© Photo Courtesy of New Line Cinema

2009.10.16
INTERVIEW|映画『私の中のあなた』公開記念
ニック・カサヴェテス監督 インタビュー(後編)
話題作『私の中のあなた』の完成披露試写会のために来日したニック・カサヴェテス監督へのインタビュー第2回。映画の内容から発展して、“生と死”の話まで興味深い話を語ってくれた。
文=金子英史
人生を、どうやって、どれだけエレガントに対処していくかに興味があります
──いま、病気の家族を抱えている方や、亡くされた方は、この映画を観ることによって、きっと両方のサイドに納得のいくというか、救われるひとがいると思いました。
観ていてすごくつらくなる映画だとは思うのですが、「なんのために映画をつくるのか?」と考えたときに、ヘリコプターとかを爆発させようとは思わないんです。なぜなら、それを日常で見たことがないから。
それに私の興味があることは、“人生、山あり谷あり”という部分であって、それを「どうやって、どれだけエレガントに対処していくか?」ということを描きたいんですね。
この映画は、そういう映画だと思っていますので、たくさんのひとが好きになってくれればいいと思っています。
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──個人的な話ですが、歳の近い従兄弟がガンで亡くなりました。彼には弟がいたのですが、しかし彼は自分の母と父以外、弟も友人も、すべてを拒絶してしまったのです。
ソフィア・ヴァジリーヴァが演じた白血病の姉・ケイトはそういう意味ではすごくオープンだったので、彼女みたいだったらよかったのになと、自分の経験と重ねあわせて観てしまいました。
ひとが亡くなるというのは、なんとももどかしい部分があるのですが、だけどもみんなが死ぬわけですから、じつは世の中でいちばんノーマルなことなんですよね。
でも、ずいぶん暗い映画をつくってしまいましたね。次は、コメディをつくろうかと思います(笑)。
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私たちがいま経験しているこの地球上での出来事というのは──
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──ケイトが、蟹座(Cancer/癌も英語で“Cancer”)のTシャツを着ていて、子どもたちがそれで盛り上がって──いわゆる子どもたちの自虐的ネタなのですが、母親役のキャメロンだけが笑えなかったというシーンがあるのですが、その部分はすごく子どもらしい“笑い”だったと思います。
そのシーンでは、彼女は“生きている”ということが描かれていたと思いますが、いかがでしょう。
いくら重い病気でも、いつも鬱々としているわけではなく、やはり楽しみますよね。それでなければ生きている意味がないですよ。
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私たちが、この星に生きているのは、いろんなものを愛して、いろんなもので遊んでというためなのですから、病気だからって遊んだっていいし、いろんなことを楽しむべきだと思っているんです。
──先ほどの「コメディ映画を撮ろうかな」という部分はジョークなのでしょうが、じっさい監督のコミカルな人間ドラマは拝見してみたいと思います。
私の性格上、コメディを手がけてもなぜか重苦しい映画になってしまうのですが(笑)、つくったらおそらく面白いと思いますよ。もしかしたら、わりと近いうちにやるかもしれません。
──リアリティのある言い方ですね。次回作はコメディなのでしょうか?
アメリカで私の映画の印象は「すごくセンチメンタルだ」とか、「悲しい」とかみんなが言うのでそのイメージになってしまっているんです。もうちょっと知的なひねりが利いたものが好きというひともいるので、次回作は現代的で知的なものを考えています。あらゆる感覚の能力を失ってしまった女性についての話なのですが、これまたコメディではないのです(笑)。
私のような奇妙な感覚をもっているひとにとっては、“コメディ”と思われるかもしれないですけれど。でも、一般的な意味ではコメディではないです。私はちょっとネジがずれていて、イカレているんです(笑)。
──日本でも監督のファンは、そういうひとたちですよ(笑)。
ありがとう。日本にボクの兄弟や姉妹がいるわけですね!(笑)。
私たちがいま経験しているこの地球上での出来事というのは、本当にクレイジーなことなんです。だから、理屈にあわない不条理なことも起きているわけで、そういう不条理さを映画に象徴させることが大切なんだと思っています。映画で唯一大切なことは、現実を反映させることだと思うんですね。
しかし、映画館では映画のことが起こっていて、一歩外に出るとぜんぜんちがう現実がある、ということはよくあることなんです。私はこれからも自分に対して非常に厳しくありたいと思うのが、私たちがじっさいに──必ずしも見ていることではないのですが、感じていることを反映する映画をつくっていくということ。
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──なるほど。
この世の中で生きていくことは、すごく複雑だし、嫌なこともいっぱいあるし、不条理なんです。だからこそ、それを反映させた映画はおもしろいと思うんです。
残念なことに、アメリカでは日本の映画はほとんど上映されません。日本はすごく大きな国で、経済大国なんだけれど、外から見ているとなにが起こっているかわからないんですよね。
日本の映画で非常に知的に戦っている映画は観たことがあるのですが、日本は黒澤 明とか、溝口健二の国だから、若い映画監督たちには、じっさいにこの街、この国でいまどのような不条理なことが起こっていて、それがどんなふうに人びとの心や行動に反映されたのかという映画を撮ってほしいですね。そういう日本の映画をぜひ観たいです。
──今日は、素敵なスーツを着ていらっしゃっていますが、普段もスーツなのですか?
いや。ロサンゼルスに住んでいて、すごく暑いのでいつもはカジュアルです。だけど、生まれはニューヨークなので、街に行ったらきちんとドレスアップしようという気持ちがあるんですよね。それとスーツだと自分の首のタトゥが全部隠れますから(笑)。
いつもは髪もヒゲも伸び放題で、ヘルスエンジェルスのオヤジバイカーみたいな感じなんですけれど(笑)、日本に来るのでそれも整えました。
日本に来るとき、とくにアメリカ人が外国に行くときにせめてできるのは、アメリカをその国にもってこないことだと思っています。
その国を尊重して、できるだけ話さず、その国を学ぶことが大切なのではないでしょうか。
──ありがとうございました。
(おわり)
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『私の中のあなた』
キャスト│キャメロン・ディアス、アビゲイル・ブレスリン、アレック・ボールドウィン、ジェイソン・パトリック、ソフィア・ヴァジリーヴァ、ジョーン・キューザック
監督│ニック・カサヴェテス
脚本│ジュレミー・レヴェン『きみに読む物語』、ニック・カサヴェテス
原作│ジョディ・ピコー著『わたしのなかのあなた』(ハヤカワ・ノヴェルズ刊)
2009年10月9日(金)TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
http://watashino.gyao.jp/
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