特集|2015年国際映画祭速報|第65回ベルリン国際映画祭

特集|2015年国際映画祭速報|第65回ベルリン国際映画祭

© Berlinale

2015年国際映画祭速報

特集|第65回ベルリン国際映画祭

注目の受賞作品を一挙紹介!

2月5日(木)から11日間、ドイツ・ベルリンを舞台に開かれている第65回ベルリン国際映画祭。映画祭の花形ともいえるコンペティション部門には全19作品が出品。テレンス・マリックやヴェルナー・ヘルツォーク、ピーター・グリーナウェイといった巨匠たちの作品が並ぶ一方で、ベトナムやルーマニアなど、近年勢いのある新興国から飛び出した新鋭監督の顔ぶれも目立つ。日本の映画ファンにとっては、SABU監督の『天の茶助』、菊地凛子出演の『Nobody Wants the Night』など、日本勢の行方も気になるところ。それらを“厳しい目”で評するのは、審査委員長を務める『レスラー』『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキー監督ほか、『殺人の追憶』『スノーピアサー』のポン・ジュノ監督、俳優のダニエル・ブリュール、オドレイ・トトゥら総勢7人の審査員たち。2月14日夜(日本時間15日未明)に発表された注目の受賞結果を、早速見ていくことにしよう。

Text & Edited by TANAKA Junko (OPENERS)Photographs Courtesy of Berlinale

特集|第65回ベルリン国際映画祭 01

金熊賞

『Taxi』

製作国:イラン
監督:ジャファル・パナヒ(Jafar Panahi)

審査員の心を突き動かしたのは、映画から溢れ出る「愛」

制約というのは映画人にとってやっかいな存在だ。制約があることで、これまでにないアイデアが生まれる可能性もあるが、本来やりたかったことが実現できなかったり、創作意欲を削がれることの方が圧倒的に多いだろう。だが、イラン出身の社会派監督、ジャファール・パナヒにとって制約は避けられないもの。イランのネオレアリズモ(ファシズムへの抵抗として生まれた、リアリズムの手法で現実を描写する芸術表現)とも評されるその内容から、これまでに手がけた7作品のうち、処女作『白い風船』以外はすべてイランで上映禁止となっている。また、過去に2回投獄されており、釈放されたいまも映画づくりに関する一切の活動を禁止されているほか、国外へ出ることさえ許されていない。

そんな不自由な身であっても、パナヒは決して映画づくりを諦めない。むしろ課せられた制約を逆手にとって、そのなかでできるあたらしい手法を模索しつづけている。今回の出品作品『Taxi』でも、監督自らタクシーを運転しながらカメラを回すという大胆な撮影スタイルに挑んでみせた。イエローキャブとカメラが映し出すイラン社会のいま。壇上にあがった審査委員長のダーレン・アロノフスキー監督は、次のような賞賛とともに『Taxi』の名を読み上げた。「ジャファール・パナヒは自らの不自由さを嘆き、怒る代わりに、映画界へのラブレターともいうべき作品を作り上げました。ここには映画、観客、そしてイランに対する彼の溢れんばかりの愛情が詰まっている」


特集|第65回ベルリン国際映画祭 02

© Fabula

審査員グランプリ(銀熊賞)

『El Club』

製作国:チリ
監督:パブロ・ラライン(Pablo Larraín)

「これは後世に語り継がれる名作になる」

CMで政権打倒を勝ち取った男たちの姿を描いた『NO ノー』がアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされるなど、チリ国内外で注目を集める新鋭監督パブロ・ララインが手がけた社会派ドラマ『El Club』が審査員グランプリに。プレゼンターを務めたクラウディア・リョサ監督が、「これは後世に語り継がれる名作になることでしょう」と高らかに宣言した本作が描くのは、過去に犯した罪から海辺の僻地に追放され、厳しい掟に縛られながらも穏やかに暮らす5人の聖職者たち。彼らの許しと救済の道のりを通して、カトリック教会の不透明な一面を明らかにしていく。トロフィーを受け取ったララインは「世界ではいま、神の名のもとで多くの命が犠牲になっています。いつか終止符の打たれる日がくることを願ってやみません」と語った。


特集|第65回ベルリン国際映画祭 03

Agatha A. Nitecka © 45 Years Film Ltd

最優秀男優賞(銀熊賞)
最優秀女優賞(銀熊賞)

トム・コートネイ&シャーロット・ランプリング『45 Years』

製作国:イギリス
監督:アンドリュー・ヘイ(Andrew Haigh)

イギリスを代表する名優ふたりが俳優賞を独占

最優秀男優賞と最優秀女優賞、ふたつの俳優賞を独占したのは、『45 Years』で夫婦役を演じたトム・コートネイとシャーロット・ランプリング。詩人デヴィッド・コンスタンティンの短編小説を、『ウィークエンド』のアンドリュー・ヘイ監督が映画化。45年間連れ添った夫婦を襲った危機を描いてみせた。壇上にあがったランプリングは「はじめてベルリンの名を耳にしたのは、(陸上競技選手として活躍した)父がベルリンオリンピックで金メダルを獲ったときでした」とベルリンにまつわる思い出を紹介。「競争心の強い少女だった私は、そのときからいつか私もベルリンでなにかを成し遂げたいと思っていました。そうすれば、父からタスキを受け取れるんじゃないかって。今日、この銀熊賞が私の長年の夢を叶えてくれた気がします」


アルフレッド・バウアー賞(銀熊賞)
『Ixcanul』

製作国:グアテマラ、フランス
監督:ジャイロ・ブスタマンテ(Jayro Bustamante)

監督賞(銀熊賞)
『Aferim!』
製作国:ルーマニア、ブルガリア、チェコ
監督:ラドゥ・ジュデ(Radu Jude)

監督賞(銀熊賞)
『Body』
製作国:ポーランド
監督:マルゴスカ・シュモウスカ(Malgorzata Szumowska)

脚本賞(銀熊賞)
『El Bóton de Nacár』
製作国:フランス、チリ、スペイン
監督:パトリシオ・グスマン(Patricio Guzmán)