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2009.09.14

野宮真貴×菊地成孔×湯山玲子

ビューティフル・ピープルたちの鼎談(中編)

 
「“ブリジット・バルドー”は、オンナのモノ」

 
音楽あり、ファッションあり、見どころ満載の野宮真貴さんの『リサイタル』も、今年でついに3回目を迎えます。
野宮真貴さんと音楽監督の菊地成孔さん、そしてプロデューサーの湯山玲子さんの3人による“オトナ呑み”鼎談。
前編にひきつづき、話は“ブリジット・バルドー”とギャルファッション文化の接点、そして今回の『リサイタル』の音楽性まで広がります──。

まとめ=金子英史
Photo by Jamandfix
撮影協力=NIGHTFLY(Tel. 03-3481-6009)

「ラメ」 「フリル」 「ハイヒール」党の旗揚げ!

湯山 今回のリサイタルは、野宮さんの原点回帰ともいえるんです。オンナのヒトっていろんなオンナになりたい願望があるじゃないですか? その欲望を実現できるのは、いまの日本では野宮真貴のみ、ですから。

菊地 いまバルドーが好きなオトコって、そんなにいないと思うんですよね(笑)。あれは完全にオンナのモノなんですよ。

湯山 そうね。ギャルファッションのお手本は、バルドーですからね。109の元祖カリスマ店員で、いまは「KariAng」というブランドをやっている森本容子さんもそう言ってました。と、同時に渋谷系のピチカート・ファイヴの野宮真貴もギャルのお手本だったという事実もあったんですよ。洋画ファンにはまったく預かりしらぬところで、109のギャルとゴダールのバルドーが結託しているという……。

菊地 そう、野宮さんは雑誌の『小悪魔ageha』に出るべきだと思います! ぜんぜん違和感ないよ! ギャルは、もっと野宮さんをいっぱい見た方がいいと思うんですけどね。

湯山 野宮真貴は、やっていることはギャルですよね。いまって、ウィッグで“盛る”ってあるじゃないですか? あれって、バルドーであり、野宮真貴でしょ。

野宮 ギャルはバルドーが好きですよね。雑誌の『グラマラス』とかでバルドーを特集するじゃないですか? ただ読者は映画は観ていないかもしれないですね。でも、バルドーのメイクやヘアスタイルには反応するんでしょうね、きっと。

菊地 ハリウッド・コスチューム史みたいな本を読むと、グレタ・ガルボみたいな部分からはじまるんですけれど、いまはあまりとり上げられないひともいるじゃないですか。キャサリーン・ヘップバーンみたいな知的代表みたいなひともいるけれど、ソッチに行こうと思うヒトはあまりいないですよね。 でも、その流れでバルドーが入ってくるのであれば、ギャルは野宮さんをもっと観察していいと思うんですよね。リスペクトするというか。べつに野宮さんがいまふうギャルの“盛り”メイクをやっているワケじゃないけれど、形状としてはおなじですから。

野宮 たぶん、彼女たちの好きな要素がいっぱい入っていると思いますね。

菊地 入っていますよ! 彼女たちがどうやって歳をとっていくのかというプロセスも、「野宮さんみたくなればいいんだ」って思うようになればいいのにと思いますね。

湯山 ギャルのもっているファッション要素を因数分解すると、「フリル」「ラメ」とかのヒカリもの、そして「ヒール」ということになる。夢々しいドールハウスから出てきたようなアイテム。 これらは、オンナの“三種の神器”みたいな感じで、ドラッグクイーンのひとたちまでの共通センスになっている。今後、どんなに時代が進んで文化のありようがかわっても、この種のものは何回も復活して出てくるんでしょうね。オンナはそれらを手放せない。
しかも、いまではそれらをオトコたちも横目で見てうらやましがっている感じすらあるでしょ。だから、今回のリサイタルはそれらの存在証明だったりするんですよね。政治活動的にすると、「ラメ」「フリル」「ハイヒール」党の旗揚げみたいな感じですよ。

