世のなかにはさまざまな映画があると同時に、さまざまな映画評論が存在するが、クルマに焦点を当ててみると、映画の意外な楽しみ方が見つかる。名作(迷作?)のなかから、DVDで観られる作品を中心に、クルマが活躍する映画をピックアップした『Cars in the Films』。語り手は、ジャーナリスト 小川フミオ氏と、OPENERS CARカテゴリー担当 山口幸一。
時として役者より雄弁に、重要な役割を果たしている自動車。そのなかでも、とりわけマッチしていると小川氏が語る「コメディ篇」を第一回としてお送りする。
『ナイト・オン・ザ・プラネット』山口幸一推薦
国ごとの文化的背景を感じさせるクルマ選び
山口 クルマが印象的だった作品で僕がまっさきに思い出すのは、ジム・ジャームッシュ監督作品『ナイト オン ザ プラネット』(1991年)です。特徴は、オムニバス形式で、ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキを舞台に、それぞれの都市で、タクシードライバーとその乗客のいっときだけの関係を描いています。
小川 ウィンドシールドごしに車内でのドライバーと乗客を見せるので、ほとんどつねに俳優のアップ。表情の演技ですね。
山口 出てくるクルマは、ロサンゼルスではシボレー カプリース(ワゴン)のタクシーキャブ、ニューヨークでは
カプリース(セダン)のタクシーキャブ、パリは
プジョー 504、ローマは
フィアット 128、ヘルシンキが
ボルボ 144。その国のクルマ文化を感じさせる選びですね。
小川 あれはいいですね。パリもいいですよね。ベアトリス・ダルが盲目の娼婦なのかな、だんだん、ドライバーとの関係が妙に煮詰まっていく展開は、狭い車内空間という設定を上手に活かしています。
山口 東京編も当初は予定にあったとか。
小川 それは観たかったですね。だれが出たでしょう。ジャームッシュはその前の年(1990年)に『ミステリートレイン』を撮っているから、出演した永瀬正敏がまた選ばれたかな。