祐真朋樹|N.HOOLYWOODデザイナー尾花大輔さんと対談!

祐真朋樹|N.HOOLYWOODデザイナー尾花大輔さんと対談!

祐真朋樹対談

東コレ最後のコレクションは、全編ストレートな「ミリタリー」のオンパレード
尾花大輔の本領発揮となるラインナップだった

祐真 で、今回の東コレは、とりあえず最後だからこれ(軍モノ)やっちゃおうかな、的な気持ちだったんですか? NY行きの決断は、今回のコレクションには影響はなかったの?

尾花 コレクション自体はそういうことをまったく想定しないで進めてました。

祐真 最後だからこういうの、ってことじゃないってことね。

尾花 ってことではなかったですね。最初からこういう感じにしようと思って作ってたんです。今回、「軍」をイメージしたショーをやろうと思ったのは、10年目を迎えて、もうちょっと自分に正直なところをやってみるのはいいんじゃないかと思えるようになったからです。いちばん自分の強いところをやってみようと。

祐真 な〜るほどね〜。

尾花 それで、そのなかでも、割とみんながタブーとしがちなベトナム戦争にフォーカスしました。第一次・第二次世界大戦とか、前回パリで見ていただいた南北戦争とかになると、意外と本質とかに奥深く突っ込まれることなく「ウェア」として見られるんですけども、ベトナム戦争って年代が近いせいもあるんでしょうけど、あまりプラス思考で捉えられるような要因がないテーマだと思うんです。だからなのか、ド直球でやっているっていうのは今までなかったと思うんですよね。

祐真 うん。

尾花 アメリカって、ベトナム戦争が終わって10年も経たないうちに『地獄の黙示録』みたいな、あんなリアルなベトナム戦争のドキュメント的映画を作ったりとかして、なんかすごいな、っていうのは今まで感じていました。で、あの時代に自分がもしアメリカ人だったら、と想定して服を作って発表するってことも、ある意味ミスターハリウッドとしてやるべきことなのかもなー、なんて、そんなふうに思ったんですね。

祐真 もともと軍ものは好きだし、ということだよね。

尾花 そうです。あとは、ベトナム戦争のギアにも興味がありました。ウェア関係はいろいろなものを見てきたという感覚はあったので、
アウトプットしたいなと思ったんですね。
それで、やるんだったらストレートな強さを出したいと思ったので、ショーのキャスティングもほとんどアメリカのベースの方をストリートハントして出演してもらいました。
ランウェイの演出も、当日自衛隊の技術協力を得て、土嚢を組んでもらったりしたんです。

祐真 へ〜、おもしろい試みですね。

尾花 着こなしも、普通ファッションで考えたら「タウンユースで着る軍モノ」っていう考え方に基づいてするじゃないですか。それ自体もなんかその、今回やろうとしているテーマに反すると感じたので、敢えてミリタリーの定義に則った
ベレー帽の被り方やブーツの編み上げ方を取り入れました。
もちろん服自体は軍に実際納入されている形ではないんですけれども、でも、もし自分が軍に納入するならどうするか、を考えて作りましたね。
変な話、祐真さんもリアルな軍モノを扱うお店に行って、「軍モノだけど、着てもいいかも」と感じることってあると思うんです。
たとえば、この商品もお店に並んだとき、お客さんがそういう感じで手に取ってくれればいいなって思っています。
トータルのルックで着てほしいっていうふうには考えていないですね。
こういうルックが昔にあったからこそ、みんな、憧れみたいな気持ちをもって着てみたりするんだと思うんですよね。もちろん軍マニアのひとなんかは、全身それで「武装する」、みたいなのがありますけど。なんかそういうかたちで手に取ってもらうというのも、自分にとってはすごく意味がある気がするんです。

祐真 なるほど。

尾花 なんかいろんなものが交差して、結果、これまでで一番伝えたいものが伝えられたのは今シーズンだった気がします。

祐真 お店に行くと、今シーズンはこういうことになっちゃうっていうこと? アーミーショップみたいに。

尾花 なっちゃいます(笑)。ただまあ、冷静に見ればそこまでアーミーショップには見えてこないと思うんですけどね。

祐真 あー。まぁ、こういうのもあるよってことね。

尾花 今回のテーマは「Coverage」、つまり「報道」なんですけども、ベトナム戦争って民間のカメラマンが入ったりテレビカメラも導入されたりして、それまでとはまったくちがったかたちでどんどんアメリカ本土、そして全世界に戦況が報道されていったでしょう? そのおかげで、本来もっと長引くだろうと言われていたこの戦争は報道のおかげで10年短くなった、と言われています。10年……ってすごいですけどね。

祐真 うーん。

尾花 いまでこそ、世界中の戦争や紛争の画像をテレビで見られるようになったけど、ベトナム戦争はその先駆けだったわけです。僕が一番伝えたかったのは、この戦争の終焉というのは「報道がもたらした平和」だったってこと。現地で戦っている兵士も、アメリカ国内でニュースを見ているひとも、「ああ、もうこういうのは早く終わらせて平和になったほうがいい」って思ったと思うんです。そこにフォーカスしたかった。だから、後半にいけばいくほど、軍の規律から外れた、崩れた格好に変わっていく構成にしました。それで厭戦感を表現したかったんです。

祐真 なるほど。

尾花 反戦運動に参加する退役軍人からアイデアを得たところもあります。士気の低下がファッションを作る、みたいな。

祐真 『7月4日に生まれて』とか『ランボー』とか……『ランボー』はちがうか……?

