日本でも広がるか? 米国発「タイニーハウス ムーブメント」(2)|SPECIAL REPORT

SPECIAL REPORT|米国発「タイニーハウス ムーブメント」の可能性

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SPECIAL REPORT
日本でも広がるか? ワークショップ参加者がタイニーハウスに興味をもった理由

米国発「タイニーハウス ムーブメント」に注目(2)

環境ジャーナリストの箕輪弥生さんによるスペシャルリポート。 前回に引きつづき、米国で広がりつつあるタイニーハウス ムーブメントを取り上げる。その営みが、日本で広がる可能性はあるのだろうか。ツリーハウスビルダーの竹内友一さんが開催した日本ではじめてのワークショップに参加した人たちの動機や意識から、その方向性がみえてきた。

Text& Photographs by MINOWA Yayoi(環境ジャーナリスト)

東日本大震災後、さらに強くなった思い

2014年10月から合計6回のプログラムを経て、3カ月で実際にひとつのタイニーハウスを作り上げていくワークショップには多彩な参加者が12人集まった。北海道や四国から月2回のワークショップに参加するツワモノもいた。

長野県から参加している田中猛之さんは、エネルギーや食糧を自給できる暮らしを探っていたが、東日本大震災後、その想いはさらに強くなったという。「循環型の暮らしが大事なこと、エネルギーや食糧を自給するなど、いままで考えてきたことが間違っていなかったと、このワークショップに参加して実感できた。まずは庭先にタイニーハウスを作ったり、軽トラックを活用したモバイルハウスを作ってみたい」と話す。

ワークショップでは、毎回ゲスト講師を招いているが、そのひとり、パーマカルチャーデザイナーの四井真治さんの話からも、循環型の暮らしについての示唆を得たという。

タイニーハウス|ワークショップ
タイニーハウス|ワークショップ
タイニーハウス|ワークショップ

数百万円で家を建てられるのは現実的

北海道・札幌で路面電車の運転手をしている嶋野晃人さんは、実際にタイニーハウスを作って夫婦で住みたいという。「何十年のローンを組んでしまうと、生活が型にはまってしまう。タイニーハウスなら、1回だけでなく何度かチャレンジできるかもしれない」と話す。若い世代にとって、数百万円の支出で家がもてるという経済性は、生き方の選択肢も増やしてくれる。
大工仕事などはまったくのはじめてだったという嶋野さんは、道具の使い方から学び、仲間もできたと満足げだ。

災害時などのことも視野に入れてタイニーハウスに興味をもったひともいる。

高知県で設計事務所を営んでいる中 宏之さんは、東日本大震災後、地域の津波対策を真剣に考えるなかで、タイニーハウスがあれば、震災時にも移動でき、避難所で暮らす必要もないと考えた。太陽光パネルをつけるなどオフグリッドにすれば、ライフラインが止まったときも困らない。
普段は週末のセカンドハウスとして楽しみながら使うことができるし、多拠点化をはかるのに、数百万円で家を建てられるのは現実的だと考えている。そのため地域でタイニーハウスを広げていくセルフビルドのワークショップも開催したいと考えているという。「プレカットのところまでプロがやって、組み立てはセルフビルドで。そんな形も考えている」と話す。

まず自分がいいと思ったものを作って住む

「大草原の小さな家」にずっと憧れてきたという手塚純子さんは、やはり自給自足の暮らしを目指しているひとりだ。タイニーハウスに先駆けて、軽トラックを活用したモバイルハウスを竹内さんらのサポートを受けながら製作し、それで旅に出たいという。これまで事業をしていたが、人生を楽しむ自由な暮らしに移行中だ。ワークショップは内容の豊富さや仲間のすばらしさももちろん、「竹内さんの優しさがひとの人生を変えていく」と惚れこんでいる。

タイニーハウスを将来の仕事にしていきたいと話す村上健太さんは、若きビルダーをめざしている。日本の住宅は賃貸か長いローンを組んで購入するかだが、そのどちらも気が進まない。タイニーハウスは数百万円で建てられ、クルマで牽引でき、農地にも置ける。これは大きなメリットになると感じた。日本には耕作放棄地がわんさかとあるし、若い世代にとっても住宅の選択肢が増えることになる。日本の森林資源に注目している村上さんは、日本の国産材、間伐材でタイニーハウスを作っていきたいと意気込む。

まず自分がいいと思ったものを作って住む。そしてムーブメントを起こしていきたいという。

タイニーハウス|ワークショップ
タイニーハウス|ワークショップ
タイニーハウス|ワークショップ

コミュニティそのものが自分の家になる

これら5人がタイニーハウスに興味をもったきっかけはそれぞれだが、みなおなじ方向を見ているようにみえる。自然災害の多い日本で、ライフラインと住む場所を確保できる安心感、米国と同様長い住宅ローンにしばられず自由に豊かに暮らすこと、そして実際に自分で手を動かして住まい作ることへの情熱。いまの日本で求められているタイニーハウスの方向が参加者の声から浮き上がってくるようだ。

そして、何より誰もが口を揃えて言うのは「仲間ができた」ということ。タイニーハウスはひとりだけで作るより、誰かが作りめたら仲間が手伝いに行く、わいわいとみんなで作る方が楽しい。工務店や不動産屋さんではなく、仲間の手を借りて作るタイニーハはじウスは、作ってからのつながりも創りだしていく。つまりそれがコミュニティにつながっていくということだ。ディー・ウィリアムスさんが話すように、たくさんのモノを手放した代わりに地域の一員になれる、外に広がるということは、コミュニティそのものが自分の家になる。それこそがタイニーハウス的暮らし方なのだ。

竹内さんらが作ったタイニーハウスは、広島で店舗や災害時の拠点として活用が決まっている。参加者のなかからも実際にタイニーハウスを作るひとが出てくるだろう。竹内さんが点けたタイニーハウスの小さな炎は、大きく広がっていきそうな予感だ。2015年には2回目のワークショップを開催する予定もある。

※2014年12月21日(日)にタイニーハウスのオープンハウスを実施予定
場所|山中湖PICCA
詳しくは「Tree Heads & Co.」

http://simplife.jp/

竹内友一|TAKEUCHI Yuichi
Tree Heads & Co.代表。タイニーハウスビルダー。 20代はイギリスやオランダのクリエイターの下で便利屋家業。帰国後、ひとと自然をつなぐ体験プログラムの制作に専念。2008年ごろ小屋の制作開始。ツリーハウスやタイニーハウスの制作をしながら全国各地を旅している。

箕輪弥生|MINOWA Yayoi
環境ライター・NPO法人「そらべあ基金」理事。環境関連の記事の執筆や企画、東京・谷中近くのグリーンなカフェ「フロマエcafé&ギャラリー」(http://furomae.jimdo.com/)を営むなど、オーガニックな食や自然素材、自然エネルギーなどを啓蒙・実践する。著書に『節電・省エネの知恵123』『環境生活のススメ』(飛鳥新社)ほか。

http://gogreen.petit.cc/

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箕輪弥生