ART|京都市内15会場を飾る『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭』スタート
LOUNGE / ART
2015年4月16日

ART|京都市内15会場を飾る『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭』スタート

ART|テーマは「TRIBEーあなたはどこにいるのか?」

京都市内15会場を飾る『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭』

国際的な写真フェスティバル『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭』が4月18日(土)から5月10日(日)まで開催される。今年のテーマは、「TRIBEーあなたはどこにいるのか?」。血や地域など生まれながらのつながりを超えたさまざまな「族」を映し出す14の写真展を15会場で展開。京都というもっとも日本的な町で、これらの写真を見る体験を通して、「私たち自身が、どこにいてなに属しているのか、またなに属そうとしているのか?」そういった問いかけが湧き上がってくるだろう。

Text by YATA VATTANI Yumiko

TRIBEという視点から発見する「個性」、「愛」と「人生」

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭

ギメ東洋美術館よりアポリネール・ル・バ 「日本の武者」、1864 © Guimet National Museum of Asian Arts

『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭』は、日本であまり紹介されてこなかったコレクションや、いま世界的に注目の作家をいち早く紹介、その展覧会を実現させる手腕を常に発揮してきた。3回目となる今年は、欧州で最大の東洋美術部門をもつフランス国立ギメ東洋美術館写真コレクションから、幕末に撮影された武士の肖像写真が世界初公開される。2月のパリメンズコレクションでコム デ ギャルソンとコラボレーションしたことでも反響を呼んだ南アフリカのアーティスト、ロジャー・バレンもこれだけの規模で展覧会を開くのは日本ではじめてのことだ。

ポール・スミスもファンと公言するコンゴの着倒れ男子ソサエティー“サプール”を捉えた、ボードワン・ムアンダの「コンゴの紳士たち、『サプール』の美学」展は見逃せない。ズボンの裾からチラリと覗く靴下の絶妙なカラーバランス、カラフルでご機嫌なそのスタイルは、暗い内戦や生活の苦しみをおしゃれパワーで吹き飛ばすコンゴ人の生きる知恵であり、ファッションの重要さを気づかせてくれる。

本フェスティバルの魅力のひとつは、世界的な観光都市である京都を開催地にしていることだ。通常は一般に公開されていない歴史的建造物、両足院(建仁寺内)や花洛庵(野口家住宅)も会場に含まれており、写真を鑑賞しながら、京都観光も楽しめる構成になっている。

京都市指定文化財である花洛庵(野口家住宅)でおこなわれるのは、パリ在住のヨシダ キミコ展。フィレンツェと京都の姉妹都市50周年記念事業として、グッチのサポートにより実現した。呉服商野口家の京友禅を表具師である宇佐美直八氏が大きな掛け軸に仕立てるなど、京の伝統工芸とのコラボレーションも必見だ。

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭ヨシダキミコ 「絵画(パオロ・ウッチェロ画サン・ロマーノの戦い)」、セルフポートレート、2010 ©Kimiko Yoshida

フォスコ・マライーニ展の会場は、祇園新橋伝統的建造物の風情ある建物。この夏からパスザバトン京都店になる、その大改装工事の前に、古い和風建物の持ち味を活かし、1950年代の日本の海女の姿を捉えたマライーニの写真と融合させた、スイス人デザイナー オリバー・フランツによる会場デザインが見ものだ。また、建築家・坂茂デザインの紙管パビリオンが、京都市役所前に出現。マルティン・グシンデ『フエゴ諸島諸先住民の魂――セルクナム族、ヤマナ族、カウェスカー族』展の会場となる。

また、ニューヨークの国際写真センター(ICP)と提携を結び、国際基準の写真制作の考え方・手法を伝授する3日間連続の特別マスタークラスを開講。留学を目指す人も多いICPの講義が日本で受けられる、またとないチャンスだ。そして、アルル国際写真フェスティバル新ディレクターのサム・ストゥルゼや、『Le Monde M』誌のクリエイティブディレクターとして活躍するエリック・ピヨーなど、多彩な顔ぶれがレビュアーを務めるポートフォリオレビューも今年からのあらたな試みだ。ワークショップ、トーク、音楽ライブなど、さまざまなイベントが45あまりも予定されている。また、子ども向けに、写真展を子ども目線で楽しめるような質問やお話が詰まった小冊子「キッズパスポート」も登場。各会場にはスタンプが置かれ、スタンプラリーがおこなわれる。

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭

Kyoto Jazz Sextet

4月26日(日)にはフランシス・ウルフ展をフィーチャーした沖野修也の新企画Kyoto Jazz Sextet のジャズライブディナーイベントも。スペシャルゲストには菊地成孔を迎える。

市内画廊やカフェなど約50の会場で、国内外の新進作家による展覧会を中心としたサテライトイベント KG+(ケージープラス)も開催、京都の町全体にKYOTOGRAPHIEのノボリがはためき、写真の楽しみを多くの人にもたらしてくれる。

今年のテーマの根底に流れるのは、「個性」、「愛」と「人生」と言えよう。クラブキッズも、サムライも、コンゴのサプール男子も、パタゴニアの部族も、ジャズミュージシャンも、「みんなちがってみんないい」。金子みすずの詩が現代を生きる私たちを力づけてくれるように、今年の『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭』は、子どもから大人までに活力を与えてくれる。

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2015
会期|4月18日(土)~5月10日(日)
チケット|パスポート 一般 2500円、学生(大学・高校・専門生) 1500円
※各有料会場にて販売、会期中全会場を各一回のみ入場可能
Tel. 075-708-7108
www.kyotographie.jp

           
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