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![]() 有働幸司氏(左)と西原健一郎氏
西原健一郎 セカンドアルバム『LIFE』リリース記念 西原健一郎(音楽家)×有働幸司(FACTOTUM)対談(後編) 文=金子英史
写真=西原和恵
グレン・グールド、坂本龍一、高校の先生
有働 西原さんは、基本的にひとりで音楽を作られているんですか? 西原 それこそFACTOTUMのコレクションに見習って(笑)、ミュージシャンをたくさん呼んで部室みたいな感じで作っているんです。そのときに自分の書いた譜面を渡すのではなくて、自由にやってもらって、それをアリかナシかで判断していくやり方をとっています。でも、そうすると「作曲とはなんぞや」みたいなことになっていくんですよね。 要は、メロディをつくったのはほかのひとで、自分は何もやっていなくても、自分のアルバムがつくれてしまう、ということなんです。でも、判断の積み重ねを自分がやるということが、作品づくりの要であるという実感があるんです。 有働 楽器はなんでもできるんですか? 西原 ピアノとギターは自分でやることにしています。 有働 最近、ピアノに興味があって、ピアノができたらと思うことがあるんですよ(笑)。 西原 本当ですか! 最近、友だちが家に来たときは教えることにしているんです。 有働 じゃあ、教えてもらおう(笑)! いま、娘がピアノを習いはじめていて、年に一回くらいコンサートがあるんです。いままであまりにも狭いところで音楽を聴いてきたんですけれど、クラシックもなかなかいいなと思いまして。 西原 僕も最近、クラシックにハマっています。いいですよね。それこそグレン・グールドのマネをしてバッハを弾いたり。 有働 グレン・グールドはいいですよね! 坂本龍一さんの『坂本龍一セレクション』は買いました? 西原 買いました! 有働 良かったですよね。 西原 グレン・グールドだとかなりビックネームなので、偶然というにはほど遠いかもしれないですけれど、どこかで音楽のリスニングの時代感というものがあるのかもですね。 有働 そうですね。グレン・グールドは、クラシックで正当なんでしょうけれど、パンクスピリッツというか、いわゆる伝統的なことに反発する“意志”がカッコいいんですよね。 西原 要は、ピアノでバッハの曲を弾いているだけなんですけれど、拍の取り方とか、いわゆるディテールの積み重ねが全体をつくっていて、結果的にかっこいいと感じるものになるんでしょうね。 高校のときにデッサンを習っていて、先生が「腕で描け」と言うんですけれど、どうしても指先で細かく描いてしまうんです。指先がディテールで、腕では全体を描く、刷り込みのようにここ十数年間思ってきたんです。でも、最近は腕で描くディテールが存在すると思いました。 有働 なるほど! そうですね。 ![]() クリエイションの根源とは
──おふたりには無意識的に合致した部分があるから、再度ショウの選曲をお願いしたり、あたらしい音楽を提案しているわけですよね。その合致点は何だと思いますか? 有働 西原さんは、控えめなんですけれど、意志が強い感じがするんです。それが僕にとって魅力的な部分なんです。あまりがっついてというのが苦手なんですけれど、ちょいちょい意見を出して、それが的を得ている。そういう部分が信頼できると思いましたね。 西原 さきほど、有働さんが“ひとが好き”というのがスタイルの根源にあるとおっしゃっていたのですが、まさにそういう部分を感じていますね。デザイナーというよりは、映画の監督みたいですよ。ところで僕は高校生のころ、東映で脚本を書いていたんです。 ──え!? 有働 本当ですか!? 多才だなあ(笑)。 西原 自慢じゃないですけれど、脚本コンテストに応募したら、偶然グランプリを取って(笑)。『ビーバップハイスクール』を撮っていた那須(博之)監督に、2年間ほどついていたんです、高校を休んで。そのときに思ったのが、監督のチカラって本当に強いということでした。照明さんや、美術さんなどいろいろなひとがいるなかで、映画は結局監督のものなんですよね。 同じように洋服も最終的にはデザイナーのものだと思うんです。映画は、スタッフが監督を好きだということがすごく大きいポイントで、要はそのひとのよろこぶ顔を見たい、好きなひとをよろこばせたいという感情が、クリエイションにはすごく必要だと思うんです。まさに僕が感じている有働さんはそこで、僕もふくめてスタッフみんなが有働さんをよろこばせたいというか──。それがクリエイションの根源であり、人間関係としてもすごく強いつながりになりますね。 ──お互い、バランスがとれているんでしょうね。 有働 そうかもですね。 西原 でも、毎回ショウが終わったあとは、自分のできばえに「今回で最後だ」と思って、落ち込んでしまうんですけれどね(笑)。 有働 今回のショウの選曲はすごく好きでした。 たぶん、西原というみたいな感じで握手をしてきたんです。普段、それほど熱くならないひとが、すごく熱かったのでビックリしました(笑)。 西原 いえいえ、けっこう熱いんです! すぐ感動したりしますから(笑)。 有働 でも、クリエイションとはそうなんですよね! 人に「感じてもらいたい!」「感動してもらいたい!」という思いからはじまりますよ。 ![]() 作り手としての姿勢
──作り手として気をつけていることはありますか? 有働 自分で着たいものをつくる、そこは注意しています。 それと、最初のシーズンからのビジュアルブックもそうですけれど、シーズンごとに旅に行って、いろんな人と出会って、いろんなことを感じて、それら感じたことをリアルな範囲で服に落とし込んでいく、そういうことを心がけてモノづくりをしています。 ──西原さんはいかがですか? 西原 何をつくっても完璧という状態にはならないと思うんですよね。とくに自分においては、完璧だと思えるものはなかなかつくれなくて、ひょっとしたら自分は一生完璧なものをつくれないんじゃないか、という気持ちもあります。だから、完璧を追い求めつづける気持ちは大切にしていますね。 でも、完璧を求めるためにストイックになり、ともすれば精神のバランスを崩してしまうことが、クリエイションの場ではあるんです。だから、カジュアルに完璧を求めていきたいと思っていますね。 有働 でも、最初に“こうしよう”と決めたことって、最終的にはブレていないんですよね。そこにいくまでにいかに時間をかけたかによって、自分の自信になるというか。選択をたくさん積み重ねたことによって、作品として生きているという気がしますよ。
──今後、何か考えていることはありますか? 有働 とりあえずは、次のコレクションです。あとは、コレクション以外で一緒にお仕事ができたら、より良いものができるんじゃないかと感じます。 西原 コレクションの音楽は、長い時間をかけてつくれないんです。結局は、洋服がある程度あがっていないと、ショウで音楽が鳴って歩いているイメージがどうしてもでない。だから、どんなに早くても、2週間とか3週間前からの作業になってしまうんですよね。 それが、半年とか1年かけられれば、またちがう、おもしろいものができると思います。 有働 ファッションって、どうしても動きが早いんですよ。半年で次のあたらしいものを出していかなければいけない。だから、そういうルールを除外した“なにか”ができたらおもしろいですよね。 西原 ショートムービー的なロードムービーとかをつくりたいですね。でも、有働さんが旅するところに、ハンディカムを持っていくだけでできそうな気もします。 ──脚本は、やはり西原さんですね(笑)。 有働 お願いします。脚本通りやります!(笑) ──ありがとうございました。 『LIFE』 レーベル|UNPRIVATE ACOUSTICS 品番|UPRC-002 定価|2625円
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