バルドーの映画を観て、ムラムラくるのは、いいトコのお嬢さん

菊地 ポリティカルにいうと、ギャル文化が、ゲイ文化とはくっつかないじゃないですか。でも、アイテムだけとったらすごく近い。近いというかおなじじゃないですか? スピリット的にはちがうのかもしれないけれど。野宮さん、今度、新宿2丁目ツアーに行くけど、そこは票田じゃないですか? しかも大票田。
アイテムがおなじだからこそ、こんどはギャルにも飛び込んだほうがいいと思うんです。だからこそ、『小悪魔アゲハ』に出た方がいいと思うんですけれど。ただ、ギャルは安上がりにいくという部分があるんですよ。『小悪魔ageha』の編集長のインタビューを読んだときに、ボクは感動したんですけれど、読者目線を失わないために生活水準を上げないって言っているんですよね。どんなに儲かっても絶対上げないって。

湯山 年収200万〜300万の世界ですよね。

菊地 その世界を守って、メイクのコトとかを考えないと、読者から離れちゃう。

湯山 急にアイラインが“シャネル”になっちゃダメなんです。絶対にマツキヨ購入という。

菊地 そう! でも、やがては「agehaのアガリは野宮さんにある」という発想になるはずなんですよ。

湯山 年収200万のひとが洗練されると、将来的には野宮さんになるということですよね。野宮さんって、もちろんセレブ受けもしているんだけれど、もともとロッカーでもあるし、やっぱりストリート感があるんですよね。

菊地 絶対ある! 湯山さんのほうがずっとお嬢さま感がありますよ(笑)! だって、バルドーの映画を観て、ムラムラくるのっていいトコのお嬢さんじゃないですか? 野宮さんはストリート感があるし、ロックも同様かもしれないけれど、やっぱり街の女のコという、かんじがあるんですよね。

湯山 なるほど。ウラのファッションアイコンシリーズのような感じで、モッズのオンナなどもやったら面白いかもしれないね。『さらば青春の光』に出てくる、おかっぱ頭のガールフレンド。ああいう女の子もカッコいいんですよ。青春映画の端役として出てくるひとたち。まさに裏『ビューティフル ピープル』ですよね。
ちなみに今回の『ビューティフル ピープル』というタイトルは野宮さんがつけたんだけれど、なかなか、いいんですよ。英語の語感で“ビューティフル ピープル”っていうと、じつはヤバめなイメージもあるんです。ヒッピーあがりでずっと遊んでいて、いつもハッピー、みたいな感じのひとたちのことをそう言ったりするんです。「アイツはイっちゃっている」みたいなかんじの意味でもあるらしく、だからそれもいいかなと思ったんですよね。

日本人では数少ないエレクトロのボーカル入りという感じ

菊地 “エレガント ピープル”とか、慣用句がいっぱいありますけれどね。どうですか、リサイタルの見どころ的には? 「いっぱい来てください」のようなことを言わないとダメなわけでしょ(笑)。

湯山 そうそう(笑)。

菊地 今回は、3回目ですけれど、1回目は僕はゲストで、2回目は音楽監督というかたちで、3回目はまた継続してかかわることになりましたけれど。前回までのコンテンツが、スパンクハッピー、野宮さんのソロ、書き下ろし新曲、ピチカート時代の曲という構成だったのですが、今回はスパンクハッピーがなしで、ピチカートもそこそこで、野宮さんのソロと、なるべく一曲以上オリジナルをやろうということなんですよね。元“futon”のモモコモーションさんと一緒にエレクトロな感じのトータルサウンドをやるんですけれど。

湯山 じつは今回、音楽の比重が大きいんですよ。

野宮 バンドも入りますからね。だから、今回は寂しくないんです(笑)。もともとバンド出身なので、後ろにメンバーがいるというのは心強い。

菊地 いままでは90年代の名残というか、ピチカートの名残でけっこうオシャレなサウンドもあったけれど、モモコさんの導入で、よりクラブなイメージのエレクトロ・ミュージック色が濃強くなったんです。日本人では数少ないエレクトロのボーカル入りというかんじなんですけど、わかりやすくいうと“レディ・ガガ”とか、マニアック的には“ゴールドフラップ”のようなかんじですかね。ああいったサウンドって、日本人ではありそうでないですから。

湯山 菊地さんの音楽史のなかでエレクトロ・ミュージックって、たとえばレディ・ガガは以前から話に出てきてますけど、どんな感じを受けているんですか?

