブ感が天地に向かって解放されるイメージとして綺麗にバランスが出ないと、このモノが持っているチカラが表現されないところが難しかったですし、いちばん慎重に考えたところです。
最終的にはもっとも自然なかたちに落ち着いたのではないかと思っています。
――機能的にも申し分ないつくりですね
ふだんの空間の仕事では機能と条件ありきのなかで、どうそれをまとめながら自分のフィルターを通して、筋の通ったものにするかということが重要だと思うんです。
プロダクトはすこしちがったところがあって、機能はもちろん重要なのですが、見て買われる方が何かを感じて買っていくものなので、入り口はより感情的なものだと思います。
その人それぞれの捉え方が、空間の仕事の場合とおなじようで、じつはまるで正反対のことだったりします。
――このコートハンガーは、二俣さんのいままでのお仕事と共通する、素材感に特徴があると思います。感情移入できる金属のあたらしい質感を生み出しているというか
もともとのイメージはマットなもの、というのがありました。素材も当初はスチールや、塗装もいろいろなものを試しました。
最終的にアルミに決まったときに、アルミの質感をもっともよく表現するもの、それとは反対にアルミなのかなんなのか、わからないマット感を出そうと思ったときに、アルマイトのマットだと思ったんです。
――アルマイトの特性とはどのようなものですか?
基本的には色自体が表面にのるというよりも、化学反応をおこしてグッと中に入ってくる感じで、上にのった色ではないところですね。基本的にはその素材自体に色がしみてる、という感じです。
だからこのような質感になっていると思います。
――それは実際に感じました。ベージュなんかは素材が木材かと見まちがうばかりに自然です
焼き付け塗装だとそのようには感じないと思います。やはり、つけられた色というか。アルマイトだと素材から出てきたような無垢な色がでますよね。
――それはもう塗料に関しての考えにブレはなかったと?
アルマイトというのは最初から決めていました。
――シンプルなものだからこそ、際立ってくるものってあると思うんですよね
そうですよね。自分の空間の仕事もそうなのですが、どちらかというと削ぐ作業が多いので、削いでいくと残るものはすごく目立つし、すごく精度も必要とされ難しい工程が多くなってきます。このコートハンガーはそれの最たるものです。メーカーの方も苦労されたと思います。だからこそ2年もかかってしまいました。

二俣公一 FUTATSUMATA Koichi
空間デザイナー。鹿児島生まれ。九州産業大学工学部建築学科卒業。
2000年自身の設計事務所であるCASE REAL(ケース・リアル)設立。福岡・東京の2つの都市を拠点に、空間デザイン・設計、インテリアプロダクトのデザインを手がける。2007年ファニチャーレーベルであるE&Yより、アルミのアルマイトを使ったコートハンガー“4FB ”を発表。それが置かれる空間全体を見据えたプロダクトデザインには定評がある。