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2009.12.04

「DESIGNTIDE TOKYO 2009」を振り返って

メイン会場・ディレクター、松澤 剛氏に聞く

 
瞬く間に過ぎ去った5日間だった。「DESIGNTIDE TOKYO 2009」が終わってから、早くも1ヵ月が経とうとしている。その間、参加クリエイターにとっては、振り返る間もなく、大きな変化がある毎日を過ごしているのではないだろうか。あるものは海外で評価され、あるものは自身のクリエイションが掛け算で広がっていった。

Text by OPENERS CASA
写真=原恵美子

キュレーションというのはなにかの訴えに対して、消化させる行為を促すこと

振り返れば、運営側のディレクター陣にとっても、イベント全体の純度の高さを維持し、隅々における精度を向上させるという大きな戦いもあったはずだ。今回はディレクターのひとりである松澤 剛氏に、メイン会場(ミッドタウンホール)を中心に「DESIGNTIDE TOKYO 2009」を振り返っていただいた。




──秋のデザインイベントというと「デザインイベント=家具」という概念が、この10年間で一般的に蓄積されてきたように思います。しかし、「DESIGNTIDE TOKYO 2009」を拝見して、そういった意識が払拭されるほど、さらには昨年にも増して自由なクリエイションが多かったように思います。そのへんのディレクションは意図されていることなのでしょうか?

松澤 たしかに「デザインイベント=家具」というこれまでのイメージがあったことは否めません。しかし「DESIGNTIDE TOKYO」はデザインのイベントです。私たちはクリエイション以前に、「クリエイターの考え方=脳の中とその人自身」をトレードしていくという場という意識でイベントを開催しています。ならば新しい考え方やアプローチしているものであれば、ジャンルは問わず受け入れていきたいと。このコンセプトを維持した結果が、今回の内容に繋がったと思っています。




──例にあげるなら、酒井博基さん(Central Line Inc.)の「やさいのカード」デザインの力を利用した新しい食育プログラムがメイン会場にあったときは驚きました。「DESIGNTIDE TOKYO 2009」にあのカードがあることで、イベントとしての間口の広さを提示したと思います。そして間口といえば、今回の谷尻 誠さんによる会場構成。昨年よりキャッチーになり、幅広い年齢層の方が会場内を楽しめたのではないでしょうか? 一般来場者のなかには、「谷尻 誠の名前は知らないけど、六本木でやったデザインイベントの綿の会場は覚えている」または「メイン会場を見て、空間や立体というものに興味をもちはじめた」という意見もゆくゆく出てくるかと思います。

松澤 会場構成はイベントにおいて、たいへん重要なものだと位置づけています。また昨年から建築家を起用している点にも大きな意味があります。エキシビションという大きな枠として会場があるわけですが、会場自体にも大きな考えをもってやりたいというのが、大きなきっかけだったんです。「空間=仮の構造物」というものに対して建築家からアイデアを出してほしかった。なにかひとつのまとまりのなかに入ること……例えば、喫茶店に入ったとします。そこには数種類メニューがあります。この場所が居心地の悪い、あまり意味が見出せない空間だったら、「メニューからパッと選んで、とにかくなにか飲んで、早くここから出たい」という意識が働きます。

しかし、好き、嫌いは別にしろ、消化させることができる「意味がある空間」があるとどうなるか……まず落ち着いて考えられる頭になるんです。それは「自分がこの空間に入った」ということをひとつ消化するんです。今度はきちんとストーリー立てて、お茶に向かわせるんです。メニューもきちんと見るでしょう。メイン会場も同様に、会場に入ると数分間で高揚感が増してくる。そして次に消化に向かわせることができる。出展作品にかんして、「なにでできているんだろう?」「これはどうなっているんだろう?」と「きれいな疑問」が出てきます。もし、なにも考えられていない会場だったら、ワンクッションがなく、会場に来て多くの出展物に間髪いれずに直接向き合わなければならない。それはときに「ブースをみるのが義務」になり、作品に対しても落ちついて、自然に向き合えなくなる。キュレーションというのはなにかの訴えに対して、消化させる行為を促すことでもあります。




──すごくわかりやすいお話です。そんな会場構成ですが、想像するに準備はたいへんだったと思いますが……。綿が2.5トン、布団2000枚分というボリュームは苦心された点も多いのではないでしょうか?

松澤 じつは事前作業に11日間、倉庫を借りて作業していました。その間、スタッフをはじめサポーターは綿まみれでしたね。全体像では、昨年に比べて「見えない感じ」はありました。今回は綿を使っている時点で、図面だけの最終決定ができない。ひとつ、ふたつのスタディを終えて、「見えた!」という感じは得られませんでしたね。たしかに綿による雲のような表現は、不確定要素が多いものですから。構造には一応空気をいれているので成立するが、見栄えとしてなにが正しいかはわからない部分があります。数式では当てはめられないグレーな部分からはじまったという意味では、今回の会場構成は大きな挑戦でしたね。振り返ってみると、こうした挑戦に力を添えてくれたサポーターの存在も心強かったです。

──ちなみにいま、あの綿はどこへ行ったのでしょうか?

松澤 空気の構造を抜いて、すべて粉砕して再利用されています。壊すときはやや寂しさもありましたが、うれしさの方が増していましね。やり終えたと。




──昨年も松澤さんにお話をお伺いしましたが、「DESIGNTIDE TOKYO 2009」をやり終えたいま、今後はどのようなイベントにしていきたいとお考えですか?

松澤 会場構成にはいろいろな可能性があります。なので、その会場構成をするのは建築家だけでもないと思っています。表現ができる人物であれば。ただ、様々な知識を必要とし、もちろん、図面のひとつやふたつ、描けないと難しい。これから、いろいろなことをふまえ、いろいろな方向性を考えていきます。まったく違うものに来年はなるかもしれません。

そして、もっとも重要な出展者のみなさんのクリエイションの幅が広いものであるとうれしい、私たちがそうできるように環境を整備し、促していきたいです。

あとは昨年も言いましたが、こういった出展者の才能がこのDESIGNTIDE TOKYOという装置を経由して輸出されたり、国内でも成立していくための場になり得るようにしていきたいです。
同時に海外での展覧会の企画もしたいと思っています。

──ありがとうございました

松澤 剛(マツザワツヨシ)
株式会社E&Y代表取締役。デザインエディター。
ファニチャーやプロダクトを軸とした国内外のデザイナーの作品をプロデュースし、現コレクションは50点以上になる。近年ではZANOTTAとのコラボレーティブエディションを2006年に発表し、2008年ミラノで新作を発表した。 作品の一部はMoMA NY、Design Museum London、Musee des Arts Decoratifs Paris、Sweden National Museumなどに収蔵されている。また、国内外のプロジェクトや展覧会、イベントのディレクターやアドバイザーも務める。
 
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