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有働幸司氏(左)と西原健一郎氏
LOUNGE INTERVIEW
2010.02.03

西原健一郎 セカンドアルバム『LIFE』リリース記念

西原健一郎(音楽家)×有働幸司(FACTOTUM)対談(前編)

 
前作『Humming Jazz』が驚異的なセールスを記録し、“ジャジー・ヒップホップ時代”を切り拓く音楽家、西原健一郎氏。先日、待望のセカンドアルバム『LIFE』をリリースし、その内容は前作以上にクオリティの高い、良質ポップスのアルバムとなっている。その彼がコレクションの選曲をつとめるファッションブランド「FACTOTUM」。デニムに深い想いを込め、モードとリアルクローズを融合させた同ブランドのデザイナー有働幸司氏と初の対談がオウプナーズで実現した。

文=金子英史
写真=西原和恵

ふたりの見えない共通点とは

普段はコレクションの時期しか会えず、なかなかゆっくりと話をする機会がなかったというふたり。
音楽とファンション──。まったくちがう分野で活躍する彼らから、いったいどんな話がきけるのだろうか。

西原 ファッションショウが終わってしまうと、次に会うのは半年後みたいな感じですよね(笑)。

有働 だいたい3ヵ月後くらいですかね。

西原 ショウの最中は修羅場というか、そういう感じなので、なかなか落ち着いてお話を聞く機会がなかったので、今日はうれしいです。

有働 僕もうれしいです。

──ふたりの出会いは?

有働 もともとは「FACTOTUM」のショウの演出家に紹介されたんです。

西原 それまでにもいろいろなブランドの選曲はやっていたのですが、その仕事のなかで出会った演出家の方にご紹介いただいたんです。たしか、4シーズンか5シーズン目のときですよね。

有働 そうですね。約2年くらい前です。

──有働さんは、それまで西原さんの曲を聴いたことは?

有働 じつは聴いたことがなかったんです。だから、どんなひとがくるのかすこし不安でした。

──どのような感じでショウの選曲を決められているのですか?

有働 西原さんは、見た通り几帳面な方で(笑)、自分なりのポリシーやスタイルがきちんとあるひとだったので、意見のジャムセッションじゃないですけれど、ひとつのテーマについての僕の音楽のイメージに対して、西原さんからいろいろと提案していただいたり。

西原 デザイナーのひとことですべてが決まってしまうブランドが多いなか、とくにFACTOTUM固有な感じなんでしょうけれど、ファッションショウをつくる現場がかなり部活ノリというか──。みんなで意見を出してつくっていくんですよ。

──いろいろなひとの意見を聞きながらも、FACTOTUMらしさを毎回更新していく秘密は?

西原 人の意見を聞くとどうしてもブレが生じるので、方法論としてブレる危うさを感じるのです。でも、FACTOTUMはそれが絶対にブレずに進んでいますね。

有働幸司氏

有働 基本的に僕はひとが好きなんです。デザイナーが自分の世界にヴァイブを合わせてもらう進め方もありますが、僕の場合はジャムセッションというか、各パートのひとがやりはじめたら、みんなでそれに合わせて、ひとつのカタチにするんです。それで、自分が思っていた以上のものができあがることが多いんですよ。もちろん、その逆のパターンもありますが。でも、それ以上に新しいモノが生まれる瞬間は、すごく刺激を受けますよね。

──西原さんは、有働さんとの仕事にどんな印象がありますか?

