ブガッティ特別展、カリフォルニアの自動車博物館で開催中|Bugatti
CAR / FEATURES
2015年1月27日

ブガッティ特別展、カリフォルニアの自動車博物館で開催中|Bugatti

Bugatti|ブガッティ

伝説的ブランドの歴史を知る

「ジ・アート・オブ・ブガッティ」展、カリフォルニアで開催

ブランドの真の価値を知るには、実物を目の当たりすればいい。カリフォルニアの博物館で開催中の「ジ・アート・オブ・ブガッティ」展では、もはや伝説的となったブガッティの各モデルが展示されている。実車のみならず、芸術の才能に溢れた一家が生み出したアート作品まで網羅した、意欲的な展覧会が開催されている。

Text by OGAWA Fumio

2分でわかるブガッティ・ストーリー

オウプナーズでも取り上げた、3億2,000万円のヴェイロン16.4レジェンドシリーズ「エットーレ・ブガッティ」が話題になっているブガッティ。ここまで高価格でも売れてしまうのは、もちろん、ウルトラ級の性能をもったスポーツカーと認められているからだが、もうひとつ、ブランド性も大きな武器になっている。

この記事を読んでいる方々にブガッティとは、という説明は、いわゆる“釈迦に説法”かもしれない。あえてそれを承知でごく簡単に、2分で読めるブガッティ・ストーリーを書いてみよう。

ブガッティ|Bugatti

1990年代にイタリア人の手で“再興”されたブガッティの「EB110」は、ガンディーニがベースを作ったスタイルのボディに3.5リッターV12搭載

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タイプ35はヘッドランプをはずしただけでレースを走れるとジェントルマン・ドライバーに人気が高かった

設立は1909年。ミラノ出身のエンジニア、エットーレ・ブガッティによる自動車会社で、ドイツとフランスが国境の取り合いをしていたアルザスはモルスハイムに工場を持った。名声は、すぐれたレーシングカーと、そこから派生するロードカーがもたらした。1910年代から30年代にかけて数かずのグランプリで優勝。当時は金持ちの師弟でレースを楽しむジェントルマンドライバーが多く、彼らは競うようにブガッティに乗ったのである。

同時に、やはりウルトラとつけたいほど豪華なサルーンを作り、社交界におけるもっとも重要なクルマとなった。どれだけウルトラかというと、「T41ロワイヤル」というモデルは当時ロールスロイスの3倍の価格で販売された事実がある。注文したものの、いざとなると代金が払えない自称“大金持ち”もいたと文献に残っている。

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「ジ・アート・オブ・ブガッティ」展、カリフォルニアで開催 (2)

ブガッティとは何なのか?

ではブガッティとはどんなクルマだったのか。興味をもったひとに、とてもいい展覧会をお教えしよう。米ロサンジェルス近郊オクスナードにある「マリン・オートモーティブ・ミュージアム」において「ジ・アート・オブ・ブガッティ」展が開かれているのだ。数かずの貴重なモデルが並べられている内容は驚くばかり。1910年代に100馬力を超えるモデルを作っていたブガッティの素晴らしい歴史を通観できる。

「この展覧会のタイトルに“アート”とつけたのには2つの理由があります」。同館のキュレーターは説明してくれた。

「そもそもブガッティの各モデルがアートと呼ぶのにふさわしいものであること。もうひとつは、エットーレとその息子ジャンを中心にしたブガッティ家には、芸術家のレンブラント・ブガッティや家具をデザインしたカルロ・ブガッティがいたりと、自動車にとどまらない遺産を残してくれているからです」

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「タイプ35」はレースで活躍したが、公道で使うひともいた

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「タイプ46」(31年)は当時プチ・ロワイヤルとも呼ばれた高級車だが大きな傾斜のウィンドシールドなど速度を感じさせるスタイリング

展覧会は2フロアで構成されている。1階入り口には自動車好きの永遠の憧れ、1925年のブガッティ「T35C」が置かれ、その先には、史上もっとも豪華なサルーンである「T41ロワイヤル」(32年)、それよりすこし小ぶりでプチ・ロワイヤルと呼ばれる「T46」(31年)が美しく配置されている。

さらに、アルファロメオの好敵手だった「T55」(32年)、エレガンスと科学が同居したような空力ボディの「T57SCアトランティク」(36年)など、まず写真集でないとお目にかかれないようなモデルのオンパレード。なかには、完成されないままシャシーが3基だけ残っていた幻のモデル、「T64」(39年)の完成をめざすプログラムも。

2階は、ブガッティの有名な象のマスコットをデザインしたレンブラントが手がけた、彫刻や絵画や家具などが集められている。いったいどんなひとが収集したのか。数の多さが物語る、その情熱にも驚かされる。

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当時とおなじように木枠でボディの型を作る「タイプ64」のディスプレイ

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写真はレンブラントの作品だが、ほかに家具デザイナーだった父、カルロの作品も公開される

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「ジ・アート・オブ・ブガッティ」展、カリフォルニアで開催 (3)

アメリカ西海岸はクラシックカー趣味の社交場

毎年8月に開催されるモンタレー・カーウィークでもわかるように、米国にはクラシックカー好きが多い。クラシックカーのイベントは夏と相場が決まっているが、いわゆる西海岸のクラシックカー関連施設は通年で開いている。

「マリン・オートモーティブ・ミュージアム」と並んで、もっとも有名なものは、 ロサンジェルス市内、通称ミュージアム・ロウにある「ザ・ピーターセン・オートモーティブミュージアム」。ここはアメリカ車を文化的な文脈のなかでとらえた展示に凝っている。映画「アメリカン・グラフィティ」でとりあげられたクルージングなどの西海岸の自動車カルチャーの紹介など、展示内容に興味はつきない。

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博物館はスタジオ・オブ・エンバラメント・アーキテクチャー社のデイビッド・ハーツが設計

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ブガッティの収集で知られる仏のシュルンプ・コレクションから購入した「リザーブ」とよばれる修復前のモデルの数かずも見もの

LAXとして知られるロサンジェルス空港近くには「オートモビル・ドライビングミュージアム」がある。やや雑多な内容ではあるが、それが逆に楽しいというひとも。かつての高級車パッカードのコレクションととともに、毎週日曜日に、所有車を引っ張り出して、同乗をゲストに提供するサービスが人気を呼んでいるところだ。

ロサンジェルス近郊ポモナには「NHRAモータースポーツミュージアム」がある。NHRAとはナショナル・ホットロッド・アソシエーションのこと。アメリカ人が愛する、改造車レースであるホットロッドと、究極の速度レース、ドラッグスターにまつわる歴史や実車の展示がある。

イタリアのスポーツカーはアメリカ人が最も愛するもののひとつ。タスティンの「マルコーニ・オートモーティブミュージアム」では、フェラーリのスポーツカーをはじめ、インディマシンが多くコレクションされている。インディもアメリカならではのレース。ミュージアムがレース文化を下支えしているのだ。

「ジ・アート・オブ・ブガッティ」展
会場|Mullin Automotive Museum
所在地|421 Emerson Ave, Oxnard, CA 93033
会期|2015年3月31日まで

           
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