きき酒師 チズコ│第4回 海外で日本酒はこんなふうに楽しまれています
Lounge
2015年4月28日

きき酒師 チズコ│第4回 海外で日本酒はこんなふうに楽しまれています

ニューヨーク・フレンチレストラン『Daniel』にて、日本酒ソムリエとして本領発揮!

第4回 海外で日本酒はこんなふうに楽しまれています

こんにちは。ニューヨークから、きき酒師のチズコです。ちょっとご無沙汰してしまいました。じつは、先日1年ぶりに日本へ帰国し、たくさんのおいしい日本酒、お食事を愉しんだのはもちろん、日本酒造りの現場にもあちこちお邪魔し、ますますどっぷり日本酒の魅力に惹きこまれ、日本酒への愛を再確認してニューヨークへ帰ってきました。

文=チズコPhoto by Kenji Takigamihttp://www.kenjitakigami.com/

日本酒は日本食に合わせるという概念を覆すためのプロジェクト

日本にいるときは、灯台下暗し……とでもいいましょうか、いつも当たり前にあると思っていた日本食文化が、一歩海の向こう側に渡ってみたら、いかにステキなものだったか、いまさらながら知った次第です。いままできちんと感謝せず口にしていた自分が恥ずかしい!

今日は、あらためて、私がきき酒師としてニューヨークでどんなことにチャレンジしているかをお話したいと思います。

少し前になりますが、ニューヨークを代表するフレンチレストラン『Daniel』にて、日本酒ソムリエとしてまたとない機会をいただきました。

そのプロジェクトというのは、石川県の食材や食文化を、ニューヨークを代表するフレンチレストランのシェフに知ってもらい、その食材を使用して彼らのアイデアとテクニックであらたな石川県の食文化の可能性を知ってもらう、というもの。このプロジェクトは、ニューヨークの人気日本食レストランの経営者やシェフをはじめ、Daniel Boulud氏、Jean George氏、David Bouley氏といった、日本食文化に造詣の深いフレンチやイタリアンの有名シェフなど、豪華な顔ぶれで運営され、サポートされている「五はんソサエティ」さんによって企画されました。

五はんソサエティ
http://www.gohansociety.org/

327_04_327

327_08_327

こちらでは、フレンチレストラン『Daniel』にて、石川県の食材を使ったお料理に合わせて、石川県のお酒をセレクトさせていただきました。グラスやカップのセレクトもしましたが、普段見ることはできない『Daniel』の裏側をのぞくことができる興奮と、絶対失敗してはならないという緊張が交錯……。ですが、ベテランサーバーの素早いサポートにより、あっという間に準備完了。さすが『Daniel』。スタッフの動きも無駄なくスムーズです。勉強になりました!

ワインの世界では、最初のアペタイザーには、さらりと飲み口の軽いものやスパークリングからスタート、そして徐々にメインコースになり、ボリュームに合わせ熟成感のあるフルボディタイプに移行しますよね。プライスでいくと、最初にお値段低めなものから、徐々に高価なものになることが多いですね。

でも日本酒の場合は、さらりと飲み口の軽いタイプは吟醸酒タイプになりますので、お値段で見ると、醸造過程の複雑性から、フルボディタイプの純米酒系よりもお値段は高め。お酒選びに困ったら、リストから吟醸酒タイプからスタートすることをお薦めします。飲み口が軽く、果物やお花を思わせる香りを最初の一杯に。もちろん、お酒を飲み慣れてきて、自分の好みのお酒の銘柄やタイプがわかってくると一概にはいえませんが、ワインの感覚でプライスだけ見て低いほうからスタートした場合、繊細なアペタイザーに、いきなりお米のボリュームがつん! のタイプを合わせかねません。

327_10_327

327_13_327

こちらでは、メインディッシュのひとつ、バターとクリームをたっぷり使ったお魚料理に燗酒をセレクトしたのですが、そのさいに燗酒用のおちょこがないことに当日になって気づき大慌て……。焦ってキッチンをうろうろしていたら、ステキなエスプレッソカップがずらりと並んでいるのを発見! 日本酒は日本食に合わせるという概念を覆すためのプロジェクトなのに、燗酒をサーブするのは陶器のおちょこしか考えていなかった自分にあらためて気づいた瞬間でした……。そして、無事(?)エスプレッソカップでサーブされた菊姫の山廃純米の燗は大好評でした。では、お料理をずらりとご覧ください(写真をクリックしてください)。

今回のこのすばらしいプロジェクトに参加することができて、利き酒師としてのこれからのあらたな可能性、そして世界中の食卓で楽しんでもらえる日本酒の未来が見えたような気がしました。

現在、日本国内での深刻な日本酒需要の低迷により、海外へ目を向ける日本酒メーカーが年々増えています。造り手のみなさんも「日本がダメなら海外へ」ではなく、あくまで、こうして海外で日本酒が楽しまれているようすを日本人のみなさんに知ってもらうことで、世界中の食材を味わうことができる日本国内でこそ、あたらしい日本酒ファンを増やし、いままでファンだった方には、さらなるあたらしい楽しみ方を見つけてほしいと思います。

SAKE DISCOVERIES
http://www.sakediscoveries.com/

           
Photo Gallery