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2009.03.25

第42回 ロー・アスリッジ個展『グッドナイトフラワーズ』(その2)

前回に引きつづき、ロー・アスリッジ氏におこなったインタビューの模様をお伝えします。アスリッジ氏は、大判カメラを使い、風景や生物、ポートレートなど古典的なモチーフを撮った作品で評価の高い作家ですが、その美しい写真は、フォトジェニックでありながら二重三重の意味を内包しており、見る者になんども写真の前に立ち返ることを要求する力をもっています。その不思議な力はどこからやってくるのか? そうしたことを探るべく、彼の写真に対する姿勢や手法、彼の抱く写真観などを聞いてみました。

Photo by Jamandfix
edit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)

私の写真はシャッターを切った瞬間に完結するものではない

──先ほど(※前回)花の写真についてはもともとカラーで撮ったものを、今回あえてモノクロで焼いたとおっしゃいましたが、はじめからモノクロと決めて撮ることもあるんですか?

アスリッジ いいえ、はじめからモノクロで撮るという考えはありません。基本的にはいつもカラーで撮ります。ただ焼く段階でモノクロにしてみたら新しい作品になったということです。ある作品をべつのものに変換しようと思ったとき、色を抜くというのが一番シンプルな方法ですから。


──馬の作品もそうですか?

アスリッジ あれもそうです。花の写真で最初に試してみて、すごく新鮮な作品になったので、馬の写真も色を抜いてみたんです。さっき(※前回)もお話しましたが、私は自分の写真を、シャッターを切った瞬間に完結するものだとは考えていません。過去に撮った写真でも、発表するときにはつねに今どう見せれば新しいのかを考えて使います。言ってみれば私の写真はウィスキーを作るとき、新しい樽に必ず前のタネを入れるようなものです。フランスで言えばバゲットでしょうか。彼らも代々おなじイーストを400年以上も絶やさず使いつづけています。もとのタネをけっして一度きりにしないんです。それとおなじように私の作品も終わることはありません。つねに自分の未来に影響を与えつづけるのです。あるときふとプロジェクトありき、企画ありきで撮る写真は真実でないと感じ、今の方法にいたりました。

見た作品が、次の日もその次の日もついてくる感覚

──シャッターを切る瞬間は、どういうときに訪れますか?

アスリッジ 状況によります。いろいろ考えてシャッターを切ることもあれば、インスピレーションに任せるときもあります。それに大切なことは、シャッターを押すときだけインスピレーションを働かせるわけではないということです。たとえばカラー写真をモノクロに変えてしまおうというのも、ひとつのインスピレーションです。ですから、私は必ずしもアンリ・カルティエ・ブレッソンのような決定的瞬間を捕えようとしているわけではないということです。

──写真を撮るときに、なにかこれだけは決めているというルールはありますか?

アスリッジ それはとても難しい質問ですね。というのも、私はつねに新しいことに挑戦しているからです。強いて言うならば、なにかにこだわり過ぎないこと。それが唯一のルールでしょうか。



──では、写真を通して訴えたいものはなんですか?

アスリッジ (しばらく考え込んだ後)たとえば私がほかのアーティストのアートショーに行ったとき、なにがもっとも楽しみかというと、その作品が自分についてきて、次の日もついてきて、その次の日もついてくるという感覚です。ですから、私の作品も見たひとにとってそうであってほしいと思います。明確なものを訴えるというよりは、なにかミステリアスな雰囲気を見たひとに残せたら、それが一番幸せです。見たひとが次の日にふと「あれは一体なんだったんだろう?」と思ってくれたらうれしいですね。

──そういう意味では、今回の花の写真などは、そういう不思議な感覚を覚えます。花柄のバックに溶け込むように花があり、しかも、近づいて見るとピントが合っていなくて、少し離れるとピントが合う。そして背景から花だけが浮き上がっているように見えます。とても印象的ですね。

アスリッジ ありがとうございます。花の写真を花柄のバックで撮ったのは、ちょっとマチスを意識してみたんです(笑)。ピントに関しては、狙ってやったことではなく、4×5のピンホールカメラを使ったらこうなったんです。そう、それはいわば“意図と偶然の幸福な出会い”なんですよ。

(了)
ロー・アスリッジ個展『グッドナイトフラワーズ』
2009年4月26日(日)まで開催中
ラットホールギャラリー
12:00〜20:00(月曜休)

RAT HOLE GALLERY & BOOKS
東京都港区南青山5-5-3-B1
Tel. 03-6419-3581
http://www.ratholegallery.com
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