軍靴製造からはじまる靴業界の祖

いきなり結論めいたことを書いてしまえば、軍靴製造にはじまる歴史、機械を導入以来一貫して作りつづけてきた製法＝グッドイヤーウェルト、あるいはアメリカントラディショナルという文化、そして日本人の足を知り抜き、たどり着いた木型――リーガルは世界に誇るブランドバリューを備えている。

日本の製靴業は明治時代の富国強兵とともに幕を開けた。西村勝三と大倉喜八郎という靴業界の祖が蒔いた種が結実したのが1902年に呱々の声を上げた日本製靴であり、のちのリーガルコーポレーションである。われわれが本格的に靴を履くようになったのは戦後のことで、往時のそれは軍需産業とイコールだった。

いまなお「我が社の屋台骨」といって憚らないグッドイヤーウェルト製法はつまり、100年以上場数を踏んでいる。紳士靴の聖地、英国・ノーサンプトンで現在の生産態勢が整うのは1800年代も終わりにさしかかったころであり、意外かもしれないが、その差はわずかといっていい。

"Shoes" & "Last" of First in 1962

VAN REGAL

軍需で基礎を作ったリーガルは戦後のライフスタイルも牽引した。伝説のアパレルブランド「VAN」とタッグを組んだ「ヴァン・リーガル」はストリートファッションの嚆矢である1960年代のみゆき族に、それこそ熱狂的に支持された。リーガルは靴をファッションに押し上げた立役者としてもその名を歴史に刻んだ。

ここまで読み進めてなお残る疑問はアメリカントラディショナルとのかかわりだろう。じつはリーガルは1961年に日本製靴が技術提携し、1990年に商標を譲り受けるアメリカのブラウン社のブランドだった。すなわち、正統な後継者というわけである。

積み重ねた歴史が創造した、真のトラッド

どんなに華麗な歴史を有するブランドであっても、横道に逸れ、迷走することは珍しくない。今回リーガルをクローズアップしたのは、軸足がぶれず、かつての熱量がいささかも失われていないからである。

グローバルカンパニーの宿命で海外にも拠点をもったが、国内の自社工場は守った。いや、守ったどころか、ことドレスシューズにおいては現在も9割が日本製である。ノーサンプトンでも年々その規模が縮小する現実を考えれば、それは大いに賞賛されていい。

Regal Factory in Iwate

驚くほかないのがラインナップだ。1971年に誕生したローファー、翌1972年に立て続けに発表されたウイングチップ、サドルシューズ……以上のモデルは半世紀に及ぼうかといういまも当時の姿のまま、作られている。しかもその割合は全コレクションの2割に当たるというから圧巻である。

あらたに生まれたコレクションもまた、地に足のついた風格を感じる。要はモダンという調味料のさじ加減が絶妙なのだが、それはつねにお手本となるロングセラーモデルとともにあるからだ。歴史を頭で理解するのと、実際に手を動かして身体に染み込ませているのとでは、リアリティはまるで変わってくる。

トラディショナルは積み重ねからしか生まれない。これを知悉し、愚直に守り抜いたリーガルに本物のオーラを感じるのは当然である。僕らが後世に伝えるべき数少ないブランドのひとつだろう。といって義務感にかられる必要はない。一度手にしてもらえば、青い鳥に喩えた意味がわかってもらえるはずだから。

2015 S/S Collection New Model "Wing Tip" Shoes

リーガル コーポレーション
Tel. 047-304-7261（平日9:00〜17:00）
Offical Site｜http://www.regal.jp/
Online Store｜http://www.shoes-street.jp/