|
![]()
|
|
|
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
![]() ![]() 坂本龍一 2009秋特集|もうこれ以上、サービスできない! YMOロンドン公演DVD『POSTYMO』の見どころを語る 構成・文=吉村栄一
“こういうYMOって観たことがない”と思うヨーロッパ映画のような映像
──イエロー・マジック・オーケストラの昨年のロンドン公演がDVDになりますね。 日本に来る前、ニューヨークでずっとミックスダウンの作業をしていました。去年リリースしたライブCD(LONDONYMO/GIJONYMO)とはちがうDVD用の5.1チャンネルのミックスをして、これはすごく時間がかかった。 ──CDとは、かなりちがう印象ですか? やはり絵があるとミックスは変わってくるんですよ。たとえば映像で細野さんの手もとがアップになるシーンがあるでしょ。その瞬間に、細野さんのベースの音がほかの楽器の後ろじゃなくて、前に出ていないとやはり違和感がある。感覚的におかしいと思っちゃう。 CDのときはかなりじっくりミックスをしたし、あれはあれですごくいい音になったと思うけど、そのままDVDに音をはめてもおもしろくない。それこそ映像の1コマ1コマをチェックして、そのときに映っている演奏者の音をフィーチャーしてみたり、予定を超えてどんどん作業期間が長くなってしまった……。 ──そうした作業をしながら見直してみたロンドン公演はいかがでしたか? いま見直してもいいライブだと、まず思いました。このライブDVDのための映像は、カールステン・ニコライ(アルヴァ・ノト)の同郷ドイツの友人のカールステン・ゲブハートという映像作家のチームが収録したんです。それがすごくいい。とくに変わったことをしているわけじゃないのに、やはり日本人が撮った映像とはちがうものになるんです。“こういうYMOって観たことがない”と思うヨーロッパ映画のような映像になっています。 ──ロンドンではYMOに興味はあってもよくは知らないというひともたくさんいました。そういった観客の前に立つのはすごくひさしぶりだと思いますが。 演奏している僕らからすると、そういう感じはあまりしなかったな。むしろ、意外と70年代からのYMOのファンみたいなおじさんが多いなという印象もあったし。いっぱいいた若いひとはきっとそうなんだろうけど、それで違和感とかいつもとちがうという思いはなかった。 ──客席で観ていたとき、やるほうも観るほうもちょっと緊張していたようには感じたんですけど、そうでもなかった? どうだったろう、ぼくはあの会場でソロ公演もやっているし、イベントで呼ばれてやったこともあるし、たいして緊張はしてなかった。それでも公演の前にロンドンのスタジオでリハーサルをすると、スタッフがみなイギリス人だったり、そういう意味では雰囲気はちがってたかも。28年前のロンドン公演と気持ちがかぶる部分もあったのかもしれない。 YMOもマッシヴ・アタックも両方がやる意義があって楽しかったロンドン公演
──自伝の『音楽は自由にする』(新潮社刊)にも書かれていますが、1979年のYMOの初ロンドン公演で、坂本さんの曲である『ジ・エンド・オブ・エイジア』を演奏したさい、ニューウェイヴでかっこいいカップルが踊りだして、それに大きな感銘を受けたと。それから28年経った昨年のロンドン公演では、観客にどんな音楽を聴かせてようと思いました? あまりなにも考えてなかったかな(笑)。でも、YMOが出演したメルトダウン・フェスティバルは、毎年異なるアーティストがキュレーターになって出演者を招聘するフェスティバルで、今年はオーネット・コールマンがキュレーターになってますけど、昨年はマッシヴ・アタックがキュレーターでした。マッシヴ・アタックにYMOが招待されるというのは、とても意義深いことだと思ったんです。マッシヴ・アタックって、ぼくたちYMOよりも歳下の世代で、そういう若い世代のアーティストからリスペクトされるということは悪い気はしない。だから、僕たちもそのリスペクトに応えて、普通にやれば普通に存在感を出せるんじゃないかって考えてました。 実際、演奏が終わったあとにマッシヴ・アタックのメンバー3Dが「YMOのリズムはクレージーなほどすごい」っておどろいていたみたいだし、招聘した彼らにも“日本の伝説のバンドであるYMO”を28年ぶりにロンドンに呼べたという自負やよろこびを感じてもらえたんじゃないかな。YMOもマッシヴ・アタックも両方にとって意義のある、楽しいロンドン公演でした。 ──終演後もあたたかい独特の空気に包まれたコンサートでしたよね。でも、せっかくだから28年ぶりにロンドンっ子の前でもう一度『ジ・エンド・オブ・エイジア』をやってみようなんていたずら心は起こさなかったんですか(笑)? あ! あのときはまったく思い浮かばなかった。それ、誰かが一言いってくれればよかったのに。そうすればやっていたかも(笑)。 ──(笑)。その代わりではないですけど、ロンドンで初演となったのが当時の新曲である『ザ・シティ・オブ・ライト』『トーキョー・タウン・ページス』の2曲と、坂本さんのソロ曲である『チベタン・ダンス』。2008年の6月というタイミングで『チベタン・ダンス』という曲をダライ・ラマ法王のメッセージをバックに投影しつつYMOが演奏するというのは、とても大きなできごとだったと思います。 去年の北京オリンピック直前というあのタイミングで、ダライ・ラマから僕がもらったメッセージ(オペラ『LIFE』時)をさりげなく映像に埋め込んで、わかるひとにはわかるというぐらいの感じでやったんです。 ──演奏中からものすごいリアクションがありましたよね。 うん。そもそもあの曲をロンドンでやろうと言いだしたのは幸宏なんです。彼も最近は社会派になりつつあるし、おもしろいよね(笑)。 DISC2のヒホンはDVDになってみるとカッコいいんですけどね(笑)
──このDVDのパッケージのデザインも、ちょっとロンドンっぽいおもしろいデザインですよね。 パッケージのアートワークはカールステン・ニコライに頼んだんです。すると、イギリスの郵便ポストにあるようなヴィクトリア朝のロゴをつくってくれて、こういうおもしろいデザインになった。そもそもタイトルの“POST”って2重3重の意味がある言葉で、YMOの後(ポスト)だったり、投稿(ポスト)するだったり、掲げるって意味もある。それでこういうデザインになったんです。 ──ロンドン公演をそのまま収録したDISC1と、スペイン・ヒホン公演の6曲+ドキュメンタリーを収録したDISC2は、かなり趣きがちがいますよね。 ライブ自体としてはヒホンのほうがよかったんですよ。初回のロンドン公演でのいくつかの点の反省も踏まえて曲順を入れ替えたり、幸宏の生ドラムの部分を増やして、よりライブバンドとしての力強さが増した。このDVDは方針として、DISC1のロンドン公演のほうはライブ自体をなるべく素直にそのまま記録したライブ映像とする、それに対してDISC2のほうはボーナスディスクでもあるのでインタビューなども入れつつ、ヒホンのライブ映像を使ってかなり遊んでいます。それがすごくおもしろいんですよ、映像として。 ──たしかに、ヒホン公演の映像はすごいですね DISC1のロンドンの映像のほうでヒホンのようにあんなに遊んじゃうと、純粋にライブの映像を楽しみたいひとには不満だろうと思うんですよ。逆に純粋な映像作品としてはDISC2がかなりおもしろいと思うんで、ぜひ楽しんでください。 ──ヒホンの映像をフルで入れなかったのは、そういう遊びを優先したから? あと、リリースを前提とした映像収録をヒホンでは撮ってなかったんです。だから素材が足りないという面もあります。それにしてはDVDになってみるとかっこいいんですけどね(笑)。
commmons
|
|