
2009.07.03
『Tai Rei Tei Rio (タイ・レイ・タイ・リオ)』 プロジェクト発表
高木正勝氏インタビュー 3 最終回
昨年10月のめぐろパーシモンホール、および12月の岩手県立美術館でのコンサート音源をもとに制作した、新作アルバム『Tai Rei Tei Rio(タイ・レイ・タイ・リオ)』をリリースする高木正勝氏。
北の草原や南の海からやってきた私たちの祖先に想いを馳せたときに見えてくる世界観を、ピアノ、パーカッション、コーラス、ジプシー・バイオリン、イーリアンパイプスなど多彩な編成で演奏したライブの音源を再構築して表現したこの新作には、収録楽曲にまつわる神話集がセットになって添えられている。
また7月4日(土)からは、この『タイ・レイ・タイ・リオ』をめぐるドキュメンタリーフィルム、『或る音楽』とオリジナル作品『Homicevalo』、『NIHITI』が全国公開される。
Text by OPENERS
Photo by JAMANDFIX
前回のインタビューでは、「ずっと抱えていた“モヤモヤ”ひも解いていくきっかけをつかめた、という予感がしたんです」と語っていた高木氏。インタビュー最終回では、全身全霊をささげて挑んだ今プロジェクトを通して、彼がなにを得たのか、踏み込んでいくことにした。
“なにかの型”にはまってしまってほしくなったんです
今回の『タイ・レイ・タイ・リオ』プロジェクトをかたちにしていくにあたっては、演奏者、照明、監督、デザイナーなど、すべのスタッフに対し、コンセプトだけ説明したという。
「単純にいうと守護霊とか、背後霊とか、そういった日本人なら分かるであろう存在のひとたち、が喜ぶようなことをしてほしい、と伝えたんです。それさえしてくれたら、あとはなにをやってもいい、と指示しました。だから全部お任せなんですよ。僕が唯一チェックしたのは、“本気度”だけです。たとえれば、お祭りをやっているようなものです。祭りで踊る型が合っていても、そこに精神がこもっていなければ意味がない。気合いだったりスピリットがちゃんと入っているか、っていうことだけなんです」
本当に伝えたいことはすべて、“ドーナツ”の真ん中に
前回のインタビューで、コンサートの音をそのままCDに録音してもすべてをあらわしきれないと語っていた高木氏。神話集や映画が、そのコンサートとCDの隔絶を補足する役割を果たしている。しかし、それらは補足関係を成しているだけではない。一緒になって“ドーナツ”の形状を成しているのだ。
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「神話集、CD、コンサート、映画といろんなフォーマットで発表はしますが、それらすべてはドーナツ状になっているんです。そして、“立ち上がって欲しいもの”、つまり本当に伝えたかったものは、そのドーナツの真ん中にあるのです。それらはいわば行間と一緒で、一切描いていないんですよ。そのもの自体を描こうとすると、嘘になってしまう――仏像の顔を描いてしまうような、神様の姿をものとして作るような感覚、とでも言うのでしょうか。“真ん中”になにかを書こうとすると自我が入り、本当に伝えたいこと、が崩壊する可能性が高いと思うにいたったんです」
そう語る彼は、ドーナツの真ん中にある、“立ち上がらせたいもの”が少しでも見えてくれるように、そのドアさえ開いてくれれば、と感じている。
「より真摯に、より正直にやればやるほど、“ドーナツ”ができてしまうんだな、と分かりました。本当に伝えたいこと、やりたいこと、は自発的に“立ち上がってくれるもの”であるはずなのに、どこまでいっても“立ち上げるための作品”しか作れないんですよね……」
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今まで10年間、頭からつぎはなれない“モヤモヤ”を目の前に“立ち上げるための”作品を作りつづけてきた高木氏だが、今回改めて「より正直にやると、確実に真ん中に穴があくんだな」と感じたのだという。“モヤモヤ”をひも解こう、物事の根源を知ろう、と真正面に向き合い「自分の考える音楽とはなにか」という問いを解き明かすことのみに集中して、結実した今回の『タイ・レイ・タイ・リオ』プロジェクト。今回のプロジェクトを通じて、そして10年間に及ぶ映像・音楽の制作活動を経て、アーティストとしても、高木正勝個人としてもいったん帰結したのだろう。
映画「或る音楽」より
とにかく、 普通に生活 したいんです
『タイ・レイ・タイ・リオ』を完成させた彼が今、たどりついた想いは「普通に生活したい」ということ。
「今、より田舎のほうに引越しをしようとしているんです。歩いて5分もいかないところに日本海がある、古民家に下見にいったんです。そうしてみると、“なにを思って今まで生活していたんだろう”って本当に分からなくなるんですよ。庭でぼけっとすごしてるだけで“何年振りにこんな感覚に出会っただろう”って思ったり。誰もいない海に行って時間をすごしたり」
その“普通の生活”をはじめてからの高木氏がいったいどんな作品を生み出すのか大変興味深いが、彼は「作らなくてよくなるかも知れませんけどね」と小さく笑う。その田舎で自ら井戸水を汲みとるような半自給自足の生活をし、多くの「なぜ? 」が分かってしまうからだ。
映画が公開される7月頃にはもう引越しているという高木氏。
新天地から、新たなフェイズにいたった高木正勝の作品を届けて欲しい。
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アルバムタイトル|Tai Rei Tei Rio(タイ・レイ・タイ・リオ)
アーティスト|高木正勝
Audio CD+収録楽曲にまつわる神話集「タイ・レイ・タイ・リオ紬記」(約150p)
神話集監修・編集:石倉敏明(多摩美術大学 芸術人類学研究所)
アート・ディレクション、デザイン|近藤一弥
発売元|エピファニーワークス
販売元|ブルース・インターアクションズ
価格|3000円
発売日|2009年6月17日
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ドキュメンタリー映画『或る音楽』
監督|友久陽志
出演|高木正勝ほか
配給|エピファニーワークス
7月4日(土)〜24日(金) 東京・渋谷ユーロスペース
7月18日(土)〜24日(金) 名古屋シネマテーク
にてレイトショー。ほか、全国順次公開
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同時上映 高木正勝オリジナル作品
『Homiĉevalo』『NIHITI』
「タイ・レイ・タイ・リオ」プロジェクト オフィシャルサイト
http://www.epiphanyworks.net/trtr/
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