菊地 エレクトロは、もう何回目かの周期ですよね。はじまったときはまちがいなくテクノだから、『ナイロン100%』なわけです。しかも、野宮さんはそのオールドスクーラーで、テクノって言いはじめたころに、シンセがピコピコしている曲の歌を歌っている最初のひとですから。

野宮 私のデビューアルバムは“テクノ歌謡”というジャンルでしたから(笑)。

菊地 テクノ歌謡って言葉がでてきたのは、90年代だからね。

湯山 モモコちゃんから送られてきた曲は、テクノ歌謡っぽいんですよ(笑)。

野宮 そうかも。すごくメロディーがいい! 今回は新しい音を届けられるのがうれしいですね。

湯山 テクノ歌謡への原点帰りですね。



菊地 歌詞の世界も良くて、「マリアのおやゆび」という曲があるんだけど、ちょっといいですよね。タイトルが、『ガロ』っぽい(笑)。そういえば、『ガロ』って長い歴史のなかで、80年代にはテクノな時代があったんですよ。奥平イラや鴨沢祐とかの。

野宮 私は、80年代に『ガロ』を知ったかもしれない。

菊地 80年代の『ガロ』のほうが部数は出ていたんじゃないですか? 蛭子能収とか根本敬の時代でしょ? あのころの『ガロ』はみんな読んでましたよ。

野宮 すごくなつかしい!

菊地 藤原カムイとか、読んでました。

湯山 いまや、キャラクターデザインのほうで有名な方。

菊地 そういえば、レディ・ガガって、アートスクール出身だから全然ショウビズをやっている意識じゃないらしいんです。彼女のインタビューを読んだんですが、「自分はアートをやっていて社会通念を解放したい」と。意外といない線なんですよね。日本でいうと誰かな、浜崎あゆみもちがうでしょ。MEGとかパフュームもちょっとちがうじゃないですか。ふたりはアイドルだっていうかんじが残っているし。アイドルでもない、もっとオトナなオンナでエレクトロを歌っているひとって日本にはいないから、野宮さんしかいないですよ! 最近、オトナになるとなんだかみんなジャズなんですよね。35歳を過ぎるとジャズがやりたくなるって、ジャズをなんだと思っているんだ! ってね(笑)。「アガってきたからジャズだ」みたいな……。

野宮 そうなんです。ソロになって、急にナチュラル思考になったりして……。それだけは避けたかった。

菊地 ボサノヴァとかジャズ、アーシーなフォークをやるとかね。

野宮さんの同世代の歌手ってダレですか?

湯山 でも、(野宮さんと)カラオケに行くとね、やっぱり歌がウマいんですよ。

菊地 歌はうまいですよ!

野宮 だって、歌手だもん!(笑)

湯山 そりゃそうだけれどさ(笑)。

菊地 歌手のなかでもウマいんですよ。

野宮 そんなことないですよ。

湯山 聴くと驚くと思いますよ、野宮さんのボサノヴァ。ボサノヴァって女性歌手がいきがちなんですよ。表現するのに無理がないし。でも、そっちにはいかないんですよね。なんでジャズにいかなかったの? 歌手としてはやっぱり通過儀礼なんじゃないですか? 自分の“ノド”を聴かせられるし。

菊地 アメリカのリッキー・リー・ジョーンズとか、もともとポップスだったヒトがあがってジャズのいいアルバムを出すとか。

湯山 そんなかんじのね。

野宮 私アドリブきかないですから……。

湯山 自分でも聴かなかったの? ジャズ?

野宮 聴かなかったですね。

菊地 野宮さんにはぜんぜん必要ないですよ。野宮さんの同世代の歌手って誰になるんですか?