尾花 『ランボー』もそうなんです。

祐真 そっか。

尾花 だから、最初はきれいにプレスの効いた軍モノウェアが、後半に入ると落書きが入ったり洗いが入ったり……。余談ですが、ベトナム戦争は、黒人が白人と同等の軍員として戦った初めての戦争でもあったので、黒人のモデルも起用しました。

祐真 そうだね。

尾花 白人、黒人っていう人種の垣根を超えた友情が生まれることもあったろうと想像もできますよね。

祐真 『グッドモーニングベトナム』とかね。あの映画もいいよね。あ、『トロピック・サンダー』って観た? ベトナムではないんだけど。

尾花 いや、観たことないです。

祐真 『トロピック・サンダー』って、ベン・スティラーが出てるコメディでさぁ、『地獄の黙示録』とかを完璧にパロディ化してるんだけど、かなり笑える。

尾花 よくある、本編の2〜3年後に必ず作られるようなお笑い系ってことですか(笑)。

祐真 いや、でもね、キャストは本気で、ロバート・ダウニーJrが完璧に黒人役をやるわけ。すごい設定でしょ? 役者魂みたいなのを馬鹿にしてて、こう、顔を真黒に塗って、「黒人を馬鹿にするなーーっ!」っていうようなセリフを、ジャングルの中で黒人に向かって言うの(笑)。

尾花 へー(笑)。

祐真 ごめん、すごい話それちゃった(笑)。

尾花 いやいや。

祐真 『トロピック・サンダー』、すごい好きだな。あと『地獄の黙示録』と『グッドモーニングベトナム』と『7月4日に生まれて』と、『ファンダンゴ』と……俺が知ってるベトナム系はそんなもんかな。でももっとあるよねー。

尾花 そうですね。『フルメタル・ジャケット』とか『マッシュ』とか……それやこれやを参考にしながら掘り下げていくと、いろいろ政治的な問題も絡んできたりして、じゃあどうやろうかな〜となったとき、単純に「リアルなものをやろう」と思いました。モデルも舞台も、とにかくショーに付随するものは全部本物にして、でも服自体は実際の戦地における「リアル」だけじゃなく、本土で報道を観てるひとの気持ちや退役して反戦運動に転じたひとたちの気持ちなんかもひっくるめて入れ込んだ「リアル」を表現したかった。

祐真 なるほど。

尾花 あと、もうひとつの重要なテーマは「ギア」なんですよ。ベトナム戦争のころって、いろんな機関がもの凄いリサーチをかけてあらゆるギアをいっぱい作っているんですが、実際ちゃんとミルスペック(アメリカ国防総省が制定した、軍需物資の調達規格)で、説明書を見ないと使い方がわからないものとかもいっぱいあったんです。

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祐真 ふーん。

尾花 で、データだけを基に作られたものが多いので、実際ベトナムに行ったら暑すぎて使えなかったとか、そういういろんな……なんと言ったらいいのか「捨てアイテム」
とかもいっぱいあるんです。そういうところもディテールに
反映させたいと思いました。たとえば、使い方の分からないポケットだったり、ふんだんに無駄なディテールがあったりとか。

祐真 こういうのとか?(写真上左)

尾花 こっちは使えるんですけど。ほかにもちゃんと調べてみたら、実際救命用のものがあったり。たとえばシールズ(アメリカ海軍の特殊部隊)のひとたちが使うものとか。ボンベをパンって引っ張ると、空気が一気に入っていって、海の上で浮かべられたりするものなんかもあります。単品だけで見るとものすごくわかりづらいものがたくさんあったので、なんかそれ自体をひとつのファッションディテールに変えていきたいなって思いましたね。

祐真 なるほど。

尾花 祐真さん、似合いそうですけどね。これとか(写真上右)。

祐真 これ?

尾花 全身(笑)。

祐真 いや〜、むーずいなー。俺、戦場はさらに似合わないと思うけどね。キッチンくらいはいけるかな……ああ、このひとキッチン担当っぽいけど(写真右)。なんかかわいいね。

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SUKEZANE Tomoki

1965年京都市生まれ。(株)マガジンハウスのPOPEYE編集部でファッションエディターとしてのキャリアをスタート。現在は『UOMO』『GQ JAPAN』『Casa BRUTUS』『MEN’S NON-NO』 …