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大貫妙子『Gratefully Yours 〜PURE ACOUSTIC 2009 at JCB HALL〜』
LOUNGE INTERVIEW
2010.03.18

大貫妙子インタビュー(後編)

23年間つづいたアコースティックライブが初のDVD化
『Gratefully Yours 〜PURE ACOUSTIC 2009 at JCB HALL〜』

教授のピアノと一緒に歌うことのよろこび

 
昨年末、坂本龍一さんの公演「Ryuichi Sakamoto Playing the Piano featuring Taeko Onuki」全7公演(大阪・横浜・東京)で共演された大貫妙子さん。そのときの感想や、“教授の曲を歌う”というアルバム制作のお話をうかがった。

文=オウプナーズ
写真=原恵美子(インタビュー)

教授の比重が、会場の空間を埋めている

──昨年末の坂本さんとのコンサートはいかがでしたか?

大阪と東京で計7回の公演でしたが、想像以上に喜んでいただけて、教授も私もびっくりしています。坂本さんのコンサートは日本にいらしたときは、かならず見に行っていますが会場は教授の熱いファンばかり、一種、坂本教(笑)のような……。そんな雰囲気のなかに今回は私が出ていっちゃって……。ほんとにステージに出ていいのかなって、じつはちょっと腰が引けていたんです。帰れ! とか言われたらどうしようかと(笑)。ですから、ほっといたしました。

──久しぶりの教授とのデュオはいかがでしたか?

リハーサルのときに、ピアノの音色、鍵盤へのタッチが以前より洗練されていて、びっくりしました。長いヨーロッパ・ツアーの間に、弾いて弾きつづけて、なんというかスープにたとえるなら、ほんとに澄んだクリアなスープのようになった感じですね。羽根のように軽くて、きれいな音になっていて驚きました。

──大貫さんは、ご自身のアコースティックライブなどと歌い方は変わりますか?

もちろん違います。弾いているひとが違うと、歌へのアプローチは違ってきます。テンポも間も、お互いの空気によってつくられる共同作業ですから。たとえば「風の道」は自分のアコースティックライブでも長く歌っていますが、そのときは、やや全体がゆったりしたテンポではじまってしまうと、遅く感じてとても歌いづらいのですが、坂本さんとの場合は、それよりさらに遅いテンポではじまっても、まったく遅いとは感じない。つまり坂本さんの空気に乗っかることができるのですね。自分がひっぱって行くことと、のっかることでは、まったく違う立場になるので。音の鳴っていない瞬間も気持ちや感情が坂本さんのピアノの延長上にあるので、無音とはならないからです。坂本さんのピアノは、単なる歌の伴奏ではなく、一緒に歌っているということだからですね。コンサートが終わってから「ライブハウスかと思った」とか「ものすごく近く感じた」というお褒めの言葉をいただいて、うれしかったです。

大貫妙子「PURE ACOUSTIC」ライブより
「PURE ACOUSTIC」ライブより

──東京国際フォーラムでのプレス会見で、教授は「これからライブを積極的にやる」と発言されていましたが。

ステージに立たないとわからないこと、やっているうちに発見することがいくつもあるんです。自分のなかに眠っていた思わぬ力が出てきたり、それまでできなかった歌い方ができるようになることもある。それはやはりステージじゃないとダメなんです。プレッシャーって、押さえつけられるような感じで使われることが多いですが、それによって跳ね返す力が備わると思うので、プレッシャーが大きいほど自分自身は成長するものだと考えていて、ステージはまさにそれですね。跳ね返せないと、潰れちゃうだけですけど。

──日比谷公会堂でのライブはとても素晴らしかったです。「突然のおくりもの」のMCなど、いまでも印象に残っています。

DVDのインタビューでも話しているので(笑)、ぜひ観てください。

──「突然のおくりもの」や「新しいシャツ」などはいまでも歌われていますが、昔の曲で歌わなくなった歌もありますよね?

たくさんあります。最大の理由は歌詞ですね。若いころに書いた歌詞でも、基本的に考え方は変わってはいませんが、いまだったら「こういう言葉は使わない」というのがあります。それは、やはり歌えません。恥ずかしいです。

教授の楽曲に歌詞を書いて歌うアルバム

──ところで、教授とのレコーディングは決まりましたか?

たぶん今年の夏ぐらいですね。コンサートで歌った「鉄道員」などは収録したいと思っています。

大貫妙子インタビュー「坂本龍一の曲を歌う」というのはなぜ企画されたんですか?


──今回の「坂本龍一の曲を歌う」というのはなぜ企画されたんですか?

坂本さんの「TANGO」は自分のアコースティックライブでも歌っていますが、そのほかにも坂本さんに頼まれて、彼の曲に歌詞を提供したものはいくつかあるんです。自分で曲を書くからといって、そのすべてに満足しているわけではありませんし。それなら私が聴いて素晴らしいと思う曲に歌詞を書いて歌うことの方が、歌い甲斐があるのではないかと思いはじめていて。自分の作詞作曲によるアルバムはこれまで26枚も出していますし(笑)。いろいろな方のアルバムは聴きますが、なかでも坂本さんの楽曲はもっともよく聴いていましたから。いちばん難しそうだけれども、だからこそトライしてみたかったので、今回の提案をさせていただきました。

最後に坂本さんと一緒にアルバムをつくったのが97年の『LUCY』ですから、それからもう10年以上が経っていますし。このアルバムの企画が実際可能かどうか、お互いに確かめ合う必要がありました。そのこともあって、昨年の坂本さんの公演に参加させていただいたんです。

──レコーディングは教授のほかは?

今回のアルバムは、坂本さんは「参加してくださる」というスタンスですので。ピアノと私の歌のみで、ほかには入れない予定です。それでも十分濃すぎるんじゃない? でしょうか(笑)。なにか入れても結局「いらないんじゃない?」ということになる気はします。

──秋発売予定のアルバムはもちろん楽しみですが、それ以外の活動は?

映画の主題歌の書き下ろしが、近々の仕事です。あとは、各地のイベントのライブや、連載中の「考える人」とレギュラー番組のNHKFMですね。音楽活動は、個々の仕事をつづけるなかから、いろいろ発生していくことが多いので。今年もあらたな出合いを楽しみにしてるところです。なにより、坂本さんとのレコーディングに向けて歌詞を書くことに、ほとんどの時間を割いて頭を抱えて(笑)いると思います。ものすごく時間がかかるので、歌詞は。

──ゴールデンウイークには野音もありますね。

5月3日に野音で行われる「Springfields’10〜東京場所〜」にはバンドというかたちで出演します。

──スポーツ選手のように調整してベストの状態で歌ってください。

その日のためにもっていきます(笑)

──ありがとうございました。

大貫妙子『Gratefully Yours 〜PURE ACOUSTIC 2009 at JCB HALL〜』
DVD『Gratefully Yours 〜PURE ACOUSTIC 2009 at JCB HALL〜』
DISC 1:コンサート完全収録盤+インタビュー(108 min.)
DISC 2:ア・カペラ映像+インタビュー(35 min.)
品番|HUBD-10918/9 5900円
ハッツ・アンリミテッド

大貫妙子(vo)
フェビアン・レザ・パネ(pf)
吉野弘志(b)
林立夫(ds)
小倉博和(g)
ASKA ストリングス/
金子飛鳥(Vn)・相磯優子(Vn)・志賀惠子(Vla)・木村隆哉(Vc)
*2009年11月1日(日)JCB ホール(東京・後楽園)にて収録
http://www.onukitaeko.jp/
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