
2009.06.24
『Tai Rei Tei Rio (タイ・レイ・タイ・リオ)』 プロジェクト発表
高木正勝氏インタビュー 2
昨年10月のめぐろパーシモンホール、および12月の岩手県立美術館でのコンサート音源をもとに制作した、新作アルバム『Tai Rei Tei Rio(タイ・レイ・タイ・リオ)』をリリースする高木正勝氏。
北の草原や南の海からやってきた私たちの祖先に想いを馳せたときに見えてくる世界観を、ピアノ、パーカッション、コーラス、ジプシー・バイオリン、イーリアンパイプスなど多彩な編成で演奏したライブの音源を再構築したこの新作には、収録楽曲にまつわる神話集がセットになって添えられている。
また7月4日(土)からは、この『タイ・レイ・タイ・リオ』をめぐるドキュメンタリーフィルム、『或る音楽』とオリジナル作品『Homicevalo』、『NIHITI』が全国公開される。
Text by OPENERS
Photo by JAMANDFIX
“なんとなく頭からとりついて離れないもの”が“目の前に見えてくれる”ようにと、10年間映像と音楽作品をつくってきたという高木氏が、“なぜ音楽を奏でるの”というところまで回帰し着手した『タイ・レイ・タイ・リオ』プロジェクト。
インタビュー第2回目の今回は、彼がどのようにしてこのプロジェクトを進めていったのかをお伝えする。
「自分は今までなにをやっていたんだ!?」と問いかけることになった事件
「時おなじくして、細胞を研究している方や多摩美術大学芸術人類学研究所の方など『なぜなんだ』を追及している人びととかかわる機会に恵まれたんです。そうして人類学や民族学と呼ばれる分野につながっていったり。
あと、世界中を旅したなかで自分が惹かれたものの“先”を知ろうとしたり……。そうやって今プロジェクトは進展していきました」。
物事の根源を知りたいという衝動が、今回のプロジェクトへとつながっていったわけだが、まずぶちあたったのが、日本人として日本の音楽や映像をつくりたいのに、自分が慣れ親しんできたピアノの音階、つまり西洋の音楽、のほうが日本古来の楽器の音階よりしっくりきてしまう、という事実だった。
「琴や三味線、琵琶などの、ちょっと“調子のズレた”音階との接点がうまく生み出せなかったんです。それに、沖縄やバリのように、何千年、何万年かけてつくってきたものがまだ残っているところに行くと、そこで鳴っている音の聴こえ方が今まで自分が音楽だと思っていたものと、まったく違うんですよ。音を“ポーン”と鳴らしたときに、その音がストレートに届くんです。遠くから聴こえてくるような気もするし、耳のなかまで音がそのままに入ってくるような感覚なんです」。
高木氏が愕然としたのは、伝統楽器のつまびく音色だけではなかった。実際にサハラ砂漠で現地の人びとが奏でる太鼓とギターのセッションに参加させてもらったときに、彼は決定的な衝撃を受けた。
高木氏が借りたギターで鳴らした音はプツンっと切れて、どこにも響かなかったのだ。現地のひとが奏でる、空とも大地とも振幅するような音と、自身の鳴らした「砂の中にストンと落ちて」しまったような音とのちがいを思い知らされた彼は、そこで自ら楽器を置いてしまった。その事件は彼に、「今まで自分はなにをやってきたんだ!?」という思いにいたらしめた。
「芸術の世界で創作をして生きてきたのに、なにもわかっていなかった、と思い知らされました。その半面、なんとなくそこに、ずっと抱えてきた“モヤモヤ”の答えがある気がしたんです。きっかけをつかめた、という予感がしました」。
そうして、高木正勝個人としての“モヤモヤ”のひも解きはかたちになっていった。
今作は、僕の“セカンドアルバム”です
「自分が思うところの音楽とはなにか、それ一本に集中したんです。『これでわからなかったら、終わりだぞ』というくらいの勢いでした」。
そのように全身全霊をささげて挑んだ今プロジェクトは、コンサート、そのCD、ビジュアルブック、ドキュメンタリー映画から成り立っているが、コンサートをCDというフォーマットに落とすと、音は変わってしまう。そのあたりの不安はなかったのだろうか。
「もちろんありますよ」と高木氏は即答する。
「コンサートそのものをCDなどで表すのは無理だと思うんです。音楽自体とか、照明自体とか、その“物”自体に対してなにかを感じた、思った、というより『見えないけど、あるよな、聴こえないけど聴こえるよな』っていうものが、確実にありますよね。録音できる音なんて“物”でしかなくて、それは嘘になってしまうと思うんです。僕はなんとか、その場にいないと感じられない気配、というものを出したかったんです」。
マイクでは録りきれないものをなんとか表現しようとした高木氏が参考にしたのは、“子守うた”だったという。
「だいたい今までは、前のアルバムを聴いてそれよりも一段上に上がれるように、とやってきたんです。そうやって“良しとする基準”があったんですが、それを一回とっぱらってしまって。自分が普通に楽器をさわっていたりうたっているときの感覚に一番近いものを聴いてもらいたい、というふうに意識しました。
頼りにしたのは“子守うた”です。お母さんが赤ちゃんを抱いて、“赤ちゃんを寝かす”という意味があって、本気で歌っている。その、お母さんと赤ちゃんだけで成り立っている世界をたまたま外から聞いてしまったような感じにしたかったんです。実際、そうやってできあがったものはほかのCDと比べると聴きにくいですけどね」。
苦笑しつつも、今はほかの作品よりもこれがとても自然に聴こえるという。
「『きっと、誰にもわからないだろうな』という思いで発表します。それは、デビューアルバムを出したときとものすごく近い感覚で、そういう意味でいえば、今作は自分のセカンドアルバムですね。『僕にしかわからないだろうな』という感覚を抱えて出すわけで、今回ほど不安なことはないんです」。
自身が思うところの音楽、それ一本に集中し、さらにコンサートでの“気配”をCDでできる限り表現しようと挑んだ高木氏。「今回ほど不安なことはない」という言葉に、逆に今作への期待を感じぜずにはいられない。
インタビュー最終回では、7月4日(土)から公開される
彼のドキュメンタリーフィルム『或る音楽』について、そして今後の意外なビジョンについておおくりします。
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アルバムタイトル|Tai Rei Tei Rio(タイ・レイ・タイ・リオ)
アーティスト|高木正勝
Audio CD+収録楽曲にまつわる神話集「タイ・レイ・タイ・リオ紬記」(約150p)
神話集監修・編集:石倉敏明(多摩美術大学 芸術人類学研究所)
アート・ディレクション、デザイン:近藤一弥
発売元|エピファニーワークス
販売元|ブルース・インターアクションズ
価格|3000円
発売日|2009年6月17日
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ドキュメンタリー映画『或る音楽』
監督|友久陽志
出演|高木正勝ほか
配給|エピファニーワークス
7月4日(土)〜24日(金) 東京・渋谷ユーロスペース
7月18日(土)〜24日(金) 名古屋シネマテーク
にてレイトショー。ほか、全国順次公開
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同時上映 高木正勝オリジナル作品
『Homiĉevalo』『NIHITI』
「タイ・レイ・タイ・リオ」プロジェクト オフィシャルサイト
http://www.epiphanyworks.net/trtr/
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