野宮 じつは昨日もその話になったんですけれど、これがいないんですよ。というか、いたけどいなくなっちゃった(笑)。

湯山 演歌歌手だと、いるんだけれどね。伍代夏子とか。

菊地 演歌はね、一生歌えるから。でも、同世代の方は観ないですね。演歌以外で現役感があるひと。

湯山 いないですね。けれど、野宮さんの同世代は、女優がけっこう豊作。浅野ゆう子、川島なお美、黒木瞳……。

野宮 女優さんって、ホント、いまでもきれいですよね。

菊地 でも、歌手では現役バリバリの方いないですね、野宮さんだけですね。

湯山 阿川泰子はジャズですけれど、もうちょっと上ですよね。わたし、ほんと好きなんですよね、あのひとの声。



菊地 あのひとすごいですよ。あらゆるものの元祖ですよ。日本の元祖スムースジャズだし、いい声ですよね。

湯山 文学座の研究生だったんだよね。のし上がっていっちゃったというか。

菊地 “Miss A”という変名で、ハウスのユニットもやっているんですけれど、あれは名作ですね。

湯山 私も持っている。Lowdownとかのハウスバージョンとか。

菊地 ヤン(富田)さんがやっているんですよね。あれはいいですよ。野宮さん、ああいうのをやろうよ!クラブのかんじで、アップリフティングなハウスで、野宮さんの歌というのも、いまやちょっと前のかんじがあるじゃないですか?
やっぱりエレクトロですよ。だから今回、それはすごくいいと思いました。

野宮 私、普段あまり音楽を聴かないから、あたらしい音楽もあまり知らない。

菊地 それ、ぶっちゃけじゃないですか!(笑)

野宮 DJもたまにやるんですけど、それも家にあるCDを“掘って”ます。

湯山 このひとのDJすごくいいのよ! 変な曲をもっているんですよ。

野宮 菊地さんにゴールドフラップを教えてもらって、すごくハマっちゃっいました。

菊地 いまちょうどね80'sリバイバルですからね。ゴールドフラップは、そんなに80'sなかんじじゃないんですけれど。

野宮 グラムロック的というか、そこもいい。

ナチュラル・ボーン・グラマラス!

湯山 野宮さんがロックのなかでもグラムにハマったのは、意外なんですけれど。私とほぼ同世代じゃない? 私はプログレとかにいったんですよね。

野宮 頭いい系の音楽ですね。

湯山 でも、そのときにグラムにハマるってすごいと思う。そのときグラムだったからこそ、いまのアナタがいる。

野宮 ラメとハイヒールと、キラキラなかんじね。

湯山 そう!

菊地 ゲイリー・グリッターとか。

野宮 そうそう!(笑)

菊地 ロクでもないですよ!(笑)。キラキラしているだけですからね。まあ、それがグラマラスということなんだろうけれど、いまに通じるものがありますね。

野宮 当時は子どもだったけれど、いまでもずっと好きですからね。

湯山 だからナチュラル・ボーン・グラマラスね!



菊地 今回はそれが無理なく出ると思うんです。トラックがエレクトロだから。野宮さんは、「セレブでしょ!」という感じでギャルと断絶というよりも、もともとグラムロックが好きでグラマラスなんだっていう感じを出したほうがいいと思いますね。

湯山 いい意味で下世話なかんじが音で召還されるといいですね。

菊地 それはあります。あとは、歌がすごくうまいよね。

野宮 ぜんぜん、うまくならないんですよ。

菊地 要するに、ソウルディーバ的なうまさと関係がないだけですよ。いまって、歌い上げるのがうまいとみんなが思っているじゃないですか。どんな素人番組でもソウルというか、黒人系の流れの音楽を歌い上げて、コブシもまわって声量があると、歌がうまいって言われるけれど、それだけが歌唱力じゃないですからね。 野宮さんは音程が正確だし、声質も均一だし、素晴らしいですよ。




野宮真貴リサイタルvol.3『Beautiful People』

主演・衣装プラン│野宮真貴

演出・構成・美術│林巻子(ロマンチカ)
音楽監督│キクチモモコ(菊地成孔+momokomotion)
衣装│丸山敬太(ケイタマルヤマ トウキョウ パリス)
振付│横町慶子(ロマンチカ)

開催日時│2009年9月22日(火・祝)
マチネ 開場|13:30  開演|14:00(追加公演)
ソワレ 開場|18:30 開演|19:00

会場│恵比寿ザ・ガーデンホール
料金│チケット料金7350円(全席指定)
チケット|
チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード331-206)
ローソンチケット 0570-084-003(Lコード74813)
イープラス
CNプレイガイド 0570-08-9999

主催|ホットスタッフ・プロモーション
企画制作|ロードアンドスカイオーガニゼイション/HOU71
特別協賛|恵比寿ガーデンプレイス株式会社
協賛|ALMACREATIONS
問い合わせ|ホットスタッフ・プロモーション
Tel. 03-5720-9999
(24時間音声案内 *オペレーター対応時間……平日16:00〜19:00)

http://www.missmakinomiya.com/special/
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