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2009.02.05

第40回 森山大道個展『北海道』(その4・最終回)

これまで3回にわたってお伝えしてきた森山大道さんとの対談も、今回が最終回。個展のほうも、いよいよ最終日の2月8日が迫ってきました。これまでもお伝えしてきたとおり、今回の北海道の写真が撮られたのはたしかに30年前です。しかし、セレクトもプリントも2008年に、2008年の森山さんによっておこなわれたということを考えると、明らかに作品としては過去のものではありません。まだ、見ていないという人は、ぜひそんな不思議な時間の感覚をも期待しつつ、足を運んでみてください。とにかく“ヤバい”ですから。(北村信彦)

北村信彦/HYSTERIC GLAMOUR
Photo by Jamandfix
edit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)

僕のなかで北海道はパリやニューヨークとおなじ異国だった

北村 それにしても、たまったものを、長い時間を経てあらためて見直すという作業は、不思議な作用をもたらしますね。目的もなく、予定表もない旅だったはずなのに、こうしてひとつのストーリーができちゃうんですから。森山さんは今回焼いていて、あらためて気づいたことはありましたか?

森山 単純に感じたのは、意外に人間を撮ってたんだな、ということです。そしてもうひとつ、30年前の北海道には人がたくさんいたんだな、とも思いました。いまは札幌みたいな大都市をのぞけば、本当に人がいないですから。行くと悲しくなっちゃうぐらいです。北村さんは北海道には行かれます?

北村 サーフィンをはじめる前はスノーボードをしによく行きましたし、去年は夏の襟裳岬に波乗りに行きました。僕のなかで北海道は、関東に住んでる感覚とは全然ちがうイメージの場所。こっちは海で、こっちは広大な草原みたいな風景を見ると、なんかすごく垢抜けてる感じを受けますね。

森山 緯度とかそういうものの関係で、やっぱり北ヨーロッパあたりの風景に似てますよね。

──30年前に北海道行きを決められた背景には、そういうことも影響していたんですか?

森山 子供のころから北海道は憧れの場所でしたね。それこそ、サッポロとかオタルとかハコダテという名前は、僕にとってパリやニューヨークとほとんどおなじ響きだったんです。昭和20年代の自分の日常とは全然ちがう世界を夢想してたし、そのころたまに目にするイラストや写真も外国的に見えていました。

いまの北海道でも過去の北海道でもない、森山大道の北海道

──北村さんは、ここに来る人に対して、今回の個展でどういうことを感じてほしいとお考えですか?

北村 とにもかくにも、ヤバいでしょ? という感じです。あと、30年のタイムラグがひとつのマジックになってるところに注目してほしいですね。説明しなくてもなにかを感じるとは思いますが、よくよく考えると、いまの北海道展でも過去の北海道展でもないんです。シャッターを押したのは30年前。でも暗室に入ったのは2008年。たぶんヴィンテージプリントの個展では、こうはならないと思うんです。



森山 僕自身、今回の暗室では、過去の時間を探そうと思ったわけではないから、やっぱり全然ちがうでしょうね。もちろん実際に写っているのは30年前ですが、あくまでいまの感覚で切り取りました。写真的時間っておもしろいもので、ちょっと引いて見ると、実際の時差なんてほとんど意味がないと感じます。要するに、いつ撮ったものでも、それは過去と未来をつないでいく接点として作用する。懐かしいと思える写真であっても、じつは懐かしいだけじゃなく、その向こう側がおもしろいんですよ。

北村 そうですね。たしかに今回ここに写っているのは30年前の北海道だし、30年前の人なんだけど、いつの時代なのかよくわからないですよね。とくに森山さんの写真の場合、森山さんの時代みたいなものを感じます。いまの作品も90年代の作品も70年代の作品も、いい意味でおなじ時代に見えるんですよ。

森山 そうかもしれませんね。

北村 あと、いつも思うんですが、撮られた時代に関係なく森山さんの乗り物の写真を見るとドキッとするんです。船にしても列車にしても飛行機にしても、なんか事件が起きてるような感じがする。今回はその乗り物もたくさん出てきますね。なにか乗り物に思い入れはあるんですか?


森山 北海道のことでいえば、いまでこそ僕も、なんの疑問もなく飛行機で行っちゃいますが、当時は絶対飛行機なんかで行くところじゃないと思ってましたね。連絡船で行くもんだ、と。深夜12時の上野発に乗って朝4時に津軽に着く。で、札幌には朝10時に着くわけです。

北村 同じ距離でもずいぶん遠く感じたでしょうね。

森山 そう、ずいぶん遠いところでしたね。

(了)


森山大道個展『北海道』
2009年2月8日(日)まで開催中
ラットホールギャラリー
12:00-20:00(月曜休)

RAT HOLE GALLERY & BOOKS
東京都港区南青山5-5-3-B1
Tel. 03-6419-3581
http://www.ratholegallery.com
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KITAMURA Nobuhiko/北村信彦
 


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