2010.09.22
Mercedes-Benz|メルセデス・ベンツ S 63 AMG
エココンシャスになったAMG(1)
燃費を25パーセント向上させ、装いは変えず独特な排気サウンドも保ったまま環境への配慮もほどこされたフラッグシップサルーン「メルセデス・ベンツ S63AMG」の新型をモータージャーナリスト 河村康彦が試乗した。
文=河村康彦
写真=メルセデス・ベンツ 日本
M156型後継。5461cc、8気筒DOHCのM157型エンジン
6.2リッターという大排気量にして7000rpm以上まで軽々とまわるスポーティなエンジンを2005年に完成させたとき、AMGの開発陣は「これは従来のようにメルセデス製ユニットをベースにチューニングしたのではなく、我われがいちから設計、開発をおこなった初のエンジン」と胸を張った。
しかし、それからわずか5年ほどで時代は大きくかわったようだ。AMGはここにきて、まだまだ若い大排気量の高回転、高出力型エンジンに代わるあらたな心臓を発表、パワフルなモデルをずらりとラインナップに並べるAMGですら「燃費を25パーセントも向上させる」という謳い文句を掲げた。今の時代”エコ”への配慮は欠かせなくなったということだろう。
じつはAMG自身がこの新ユニットを、これまでの代替バージョンと紹介しているわけではない。しかし、新エンジンの形式がM157型で前出6.2リッターエンジンのそれがM156型となれば、誰だって前者が後者の後継ユニットであると、そう連想をするにちがいない。
この2基のエンジンが新旧の関係にあると察するには決定的な根拠がある。それは、フラッグシップサルーンであるSクラスに設定されている8気筒モデルの心臓が、M156型からM157型へと換装されるという事柄だ。それにもかかわらず、その車両名称はどちらも「S63AMG」。つまりS63AMGというモデルはライフ途中で、「エンジンのみをフルモデルチェンジする」という、異例中の異例のリファインをおこなうということになるのだ。
この9月に正式なお披露目となるエンジンの基本スペックは、ツインターボつきの5,461ccで90度のVバンクをそなえる8気筒DOHCというもの。最高出力は544psでこれはM156型から19ps増加。一方で800Nmという最大トルクは170Nmもの増加で、こちらはターボエンジンらしく大幅な上乗せだ。
最高回転数18.5万rpmを誇る2基のターボチャージャー
ちなみに、「パフォーマンスパッケージング」というチューニングオプションが用意をされ、これを選択すると最大過給圧が1.0barから1.3barへと高められ、最高出力と最大トルクはそれぞれ571psと900Nmにまで引き上げられる。
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それにもかかわらず、CO2の排出量はヨーロッパの最新試験モード「NEDC」のデータで、M156型時代の347gから246g(パフォーマンスパッケージ車も同数値)へと大幅削減。これこそが、エンジン載せ換えを決断した最大の理由といってよいはずだ。
「パワーはあがって燃費は向上」は、昨今のヨーロッパ発プレミアムモデルにおけるトレンドなのである。直噴システムやアイドリングストップメカを新採用し、各部のフリクションを徹底削減。排気量をおとし常用域での燃料消費量を減少させつつ、必要なシーンでは過給機を利用して出力上乗せをおこなう――基本的にはそうしたセオリーに則って開発されたもの。
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M156型6.2リッター・エンジンにたいする排気量の減少分は747ccで、高精度な制御が可能なピエゾインジェクターをもちいるスプレーガイデッド式の直噴システムを採用し、最高回転数が18.5万rpmに達するというエキゾーストマニホールドにハウジングごと溶接された2基のターボチャージャーは、排出された直後の高エネルギーの排気ガスで効率良く駆動する。
そんなあらたな心臓を手に入れたS63AMGの走りは、あいかわらずなんとも逞しいものだった。
