INAX出版の書籍、若手建築家の建築作法を1冊にまとめた「現代建築家コンセプト・シリーズ」。第1弾の藤本壮介氏、そして9月5日発行予定の第二弾は今月イタリアで開催の「第11回 ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展」に参加で話題の建築家・石上純也氏のコンセプトブックが登場します。
こんかいはコンセプトブックの発売にあわせて、先日INAX:GINZAで開催された建築家フォーラム主催、石上純也氏講演会「自作について」よりお話を抜粋、石上純也氏のふたつのテーブル作品と、空間デザインのプロジェクトについての話をお贈りします。
協力=建築家フォーラム、INAX出版
まとめ、文=加藤孝司
レストランのためのテーブル
レストランの内装の依頼です。クライアントからの要望は5組ほどのお客さんをそれぞれ特別な空間でサービスをしたいということでした。50平方メートルくらいの空間でしたのでそれぞれのお客様に個別の空間をつくるほどには広くありません。そこで空間を仕切って小部屋をつくる代わりに、二人には大きすぎるくらいのテーブルを用意することにしました。壁で仕切るよりは強固な境界ではないのですが、テーブルがあるとそこで自分の空間だということがある程度認識できます。そのことで、ゆるやかに空間をわけるようなことができるのではないかと考えました。
ここでまず最初に考えていたのが、内装のプロジェクトとはいっても壁や床を張ったり塗ったりという風にして空間をつくるということではなくて、何かをもう少し建築的に考えたいなと思っていました。
僕はこのテーブルを、空間をゆるやかに仕切る小さな建築としてつくりたいと思っていました。 テーブルの大きさは2m×2mで、結構スペースをとります。そこで、存在感の調整がとても重要だと考えました。具体的には、紙のように薄くて、大きなテーブルがいいのではないかと考えました。素材は鉄なのですが凄く薄いので普通にデザインするとたわんでしまいます。ですので、建築と同じように構造家の方とコラボレーションして、構造解析を行っています。あらかじめたわむ場所やたわむ大きさや曲率を算出して、たわむ方向と逆の方向に最初から曲げておくことで、床に設置したところで天板と脚が水平垂直になるようにしました。
レストランの空間を建築でいえば敷地に見たてて、大きなテーブルを小さな建築に見立てて、建物を敷地に五つ配置していくようにテーブルを店内に計画していきました。
キリンアートプロジェクト2005「table」
次はレストランのテーブルを発展させてつくった大きなテーブルの作品です。ギャラリーでの展覧会のためにつくりました。
最初は「レストランのためのテーブル」を出品するということも考えていたのですが、レストランの機能に合わせてつくったものをギャラリーという展示空間のなかに置くということに、何かぎこちないものを感じていました。この空間にあったテーブルを新たに考えない限り、そのぎこちなさは取り払えないと思っていました。
ギャラリーという展示空間にテーブルをつくるということがどういうことなのかと考えたときに、少なくともレストランのように肉を切ったり肘をついたりといったことはないと思うし、物を書いたり打ち合わせをしたりするわけでもない。だからといって、テーブルの機能に必要性がないかというと、そういうわけでもなくて、テーブルであるからにはテーブルとしての最低限の機能がないとだめだと思っていました。ギャラリーなので上においてあるものを眺めたりといった、鑑賞することが多いはずです。眺めることとテーブルの機能が微妙な関係性で結びつくのがよいと考えました。
ランドスケープのように配置された植物や食器や茶器。それらが、水面の上に浮かんでいるようなイメージ。ゆらゆらと漂うようにゆっくりと振幅する水面に浮かぶ静物がつくりだす風景を眺めながら、水面に浮かぶ茶器でお茶が飲めたらいいなぁと思っていました。
ランドスケープをつくるような感じで空間をつくっていけば、もともとの空間が自然と屋外的なスケール感を許容できるようになっていくだろうと思っていました。具体的には、劇場全体を霧でみたすことで、天気がかわるように刻々と空間が変化していくような感じにしました。すごく曇っているときもあるし、一方で、お客様が入ってきて温度が上がってくると飽和水蒸気量が上がって、だんだんと霧が晴れてくるときもあります。そうすると、もとの古い劇場の風景にもどったりします。
刻々と1日のなかで空間が変化していって、霧で曇ってくると白い布で覆った劇場のなかの客席が雪山に見えたり、もっと曇ってくると空間の奥行きが全く分からない真っ白な空間になったり、ぼんやりと元の劇場が現われてきたり、1日のなかでも山の天気に左右されるように劇場の風景が変わっていきます。よくあるようなインテリアの固定された空間というよりは、自然界のなかにあるようなゆったりとした流れのある空間になったと思います。
近日公開予定の後編では、建築のプロジェクトについてのお話をお贈りします。
お楽しみに。