
2009.10.08
INTERVIEW|映画『私の中のあなた』公開記念
ニック・カサヴェテス監督 インタビュー(前編)
映画『きみに読む物語』で全世界に感動をとどけたニック・カサヴェテス監督、待望の新作『私の中のあなた』が、2009年10月9日(土)に公開する。
『チャーリーズ・エンジェル』や『イン・ハー・シューズ』などでおなじみのキャメロン・ディアスが、初の母親役を演じた今秋いちばんの話題作。完成披露試写会のために来日したニック・カサヴェテス監督に、映画の制作にかんしてや、みどころについての話を聞いた。2回にわたってお届けしよう。
文=金子英史
いつもは、できあがった自分の映画を観るのは、嫌いなんです
──はじめまして。
こんばんは。まだ、頭のなかが午前3時なんです(笑)。
──今日、日本にいらっしゃったのですか?
そうです。ほんの1時間前です。私の映画は、ご覧になりました?
──もちろんです。
映画を観てもまだインタビューしたいんですね(笑)。
──映画を観たからこそインタビューしたいです(笑)。
ありがとう。
では、最悪の仕事をしてください(笑)。
──ありがとうございます(笑)。まずは、今作『私の中のあなた』ですが、できあがってみての感想を教えてください。
いつもは、できあがった自分の映画を観るのは、嫌いなんです。ですが、今回に限っては不思議なことにやりたかった映画ができたので、すごく誇りに思っていますね。
──なぜ、いつもは嫌いになってしまうのでしょうか?
映画を観ていると、いろんなコトを考えてしまう瞬間がたくさんあって、いろいろと思い出してしまうんです。
映画づくりの経験が、率直な感想を邪魔することがあるんですよね。
今回のキャメロンの演技をすごく誇りに思っています
──主演のキャメロン・ディアスですが、いつも以上に演技に熱が感じられました。監督からは、どのような指示をされたのでしょうか?
じつは、そういう指示は出してはないのです。
彼女は女優としてもすばらしいのですが、人間としてもすばらしいひとなんですね。単にキレイで笑わせてくれるだけではなく、世の中を良くしようとエコ関係のいろいろなプロジェクトにかかわっていたり、じつはすごくシリアスな部分もあるのです。この映画によって、彼女のそのシリアスな面が引き出されたということなのではないでしょうか。
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今作では、20人くらいの俳優の配役をしたのですが──、普通はその俳優が以前に演じたことがある役に似た配役をすることが多いのです。だけど、それだとつまらなくなってしまうんですよね。映画が退屈になってしまうんです。
そういった意味では、キャメロンは母親役がはじめてで、いままで演じたことがない。しかも、ただの母親ではなく、ティーンエイジャーという難しい年ごろの子どもをもつ母親という設定が、観客にとっては驚きになるのかなと感じております。
この映画では、似たような役を与えるというある種の映画の伝統みたいなものを壊したという意味で、今回のキャメロンの演技をすごく誇りに思っています。
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© Photo Courtesy of New Line Cinema
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──彼女自身も出演のオファーは快諾だったのでしょうか?
そうです、すぐにイエスと言ってくれました。
別に昔からの友人というワケではないのですが、もともと共通の知り合いがいて、そのひとを通じてお互いにいつか仕事をしたいと思っていたところだったんです。彼女はアメリカの典型的なタフな女性で、厳しい状況でも彼女との仕事はとてもスムーズにすすみました。
それと、私の母はとても美しい人なので、この映画のなかでも美しい母親がでてくるというのは、とてもうれしかったですね(笑)。
──ご自身の母親像を彼女に投影していますか?
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多少の投影はあるかもしれないのですが、じつはもっとほかの部分の投影があって──。
この映画は非常に単純な話なんです。お母さんがいて、自分の娘の“声”を聞いているつもりだけれど耳に入っていない。
自分の子どもが致命的な病気であるということ、それを認めようとしないのです。これは、じつは私自身の経験でもあって、現在、娘が病気なのです。病気の子どもをもった親にはある共通点があって、それは子どもが病気であることと、死にそうで重篤だということを認めないということです。
「あなたの子どもは死にます」なんて言うひとがいたら、そのひとを殺してしまうくらい、その事実を認めたくないんですね。死から子どもを守らなければいけないという想い、それがこの映画に充分投影されていると思います。
キャメロンは、そういう親の頑(かたく)なさをパーフェクトに演じてくれたと思いますよ。
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これは「子どもの死に立ち向かう家族の話」です
──今作で、全体的に演出上でこだわった点などありますか? おそらく焦点は“家族”というものにおいていらっしゃると思うのですが、演出の仕方によって映画の意味がいろいろと変わってくると思います。今作の映画にかんしては、そういう意味でこだわった点はありますか?
原作では、倫理の問題だったり、裁判の法廷での話が中心なんです。どうして母親があんなことができるのか、だけど彼女の状況だったらそうせざるを得なかったのではないか、そういうある種の「倫理的なジレンマ」の話なんですね。
でも、2時間の映画のなかで、判事が「臓器をあげるんですか?」みたいなジレンマをつづけることはできないですよ。だから、最初はどういう映画をつくればいいのかわかりませんでした。
しかしあるとき、これは「子どもの死に立ち向かう家族の話」だというアイデアが浮かんだんです。ひとの死というものに対面している家族の話だと思いついたときに、すべてがまとまっていきました。
© Photo Courtesy of New Line Cinema
──監督自身、死というもの、または残されるひとたちを、どういう思いで描かれたのでしょうか?
病人本人は、その家族を失望させたくないんですよね。しかも、まわりのひとたちが言うのは「頑張って、戦いつづけて」というコトバしかない。
私の父が亡くなったとき、私は病院に何週間も寝泊まりをして看ていたのですが、ある日、母もいたので、少し休もうと思ってうちに帰ったんです。しかし、父はその日に亡くなったんですね。でも、父は息子である自分のことを誇りに思っていたと、母に伝えたようなんです。
そのとき、逆に彼らに「もう、戦いをやめていいんだよ」という余地も与えてあげないといけないと思ったんです。
もちろん、それはとてもつらいことなんですけれどね。
映画『私の中のあなた』公開記念
ニック・カサヴェテス監督 インタビュー(後編)につづく
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© Photo Courtesy of New Line Cinema
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『私の中のあなた』
キャスト│キャメロン・ディアス、アビゲイル・ブレスリン、アレック・ボールドウィン、ジェイソン・パトリック、ソフィア・ヴァジリーヴァ、ジョーン・キューザック
監督│ニック・カサヴェテス
脚本│ジュレミー・レヴェン『きみに読む物語』、ニック・カサヴェテス
原作│ジョディ・ピコー著『わたしのなかのあなた』(ハヤカワ・ノヴェルズ刊)
2009年10月9日(金)TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
http://watashino.gyao.jp/
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