YUGE|デザイナー 弓削 匠 インタビュー(前編)

YUGE|デザイナー 弓削 匠 インタビュー(前編)

FASHION

煌びやかな80年代への憧れを投影した服

「YUGE」 デザイナー 弓削 匠 インタビュー (前編)

鮮やかな色づかいに、どこかノスタルジックな気持ちにさせるプリント。その発想の源は、デザイナーの弓削 匠さんの小学校時代にあった。彼と共通の思い出を多数もつアーティスト・土岐麻子さんの新アルバム『乱反射ガール』とのかかわりもお話いただいた。

取材・文=津島千佳写真=原恵美子

ファッションと音楽のあたらしいかかわりかた

──2010年秋冬コレクションは「City Light Serenade」をテーマに掲げていますが、どのようなイメージでしょうか?

夜の光のもとに集まる恋人たち。テーマは先シーズンから土岐(麻子)ちゃんと一緒に考えていて、今回もそうですね。

──土岐さんの『乱反射ガール』のアートワークを手がけられたのも、その繋がりですか?

そうですね。彼女とは「シンガーとデザイナーのあたらしいかかわりをしていきたいね」って話をしてて。今回の“乱反射”って言葉が僕のなかで出てきて、そのイメージを彼女にキャッチコピーにしてもらったら、「解き放て、乱反射ガール」となったんですね。それを「YUGE」のコレクションに落とし込んで、さらにテーマの「City Light Serenade」が、彼女のアルバムの最後の曲になって結びついている。かかわりあいとしては、なかなかあたらしいと思うんですけど。

──たしかにファッションと音楽って近いけど、そこまでがっちりやるパターンは珍しいですよね。

彼女とは、少年少女時代の原体験も通ずるところがあって。お互い東京出身で、彼女のお父さん(土岐英史さん)は超有名なサックスプレイヤーで、うちの母親はファッションデザイナーをやっていて、いま、ふたりとも親から受け継いだ職業に就いているし。子どものとき見ていたものとか、見ていたものに対する感じ方とか、大人になってからその残像でクリエーションしていることとか、結構似ているんですよ、作品のつくり方が。

──弓削さんは、具体的にどのようなものに影響を受けているんでしょうか?

小学生のころから音楽もビジュアルも好きなのは、爽やかなもの。当時聴いていたのは山下達郎のアルバム『FOR YOU』だったり、大瀧詠一だったり、ビーチボーイズだったり。土岐ちゃんもおなじなんですよ。まぁ、彼女は山下達郎の後ろでサックス吹いてるお父さんを生で見ていた、とてつもなく羨ましいひとだけど(笑)。

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──「YUGE」の印象的なプリントは、弓削さんのなかで蓄積していたものを発露しているのでしょうか?

そうだと思う。80年代の原宿、表参道を子ども目線で見た感じ。イラストレーターの鈴木英人さんって知っていますか。あのひとの描く世界なんです、浮遊物が飛んでいるようなポップなイメージというか。当時の20代前半ぐらいの青年がやけにおとなに感じられて、カッコイイなと思っていて。小学生ながら大人への憧れがすごいありましたね。いま、ほぼそのときのイメージだけでクリエーションしてる、って言っても過言ではないかなぁ(笑)。

──弓削さん自身は高校生のころ、どういう格好をされていたんですか?

僕は、完全アメカジ。高校のときは紺ブレに紺のパンツで、ブレザーを金ボタンにしたり、ピンクのボタンダウンシャツを着たり、ラルフ ローレンのチェックのビニールバッグをもったり。学校が終わったら、リーバイスのXXとかバンズとか。ラルフ ローレンを一番着ていましたね、高校のころは。

──そういえば、弓削さんが「ラルフ ローレンになりたい」っておっしゃっている記事を読んだことがあります。

なりたいっすねー(笑)。なにをしてもラルフっていう世界観のつくり方がすばらしい。もちろん洋服は好きだけど、生活スタイル全般というか、生活を取り巻く文化的なものに興味があるんですよね。全体をクリエーションできないか、ずっと考えてる。

──将来的に「YUGE」をライフスタイルブランドに発展させたい?

目に見えるもの全部デザインしたい、ってのはあります。いましたいのは、音楽とファッションのあたらしいかかわりあいの延長線上に、演劇の要素もくわえた、ミュージカルではないあたらしいエンターテイメント。ファッションと音楽と演劇、それぞれの発表の場として成り立つようなものができないかなって。まぁ、難しいんですけど。

音楽にかかわっていきたいから、デザイナーの道を選んだ

──弓削さんのお母さまがデザイナーということは、小さいころからデザイナーになりたかったんですか?

全然。中学のころから音楽をやっていて、ミュージシャンになりたかったんですよ。でも、それで食べていくのは無理だなって。でも音楽が好きでかかわれる職業を考えたときに、洋服ならいけるんじゃないかと。母はデザイナーだし、ちょっと手伝ってみようかって。
それで母親の事務所で手伝いをしながら、舞台の衣装などをつくっていましたね。電撃ネットワークの衣装のつなぎとか、死ぬほどつくった(笑)。

──26歳で「YUGE」を立ち上げたきっかけは?

当時、初対面のひとでも、ひとめ見れば、サイズがぴったりわかったんです。それでシャツのパターンを引いて、縫って、1万円で売っていた(笑)。実家住まいだったし、月に15着もつくれば、生活できちゃって(笑)。そういうのが4年ほどつづいたんだけど、あるとき稼ぎたいなーと思って。ブランドを立ち上げたときから、たまたま大きなセレクトショップが買ってくれて、売り上げもこの10年間落ちることなくずっときています。母がデザイナーっていうのも恵まれていたし、ラッキーだと思う。

ユージュ(サンキエム・ヴィサージュ)
Tel. 03-5738-2045