リンカーンのフラッグシップ復活への予告|Lincoln
CAR / MOTOR SHOW
2015年4月2日

リンカーンのフラッグシップ復活への予告|Lincoln

Lincoln Continental Concept|リンカーン コンチネンタル コンセプト

リンカーンのフラッグシップ復活への予告

2002年に生産を終了した、米国リンカーンの最高級モデル「コンチネンタル」がいよいよ復活する。ニューヨーク ショーでワールドプレミアを果たしたリンカーンのフルサイズセダンコンセプトカーは、伝統のコンチネンタルの名を冠する、贅を尽くしたプレミアムモデルである。

Text by SAKURAI Kenichi

13年ぶり、2度目のコンセプト

4月1日より開幕したニューヨーク ショーで、リンカーンは最高級セダン「コンチネンタル」の名を冠したコンセプトカー、「コンチネンタル コンセプト」を発表した。

ご存知のように「コンチネンタル」は、1939年に登場したリンカーン ブランドのフラッグシップモデルで、2002年までじつに8世代もの永きにわたり生産された。2000年代にはいって巻き起こったダウンサイジングブームのあおりを受け、そのポジションはひとクラス下のリンカーン「MKS」に明け渡すことになったが、いまでもリンカーンを代表するトップモデルとして「メルセデスのSクラスなど目ではない、とにかく馬鹿デカいアメ車」として我々日本人の記憶にも残っている。

Lincoln Zephyr Continental Cabriolet(1940)|リンカーン ゼファー コンチネンタル コンバーチブル(1940)

Lincoln Zephyr Continental Cabriolet(1940)

Lincoln Continental Mark IV(1972)|リンカーン コンチネンタル マークIV(1972年)

Lincoln Continental Mark IV(1972)

Lincoln Continental(1997)|リンカーン コンチネンタル(1997年)

Lincoln Continental(1997)

正確にはこのコンチネンタルの上にFRモデルの「タウンカー」がかつてあり、本来こちらをフラッグシップと呼ぶべきなのだが、元々タウンカーは「コンチネンタル マークIV」のトップグレードとして誕生したという経緯もある。さらに「タウンカー」のほとんどが法人需要という背景もくわわり、コンチネンタルをフラッグシップモデルと呼ぶことに違和感をもつ者は少ないはずだ。

リンカーンの現行モデルは、日本でこそミドルクラスSUVの「MKX」とフルサイズSUVの「ナビゲーター」のみの正規導入に留まっているが、米国ではDセグメントに相当する(といっても我々が想像するDセグモデルよりはひとまわり以上大きい)「MKZ」にはじまり、Eセグメントに相当する(こちらも同様にひとまわり大きい)「MKS」、クロスオーバーの「MKT」、SUVの「MKC」、「MKX」、「ナビゲーター」を擁するプレミアムブランドとして君臨。

コンパクトカーをもたないのは、高級ブランドであるからという解釈にほかならない。このあたりは、本体であるフォードの各モデルとの棲み分けの結果とも取ることができる。

ちなみに、リンカーン各モデルのフォード車と関係を整理すれば、エントリーセダンの「MKZ」はフォード「フュージョン」(日本未導入)、それよりもひとまわり大きなセダンの「MKS」はフォード「トーラス(旧ファイブハンドレッド)」、クロスオーバーの「MKT」はフォード「フレックス」、SUVの「MKC」はフォード「エスケープ(日本名クーガ)」、「MKX」はフォード「エッジ(日本未導入)」、「ナビゲーター」はフォード「エクスペディション」とそれぞれ姉妹関係にある。

Lincoln Continental Concept|リンカーン コンチネンタル コンセプト

Lincoln Continental Concept|リンカーン コンチネンタル コンセプト

じつはリンカーンが次期コンチネンタルを標榜するコンセプトカーを発表するのは2度目のことだ。最初のコンセプトカーが登場したのは2002年。そう、コンチネンタルの生産中止を受け、次期モデルを示唆するデザインスタディとして登場した。

ボディデザインは「コンチネンタル マークIV」(第4世代)をモチーフにデザインされた、シンプルだが豪華なたたずまいで、フロントに414psのV12エンジンを搭載。観音開きのドアや、リモートコントロールで斜め前上にスライドする特徴的なトランクリッドをもったモデルだった。数台作られたうちの1台が、2010年のモントレー スポーツ&クラシックスのオークションでコレクターに売却されたのもニュースになった。

Lincoln Continental Concept|リンカーン コンチネンタル コンセプト

リンカーンのフラッグシップ復活への予告 (2)

このままの市販化も期待される

今回ニューヨーク ショーで発表された“2代目”コンチネンタル コンセプトは、初代のコンセプトカーとことなり、現在のリンカーン各車の延長上にあるものの、さらに進化したデザイン言語をもちいてデザインされている。

フォードはこのコンセプトカーを「快適性や静かさ、そして豪華さをあわせもった今後のフルサイズセダンの未来を示します。パワフルで穏やかかつエレガントなセダンであるということが特徴で、同時にリンカーン コンチネンタル コンセプトは、リンカーン ブランドのあたらしいフルサイズセダンの到来を予告します」と紹介している。

「最高峰のラグジュアリーをシンプルにデザイン上で表現し、さらに静かにフルサイズセダンの存在感を見る人々に伝える」と語るのは、フォード モーター カンパニー社長兼最高経営責任者(CEO)のマーク・フィールズ氏。さらに「コンチネンタル コンセプトは、今後リンカーン ブランドが目指すラグジュアリーの方向性を示しています。私たちは2016年にフルサイズの高級セダン、リンカーン コンチネンタルをふたたび市場に導入します」とつづける。

