建築家・隈研吾が「East Japan Project」と東北の復興を語る(1)|INTERVIEW

INTERVIEW|建築家・隈研吾が「East Japan Project」と東北の復興を語る(1)

DESIGN ARCHITECTURE

SPECIAL INTERVIEW

建築家・隈研吾が「East Japan Project」と東北の復興を語る(1)

東日本大震災で失ったもの、気がついたこと

東北地方を中心に起きた東日本大震災から4年。私たちはあの大規模地震災害を忘れてはならないが、東北の伝統工芸職人とコラボレーションし、古くから磨きあげられてきた伝統的な技術や素材を応用して、エコロジカルでサステイナブルなあたらしいライフスタイルを可能にする日用品を提案するプロジェクト「Ejp(East Japan Project)」を、建築家の隈研吾氏が中心となって進めている。3回にわたって、隈研吾氏にお話をうかがった。

Photographs by SUZUKI Shimpei Text by KAJII Makoto (OPENERS)

率直に言ってこの4年間で私たちは何をしてきたのだろう

プロジェクト「Ejp(East Japan Project)」の話の前に、あの震災から4年の時間を尋ねた。

「東日本大震災で大きな被害が出た宮城県南三陸町の佐藤仁町長からの依頼を受けて、南三陸町志津川地区のまちづくりのグランドデザインを進めています。現地に行くと、南三陸町はがんばって早く復興を進めているほうですが、まだこれしか進んでいないのかというのが率直な感想です。

ひとの一生にとって4年間は長いもので、現地のひとは皆、意欲的だし、情熱は失われていないのですが、さまざまな制度やしくみの壁に拒まれていて、“これからも気持ちを持続できるのか”という疑問が手に取るようにわかります」と隈氏。

テレビのドキュメンタリーなどに取り上げられているので知っているひとも多いだろうが、南三陸町志津川地区には、復興商店街「さんさん商店街」がある。震災後一年に満たない2012年2月25日(土)にオープンした仮設商店街で、復興をになう地元の事業者32店が軒を連ね、連日多くの観光客で賑わっている。

隈研吾|East Japan Project
隈研吾|East Japan Project

プレハブだけどヒューマンに満ちている商店街

「南三陸町の佐藤町長は、とても情熱をもって復興にあたっています。グランドデザインの依頼は1年半ほど前にいただき、それから住民への説明やさんさん商店街の方々とミーティングして、不安も期待も共有することができました。

プレハブ造りの商店街はつねに観光客で賑わっていて、一種のブランドと化していますが、これから本設の店舗に移行するときに、“プレハブなのにこんなに温かく、楽しいんだ”という今の良さをどう繋げられるか。“これまでにないローコストで、素朴だけど、ほかにないものがある”というこれまでの商店街の価値に応えるものをつくらなければなりません」

隈氏による志津川地区のグランドデザインはまとまって、昨年、町民向けの報告会が開催された。人が住めない災害危険区域内での“にぎわいと交流づくり”という難題に対して、川と海の自然を感じられるのが志津川の特徴と、親水空間や遊歩道となる防潮堤などさまざまな仕掛けを提示した、と地元の新聞は報じている。

クラフツマンシップの最良・最上な部分が東北にある

それでは、「Ejp(East Japan Project)」の話に戻そう。このプロジェクトは、建築家・隈研吾氏が中心となり、複数の販売・製造企業、デザイナーと東北の職人が企業や団体の枠を超えて協力するもので、震災後すぐに発足した。

隈氏は、「私たちは震災前に東北の仕事をたくさんしていて、職人たちは非常に粘り強くリーズナブルで、とてもよくやってくれるのを知っていました。クラフツマンシップの最良・最上な部分が東北にあると思っていたときに震災が起こりました。

震災後、なにか役に立てることを考えたとき、まず現地の職人さんたちを元気にするために、一緒にモノづくりをしたいと思ったのです。職人の技は一度離れたら失われ、後継者も途絶えるので、彼らの“線”を切らないこと、そして彼らと私たちの“線”を繋げることを考えました。じつは、震災前から東北の職人たちと一緒になにか取り組みたかったのですが、お互いに遠慮していた部分もあったのです」と語る。

「Ejp(East Japan Project)」の第一弾は、隈研吾建築都市設計事務所がデザインし、岩手県奥州市の藤里木工所が製作した「Chidori」。12本の部材を組み合わせて1ユニットのフレームを作り、それを自由に繋げていくことによってそれぞれの生活にあった使い方ができる家具だ。

「このシステムは、2007年のミランサローネで発表したインスタレーションがベースですが、3種類の切り込みで組み上げていくことで拡張可能で、建築とはちがう細かい精度が求められ、かなり試行錯誤して完成しました。切り込み部分は手でカットしているので、職人たちの粘り強さに驚きました」

隈研吾インタビュー第2回は、「Ejp(East Japan Project)」プロジェクトの最新作「立ち上がれペン」についてうかがう。

Vol.2「建築家、隈研吾が「East Japan Project」と東北の復興を語る」はこちら

East Japan Project
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Tel. 03-5771-7577
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