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![]() 司祭の制服をまとった山下一根氏は、東京・潮見のカトリック中央協議会に携わっている。同協議会に隣接したカトリック潮見教会にて撮影。のちに“蟻の町のマリア”として知られる北原怜子が戦後貧しい人々のために行った、慈善活動がきっかけで誕生した由緒ある教会だ
IKKON YAMASHITA THE HERALDIST 西洋紋章画家、山下一根氏の仕事(その2)
名だたる西欧貴族や名家をはじめ、多くのローマ教皇庁(ヴァチカン市国)の枢機卿や司教の紋章デザインを手がけ、ローマ教皇の紋章作成にも参加した山下一根氏。中世から連綿と続く紋章学を学び、その歴史を現代に継承する唯一のアジア人である山下氏の仕事を通し、日本ではまだ馴染みの薄い西洋紋章の世界を紐解く。 構成と文=竹石安宏(シティライツ)
写真=奥山光洋(奥山写真事務所)
撮影協力=カトリック潮見教会(旧「蟻の町」、カトリック東京大司教区)
下窄英知師(カトリック中央協議会・司教協議会秘書室広報)
歴史と文化の継承者、ヘラルディストの使命
紋章には使用可能な色(基本的には金、銀、青、赤、緑、紫、黒の7色のみ)や構図的な光の当て方など、伝統的なルールがある。描かれるモチーフにもすべて意味があり、それらを把握していなければならない。また、各氏族の歴史に合致したモチーフを選ばなければならないため、系図学的な知識も必要となる。これら紋章を描く際に必要な紋章学は、学会こそ存在するが専門的な教育機関はヨーロッパにもなく、徒弟制によって学ぶしかない。山下氏はハイム大司教より、そうした伝統的な紋章学を修得した。その後1999年に山下氏は帰国したが、2003年にハイム大司教は逝去。同年より山下氏はヘラルディスト(紋章画家)としての仕事をスタートさせ、欧米の王侯貴族や名家の紋章を描くようになったのだ。
日本人が描く、日本人のための紋章
そんな山下氏のもとには、日本人からの紋章制作の依頼も近年増えているという。紋章はキリスト教の宗派によってスタイルがやや異なるなど、本来は宗教に関わったものではあるが、聖職者のための紋章を除き、必ずしも信仰を表すものではない。伝統的なモチーフやスタイルによって氏族と個人を象徴させるものであり、信仰に関わらず日本人でも制作することは可能なのだ。また、欧米における紋章はレターヘッドやリング、家庭で使用する食器類などにあしらわれることが多いが、日本では会社やブランド、店舗などのロゴタイプに使用されることもあるという。
![]() ことし3月に新宿伊勢丹で行われた英国大使館主催の「英国フェア2008」はオウプナーズでもお伝えしたが、これは日英通商修好条約150周年記念としてフェアで販売されたウィスキーのラベルのための紋章デザイン。モルトウィスキーの原料である麦と日米の象徴を図案化
「紋章のデザインは代々のものがあるにしろ、持ち主の希望がないと進みません。日本の方からのご依頼のさいは、ほとんどがゼロからのデザインなのでさまざまなことをお訊きするようにしています。そういった場合、日本には紋章の伝統がないからこそ、欧米にはない新しいデザインができることも多いですね」 いにしえの騎士道に端を発し、ヨーロッパの歴史と美意識に彩られながら今日まで受け継がれてきた西洋紋章。そんな伝統文化をここ日本で守り続けるヘラルディスト、山下一根が描く紋章は、正統な歴史の継承者たる威厳を放っている。 了
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