Lincoln Continental Concept|リンカーン コンチネンタル コンセプト

Lincoln Continental Concept|リンカーン コンチネンタル コンセプト

リンカーン コンチネンタル コンセプトはあたらしいフルサイズセダンのプレビューであるだけではなく、リンカーン デザインの進化をも表現している。

大きなポイントは、左右分割デザインから大型化された一体デザインに改められたフロントグリルである。中央にエンブレムを備えるのはこれまで通りだが、質感の高いポリッシュドアルミのグリルが、新時代の到来を示している。このメッシュひとつひとつは、モーターショーでもちいられるリンカーンブースの壁のデザインと同一で、エンブレムの形状をモチーフに簡略化し組み合わせたものである。

そのグリル左右に備えられたLEDマトリックスのヘッドライトも、シンプルな水平基調のデザインを採用し、落ち着いた表情を見せる。このヘッドライトのレンズカバー内部には5個のLEDを配し、レーザーアシストハイビーム機能も標準装備した。

タッチ式で簡単に開く、リンカーンがE-ラッチドアと呼んでいるウィンドウの下部フレームと一体化したドアハンドルも、今後リンカーンの特長となる意匠だろう。軽く押すだけでドアがポップアップし、閉めるさいは半ドア状態までもってゆけば、あとは自動でロックされる。

派手な演出こそ少ないが、このコンセプトカーでLincolnは確実にあるべき未来像を表現したといえそうだ。

Lincoln Continental Concept|リンカーン コンチネンタル コンセプト

少々先走り気味かもしれないが、コンセプトカーの化粧を取れば次期コンチネンタルの素顔が見え、ほぼこのままのフォルムで市販化されるとも予想可能だ。これは市販版MKCを示唆したプレビュー、MKCコンセプトが見せたものと同様の手法である。いくつかの関係者証言を元にすれば、昨年の北京モーターショーで登場した次期MKXのプレビューとなるMKXコンセプトもまたおなじステップを踏んでおり、市販モデルとしてほぼそのままの姿で登場するはずである。

Lincoln Continental Concept|リンカーン コンチネンタル コンセプト

リンカーンのフラッグシップ復活への予告 (3)

クワイエット ラグジュアリーという提案

今回登場したコンチネンタル コンセプトに搭載されるエンジンは、3.0リッターV6のエコブーストとだけ発表された。気になる最高出力や燃費などの情報はないが、ダウンサイジングされたパワーユニットをメインに搭載されるはずである。ホイールは21インチサイズを履く。

インテリアでは、ベネチアンレザーシートをドアトリムやシートに採用し、クラフトマンシップにこだわったクオリティの高いフィニッシュを見せる。アームレストやシート表皮中央部にはアルカンターラを贅沢に使用し、さらにサテンのヘッドライナーとムートンのカーペットも採用された。

Lincoln Continental Concept|リンカーン コンチネンタル コンセプト

Lincoln Continental Concept|リンカーン コンチネンタル コンセプト

リアシートはリンカーンが特許を取得した30もの可動部分をもち、まるでファーストクラスのような快適な空間と座り心地を約束。19スピーカーを備え、サラウンドを楽しめるレヴェルアルティマ オーディオシステム、アンビエントライト、リアのセンターコンソールにはシャンパンやワインを冷やせるクーラーや液晶画面を備えたテーブル、フロントシートのバックレストには、アメニティグッズがはいったベネチアンレザーのファーストクラス トラベルバッグも備わる。

後部座席の快適さは、ルーフに備えられたSPDスマートグラスで一層向上する。これは、直射日光からの熱を制御することを可能にする着色サンルーフで、紫外線を99パーセントブロックしながら、スイッチを押すだけで自由に明度を調整できるというものだ。たとえばじゅうぶんな日差が降り注ぐ日中でも、キャビンの室温を18度に保つことができるという。

そのほか、パークアシストの強化、歩行者の検出、360度ビューカメラなどドライバー支援デバイスも充実。こうした装備は先進的なインフォテイメントシステム「マイ リンカーン タッチ」に統合され、直感的に使用することが可能である。

Lincoln Continental Concept|リンカーン コンチネンタル コンセプト

Lincoln Continental Concept|リンカーン コンチネンタル コンセプト

リンカーンのデザインディレクターであるデビッド・ウッドハウス氏は、「リンカーン コンチネンタルのネーミングは、過去、高級車としてだけではなく、美しさやエレガンスの象徴でもありました。我々は近代化を図り、コンセプトカーでコンチネンタルの名にふさわしいモダンな美しさやエレガンスを表現しました」と語る。

開発のキーワードである「The Future of Quiet Luxury」は、穏やかで心休まる未来のフラッグシップセダンを意味すると捉えれば良いだろうか。これまでのアグレッシブなフロントフェイスを捨て、あらたなデザイン言語を用いた内外装でくつろぎや閑静なキャラクターを構築し、欧州や日本のプレミアムカーと勝負するのが次世代のリンカーン。スポーティな走りや豪華さとはことなったラグジュアリーカーのあたしい価値観を提案するコンチネンタル コンセプトは、リンカーン ブランドが次のステージに進化したことを知らしめるのだ。

           
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