西原 まさに部活のような感じですね。ファッションショウの場合、世界観をどう代弁するかが選曲にかんしてのテーマですが、デザイナーに言われたことをそのままつくるのであれば、簡単な作業です。 でも、FACTOTUMは、みんなで意見を出し合うので、たまにそのなかで誰の意見が的を得ているかがわからないときがあるんです。最終的には、最初のところにもどる場合が多いんですけれどね。

有働 そうですよね。

西原 僕は、そこに有働さんの“鶴の一声”的なものがあるような気がしているんです。それがFACTOTUMっぽさにスゴく大切なことなんじゃないかと思いますね。

有働 最終的に“答え”は決まっているのですが、かなり寄り道をしますよね。今日は、僕らもやわらかく話していますが、ショウの2〜3週間前はお互いがギクシャクするくらい意見の交換があるんですよ。でも、もっとよくしていきたいとか、上を目指すには仕方のないことだと思っています。

音楽で洋服をつくっているひとならではの発想

──西原さんの新作『LIFE』。有働さんは聴かれましたか?

西原 それがまだおわたしできていなかったんです。今回のアルバムはジャジーなヒップホップ仕立てですが、有働さんがじつはヒップホップがあまり好きじゃないという情報があって(笑)。

有働 いえいえ! A Tribe Called QuestとかDe La Soulとかは聴いていましたよ。

西原 有働さんは、すごく音楽に詳しくて、例で出てくるものがいつもスゴいです。

有働 コレクションのテーマ自体がマニアックで、そこから掘り下げるから、西原さんに提案するのがいわゆるメジャー感のあるアーティストではないんですよ。そこから西原さんが広げていく感じなんです。 でも、そこのディスカッションがおもしろいんですよ。音楽的な部分は、僕より西原さんの方が深いですからね。僕は楽器もできないし、音楽的にも幅広くはないから、単純に自分の感じるままに西原さんにぶつけるので、それが難しいときがあるのかなという感じはしています。

西原 そういえば、以前、僕がジルサンダーのコートを着ていったときに、有働さんが「ジルサンダーを着ているから、今回はクラフトワークかと思った!」っておっしゃったんです。ファッションで音楽を連想しているところが、まさに音楽で洋服をつくっているひとならではの発想でおもしろかったですよ。ちなみに、こういうファッションはこんな音楽というのが、ほかにもあるんですか?

有働 いまはどうなんでしょうね(笑)。むかし、自分が学生のときは情報が少なかったので、NME(New Musical Express)やローリングストーンなど海外の音楽雑誌からの情報で、たとえばU2とか、ミュージシャンの着ている格好を真似するようなことがあって、当時はファッションと音楽の関係が直球だったような気がします。 でも、いまは音楽もファッションも情報が溢れているので、こういう音楽にはこのファッションという考えはないのかもしれないですね。

西原健一郎氏

西原 FACTOTUMのショウの音楽はストレートというより、最終的にちがう部分でつながっているものを出している気がするんです。前回は、インドのラビシャン ・カールのシタールの音を使ったのですが、普通にその音でインドを表現するのではなく、さらにギターアンプを通してざらついた質感をつくって、洋服の世界観を表現したんです。それが独特で、“いま”という感じを出せたと思うのですが、いかがですか?

有働 服も音楽もそうですけれど、昔の偉大なひとたちがそういうモノを生み出していて、僕らの仕事は、それらを自分たちがどう感じて発信していくかが大切だと思うんです。今回にかんしては、シタールの音だけでインドを表現できたかもしれない。でも、ギターアンプを通すことで、すごくストリート感だったり、“いま”を感じる音になったということが、さらに良いエネルギーになった気がするんです。

西原 でも、そのショウのとある批評があるのですが、その著者は「わかってない」と思いました。そのわかっていない部分が、今回のFACTOTUMのいちばん大切なところなんだと思いますよ。

ブレない“なにか”の可能性

有働 服も音楽もそうですけれど、業界のひとに受けるためのモノがあると思うんです。でも、リスナーとか、服を着てくれているファンだったり、そういうひとたちに向けてのメッセージも重要だと思うんです。そのバランスが難しいですね。

──あまりトガらせてしまうと、ファンがついてこれなくなるし、トガらせないと業界のひとが離れる、というのはたしかですよね。それはもちろん音楽にもあると思いますがいかがですか?

