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Ferrari FF|フェラーリ FF CAR FEATURES
2011.02.23

Ferrari FF|フェラーリ FF
History of Shooting Brake

フェラーリ FF誕生から見る粋の系譜

 
フェラーリがあらたなフラッグシップとして投入した「FF」。フェラーリ初の4WDモデルであることで話題だが、それ以上に物議を醸し出しているのが、そのデザイン。歴代のフェラーリとは一線を画す、いわゆるシューティングブレイクふうのデザインを採用したからだ。なぜ、いまシューティングブレイクなのだろうか? では、そもそもシューティングブレイクとは何なのだろうか? 過去の名車を振り返りながら考えたい。
 
文=松尾 大
 

馬車の時代から

シューティングブレイクは、もともと自動車発明以前のイギリスですでに用いられていた言葉で、狩りに行くために使う馬車を指すものだった。運転手と猟場の案内役が前席におさまり、後席では横向きの対面式座席に狩猟者が乗り、狩猟に使用する犬や銃、そして射とめた獲物を収納しやすいような形状だったという。
 

馬車にもちいられていた言葉がクルマにもあてられたものはほかにも、領主が領内を見まわるためのエステートや駅馬車=ステーションワゴンなどがあるのは周知だ。
 
1910年代にはいると自動車においても、おなじく狩猟を目的とした車両がつくられ、それをシューティングブレイクと呼ぶようになった。貴族、領主といった人びとのために、ロールス・ロイス シルバー・ゴーストやファントムII、ベントレー マークVI、あるいはアルヴィスTA14などのシューティングブレイクモデルが製造されたという記録がある。
 
その後、1950年代までは多くのメーカーからリリースされたシューティングブレークだが、もはや貴族が狩りをするために使うクルマではなく、マルチパーパスビークル的な意味合いが濃くなり、ピクニックに行くため、あるいはスポーツの道具を積むためのクルマとなった。シューティングブレイクという言葉さえも忘れられ、ステーションワゴンという言葉が一般的になった。
 

中興の祖? DBシリーズ

だが、1963年には代表的なシューティングブレイクが登場する。当時、アストンマーティンのオーナーであったデヴィッド・ブラウンがみずからの狩猟道具と犬を運ぶための1台がほしいと言いだしたのだ。
 
はたして、街を走るブラウンのDB5シューティングブレイクは注目され、顧客からの問い合わせが殺到し、英国のコーチビルダー、ハロルド・ラドフォード社によって10数台が生産されたようである。その後もDB6、DBSで少数ながらシューティングブレイクが製造されている。

 
じつは、シューティングブレイクと呼ばれるもののなかには4ドアボディをストレッチしたものもあり、厳密な定義はない。しかし、一般的にはスタイリッシュな2ドアクーペを狩りに用いるという発想から、2ドアクーペボディベースのほうが粋だと解される。ルーフを延長し、荷室を広げ、ほぼ直角に切り立ったテールゲートをそなえたものと認識されているだろう。とくに、このアストンマーティンや、リンクスがチューニングしたジャガーXJSベースのイベンターなどはシューティングブレークの代名詞的な存在で、貴族趣味、優雅さの象徴となっている。
 


 
DB5シューティングブレイクにインスパイアされたのか、60〜70年代には多くのシューティングブレイクが登場している。ボルボ P1800ES、ランボルギーニ エスパーダなどもそのあいだに生まれたシューティングブレイクふうのデザインを採用しているモデル。ランチアは同社の高性能モデルの象徴といえるHPE(ハイ・パフォーマンス・エステート)という言葉を75年に登場したベータの追加モデルにあたえている。
 
大衆車にも、シューティングブレイクふうモデルが生まれた。モーリス ミニ トラベラー/オースチン ミニ カントリーマンやフィアット 500 ジャルディニエラ、アルファロメオ アルファスッド ジャルディネッタなどはその代表格だろう。
 


 

実用ではない「粋」としてのシューティングブレイク

その後、シューティングブレイクふうのスタイリングは、時代のメインストリームとはならなかったが、絶えることなくいくつかのモデルが登場している。日本でも人気を博したアコード エアロデッキやオランダメイドのボルボである480ターボ、近年ではBMW Mクーペ/Z3クーペの独特のボディ形状が記憶にあたらしい。さらに、現行モデルとしては復活したミニ クラブマンやボルボC30などもその流れにあると言っていいだろう。
 
そんななかで登場したのがフェラーリFFだ。世界一美しいクーペをデザインしつづけてきたピニンファリーナが選択したシューティングブレイクを彷彿させるフォーム。大人4人がくつろげる空間やラゲッジスペースなどの実用的な面とフェラーリらしくないカタチが注目されるが、そのデザインの根底にあるのは、実用とは相反するものではないだろうか。
 
自動車発明前夜から連綿と受け継がれてきた、貴族の趣味のためのビークルとしてのシューティングブレイク。フェラーリというクルマの存在する理由を暗示したデザインがこのFFにはあらわれているのではないだろうか。
 
 
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