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![]() 有働幸司氏(左)と西原健一郎氏
西原健一郎 セカンドアルバム『LIFE』リリース記念 西原健一郎(音楽家)×有働幸司(FACTOTUM)対談(前編) 文=金子英史
写真=西原和恵
ふたりの見えない共通点とは
普段はコレクションの時期しか会えず、なかなかゆっくりと話をする機会がなかったというふたり。 音楽とファンション──。まったくちがう分野で活躍する彼らから、いったいどんな話がきけるのだろうか。 西原 ファッションショウが終わってしまうと、次に会うのは半年後みたいな感じですよね(笑)。 有働 だいたい3ヵ月後くらいですかね。 西原 ショウの最中は修羅場というか、そういう感じなので、なかなか落ち着いてお話を聞く機会がなかったので、今日はうれしいです。 有働 僕もうれしいです。 ──ふたりの出会いは? 有働 もともとは「FACTOTUM」のショウの演出家に紹介されたんです。 西原 それまでにもいろいろなブランドの選曲はやっていたのですが、その仕事のなかで出会った演出家の方にご紹介いただいたんです。たしか、4シーズンか5シーズン目のときですよね。 有働 そうですね。約2年くらい前です。 ──有働さんは、それまで西原さんの曲を聴いたことは? 有働 じつは聴いたことがなかったんです。だから、どんなひとがくるのかすこし不安でした。 ──どのような感じでショウの選曲を決められているのですか? 有働 西原さんは、見た通り几帳面な方で(笑)、自分なりのポリシーやスタイルがきちんとあるひとだったので、意見のジャムセッションじゃないですけれど、ひとつのテーマについての僕の音楽のイメージに対して、西原さんからいろいろと提案していただいたり。 西原 デザイナーのひとことですべてが決まってしまうブランドが多いなか、とくにFACTOTUM固有な感じなんでしょうけれど、ファッションショウをつくる現場がかなり部活ノリというか──。みんなで意見を出してつくっていくんですよ。 ──いろいろなひとの意見を聞きながらも、FACTOTUMらしさを毎回更新していく秘密は? 西原 人の意見を聞くとどうしてもブレが生じるので、方法論としてブレる危うさを感じるのです。でも、FACTOTUMはそれが絶対にブレずに進んでいますね。
有働 そうですよね。 西原 僕は、そこに有働さんの“鶴の一声”的なものがあるような気がしているんです。それがFACTOTUMっぽさにスゴく大切なことなんじゃないかと思いますね。 有働 最終的に“答え”は決まっているのですが、かなり寄り道をしますよね。今日は、僕らもやわらかく話していますが、ショウの2〜3週間前はお互いがギクシャクするくらい意見の交換があるんですよ。でも、もっとよくしていきたいとか、上を目指すには仕方のないことだと思っています。 音楽で洋服をつくっているひとならではの発想
──西原さんの新作『LIFE』。有働さんは聴かれましたか? 西原 それがまだおわたしできていなかったんです。今回のアルバムはジャジーなヒップホップ仕立てですが、有働さんがじつはヒップホップがあまり好きじゃないという情報があって(笑)。 有働 いえいえ! A Tribe Called QuestとかDe La Soulとかは聴いていましたよ。 西原 有働さんは、すごく音楽に詳しくて、例で出てくるものがいつもスゴいです。 有働 コレクションのテーマ自体がマニアックで、そこから掘り下げるから、西原さんに提案するのがいわゆるメジャー感のあるアーティストではないんですよ。そこから西原さんが広げていく感じなんです。 でも、そこのディスカッションがおもしろいんですよ。音楽的な部分は、僕より西原さんの方が深いですからね。僕は楽器もできないし、音楽的にも幅広くはないから、単純に自分の感じるままに西原さんにぶつけるので、それが難しいときがあるのかなという感じはしています。
西原 FACTOTUMのショウの音楽はストレートというより、最終的にちがう部分でつながっているものを出している気がするんです。前回は、インドのラビシャン ・カールのシタールの音を使ったのですが、普通にその音でインドを表現するのではなく、さらにギターアンプを通してざらついた質感をつくって、洋服の世界観を表現したんです。それが独特で、“いま”という感じを出せたと思うのですが、いかがですか? 有働 服も音楽もそうですけれど、昔の偉大なひとたちがそういうモノを生み出していて、僕らの仕事は、それらを自分たちがどう感じて発信していくかが大切だと思うんです。今回にかんしては、シタールの音だけでインドを表現できたかもしれない。でも、ギターアンプを通すことで、すごくストリート感だったり、“いま”を感じる音になったということが、さらに良いエネルギーになった気がするんです。 西原 でも、そのショウのとある批評があるのですが、その著者は「わかってない」と思いました。そのわかっていない部分が、今回のFACTOTUMのいちばん大切なところなんだと思いますよ。 ブレない“なにか”の可能性
有働 服も音楽もそうですけれど、業界のひとに受けるためのモノがあると思うんです。でも、リスナーとか、服を着てくれているファンだったり、そういうひとたちに向けてのメッセージも重要だと思うんです。そのバランスが難しいですね。 ──あまりトガらせてしまうと、ファンがついてこれなくなるし、トガらせないと業界のひとが離れる、というのはたしかですよね。それはもちろん音楽にもあると思いますがいかがですか? 西原 音楽レーベル──個人的なCD単位でもそうですけれど、ブランドもレーベルもある程度ビジネスが成り立っていないと存在し得ない。それだとクリエイションとは逆のことを言っているように聞こえますよね。でも、そこにクリエイションのヒミツがあるような気がします。そのバランスがとれているからこそ、つくれるものがあると思うんですよ。 有働 すごく売れる服をつくるのは難しい。それは音楽も同じですよね。バランスとブレない“なにか”、そしてメッセージ性が重要なのかな。あとはセールス。こういう時代だからこそ、それらが重要だという感じはします。 西原 ちなみに、ブレない“なにか”は具体的にコトバで表れたりしていますか? たとえば、僕なら2枚のアルバムを聴くと、まったくちがうことをやったつもりなのに、なぜかブレが生じていないんです。でも、その感覚的な部分を言葉にするのは難しいんですよね。 有働 洋服にかんしていえば、自分の作品は、“自分が着たい”というのが第一なんです。着心地が良かったり、リアルさがあったり。それはキーにしているんですよ。でも、それだけならほかのブランドでもできるので、だからこそシーズンごとのテーマ性をつくって、あたらしいセンスを入れているんです。 西原 テーマ性の部分にブレない“なにか”という、共通した要素があるんでしょうね。 有働 言葉で言うとなかなか難しいですよね。 デニムがうちのメインなんですけど、そういうストリート感というか、どこにでも着ていけるような服をつくりたいと思っています。音楽はどうなんですか? 西原 ものづくりに共通していると思うのですが、“選択の繰り返し”というのがありますよね。それを積み重ねていくと、必ず自分らしくなる。FACTOTUMのモノづくりの場面では、それを強く感じます。要は些細なディテールの繰り返しが、大きなところでそのブレない“なにか”の可能性を生み出していく感じですかね。 『LIFE』 発売中 レーベル|UNPRIVATE ACOUSTICS 品番|UPRC-002 定価|2625円
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