西原 音楽レーベル──個人的なCD単位でもそうですけれど、ブランドもレーベルもある程度ビジネスが成り立っていないと存在し得ない。それだとクリエイションとは逆のことを言っているように聞こえますよね。でも、そこにクリエイションのヒミツがあるような気がします。そのバランスがとれているからこそ、つくれるものがあると思うんですよ。

有働 すごく売れる服をつくるのは難しい。それは音楽も同じですよね。バランスとブレない“なにか”、そしてメッセージ性が重要なのかな。あとはセールス。こういう時代だからこそ、それらが重要だという感じはします。

西原 ちなみに、ブレない“なにか”は具体的にコトバで表れたりしていますか? たとえば、僕なら2枚のアルバムを聴くと、まったくちがうことをやったつもりなのに、なぜかブレが生じていないんです。でも、その感覚的な部分を言葉にするのは難しいんですよね。

有働 洋服にかんしていえば、自分の作品は、“自分が着たい”というのが第一なんです。着心地が良かったり、リアルさがあったり。それはキーにしているんですよ。でも、それだけならほかのブランドでもできるので、だからこそシーズンごとのテーマ性をつくって、あたらしいセンスを入れているんです。

西原 テーマ性の部分にブレない“なにか”という、共通した要素があるんでしょうね。

有働 言葉で言うとなかなか難しいですよね。 デニムがうちのメインなんですけど、そういうストリート感というか、どこにでも着ていけるような服をつくりたいと思っています。音楽はどうなんですか?

西原 ものづくりに共通していると思うのですが、“選択の繰り返し”というのがありますよね。それを積み重ねていくと、必ず自分らしくなる。FACTOTUMのモノづくりの場面では、それを強く感じます。要は些細なディテールの繰り返しが、大きなところでそのブレない“なにか”の可能性を生み出していく感じですかね。



『LIFE』
発売中
レーベル|UNPRIVATE ACOUSTICS
品番|UPRC-002
定価|2625円


01. Prelude
02. Power of Self feat. Substantial
03. Livinʼ The Life -remix- feat. Steph Pockets
04. Weather Overtone
05. Beautiful Things feat. Amanda Diva
06. Now I Know feat. Pismo
07. Mind Tourism
08. Brazilian Daydream
09. Waltz For Jazz Things feat. Gregg Green
10. Moon Child feat. Nina Vidal
11. Dawn
12. Life feat. Kissey



西原健一郎|NISHIHARA Kenichirou
1996年よりファッションショウの選曲をはじめ、以降東京コレクションやパリコレクションなど国内外にて多岐にわたるショウやイベントで音楽ディレクションを担当し現在にいたる。 ウェブサイトやCMなどの音楽制作や、サウンドインスタレーション、公共の報知音や環境音などの制作・プロデュースなどさまざまな分野に音や音楽を提案提供している。オリジナル音源としてはKai Alceとのスプリット12インチシングルやEndless Moon名義の2枚のアルバム、ファッションブランドYAB-YUMからソロミニアルバムなどをリリース。 2007年 アンプライベート株式会社を設立し、2008年 自社レーベルよりリリースした7インチシングル「Nebulosa」につづき、初のソロフルアルバム「Humming Jazz」を発表した。

http://www.waxpoetics.jp/blogs/nishihara/

有働幸司|UDO Koji
1971年生まれ。東京モード学園卒業後株式会社BEAMSに入社。退社後ロンドンに留学。帰国後、国内ブランドの立ち上げに参加。その後、独立し2004年よりFACTOTUM(ファクトタム)をスタートさせる。 FACTOTUMは、「デニムに対する深い思いと、モードとリアルクローズを融合すること。テーラード、ワーク、ミリタリーをベースにワードローブを展開。毎回、テーマとなる国を訪れ、そこで出会ったひとや風景、空気からインスパイアされた服つくり」をコンセプトとしている。

http//:www.factotum.jp
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