横浜を舞台に3年に一度おこなわれる、現代アートの国際展「ヨコハマトリエンナーレ2011」レポート。前編の横浜美術館編につづき、後編はもうひとつのメイン会場である、日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)に展示された最新の現代アート作品を紹介しよう。
写真と文=加藤孝司
現代アートの醍醐味を味わえるスケール感溢れる展示空間
ヨコハマトリエンナーレ2011 日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)
日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)には、東西の先鋭的な現代アート作品が集められた。実際に作品のなかに入って空間全体で体験するインタラクティブな作品や、天井まで迫るような巨大なスケールをもった作品が、湾岸沿いの歴史ある倉庫に贅たくに展示されている。なかでも本会場で注目したいのは、世界中から集められた映像作品。現代アートの展覧会場で、ともすると見過ごしてしまいがちな映像作品だが、時間をとってじっくり観たい見ごたえのある作品が集められている。
「The Clock」、真っ先にみるべき映像作品
なかでも、今年おこわれた第54回ヴェネツィア・ビエンナーレで最高賞の金獅子賞を受賞した、現代音楽家でもあるクリスチャン・マークレー氏が手がけた映像作品、「The Clock」は、今回のヨコハマトリエンナーレ2011でも、真っ先に観るべき作品だろう。膨大な数の古今東西の映画作品から、時を刻む時計とリンクする映像を蒐集した上映時間24時間におよぶ本作は、実際の時間と同期して上映される。
現実の世界とリアルタイムに進行するスクリーン上のストーリーは、いまここではない、もしかしたらそうあったかもしれない、べつの自分の生き方さえイメージさせるシーンが連続する。映像から想起される個人の記憶や、集合的なイマジネーションの根源にふれる本作は、じつは「選ぶこと」、そしてそれを「観る」ひとがいることで成立する、近代に流行した大衆的見世物のような古典的な芸術作品ともいえる。ヴェネツィアで最大に評価されたこともうなずける映像の叙事詩である。
砂の山というリアルなオブジェクト
スクリーンに投影した映像作品と、実際の砂山を展示したのは、現代美術ユニット 山下麻衣+小林直人。映像は海岸で砂鉄を集める作家自身の姿。かたわらの砂山には、採取した砂鉄でつくられたという一本のスプーンが頂に。砂鉄を蒐集するプロセスが映像作品として結晶し、そのパフォーマンスがリアルなオブジェクトに収斂される過程を視覚化している。
20トンもの陶土をつかって作家みずからこねてつくったという、巨大な2頭のカバの陶土細工は、パリ在住のアーティスト・ユニット デワール&ジッケルの作品だ。リアルなスケールがもつ迫力はアートならでは存在感だ。
現代アートが暗示する森とのかけがえのない共生の物語
会場となった元物流倉庫の天井高のある大空間に、森のような空間が出現。コンクリートの壁と緑豊かな大樹の不思議なコントラストが印象的なコンセプチュアルなアート作品は、スウェーデン人でベルリン在住のヘンリック・ホーカンソン氏が手がけた。